酒造メーカー「初任給」9万円“爆上げ”狙いは・・・“賃上げ”企業急増「若手獲得競争」(2022年6月20日)

酒造メーカー「初任給」9万円“爆上げ”狙いは・・・“賃上げ”企業急増「若手獲得競争」(2022年6月20日)

酒造メーカー「初任給」9万円“爆上げ”狙いは・・・“賃上げ”企業急増「若手獲得競争」(2022年6月20日)

 この春から初任給を引き上げる企業が急増し、若手人材の獲得競争が加速しています。中には、給料を9万円ほどアップさせた企業もあります。新入社員の生活ぶりに密着しました。

■“初任給アップ”新入社員「喜びよりも不安」

 東京から飛行機で1時間30分。さらに、空港から車で40分。山口県岩国市の山奥にある企業が、4月から初任給を大幅に引き上げました。

 その企業に勤める新社会人の梅嵜中綱さん。当初、初任給はおよそ21万円と提示されていましたが、給与明細を見せてもらうと、なんと30万円超えです。

 梅嵜さん:「(Q.給料振り込まれた日どうでしたか?)めっちゃテンション上がりました」

 実に4割アップという、大きな決断をした企業。それが、高級日本酒「獺祭(だっさい)」で有名な、あの「旭酒造」です。近年、メジャーリーグ「ヤンキース」のスポンサーになるなど、世界で販路を開拓しています。

 福岡県出身、大学時代はラグビー部だった梅嵜さん。配属されたのは「製麹(せいきく)」という酒の味を左右する重要な工程を担うチーム。蒸した米をほぐしたり、麹(こうじ)菌を付けたりなどの作業をしています。

 先輩:「くっ付いとるけん。ちゃんと取らんと。ちゃんと取っとかないと、麹にならんけん」

 大学時代、「酒造り」とは無縁だった梅崎さん。早く一人前になろうと日々、懸命に働いています。

 梅嵜さん:「(Q.暑さは慣れましたか?)全然暑い。慣れてない」

 旭酒造の新入社員は、ほぼ全員が酒造りの未経験者で、採用後にじっくり教えていくのだといいます。仕事を終え、私服に着替えた梅嵜さん。定時を過ぎ、愛車で帰宅です。

 梅嵜さん:「(なぜ旭酒造に入社したのか?)特にやりたいことが、社会に出てなかった。お酒が好きぐらいだった。おいしいと思ったお酒何だろうと、思った時に獺祭。飲んだ時に感動」

 初任給が、およそ21万円から30万円へ引き上げられるのを知ったのは、入社直前。しかし、喜びよりも不安が大きかったそうです。

 梅嵜さん:「(Q.初任給30万円どうですか?)(初任給が)上がると、入社する前に聞いた。大丈夫かなと。日本酒の勉強とか全くしてないし。30万円、大丈夫かなと思った。やってみたら、先輩が優しくて、一から教えてくれた。今は一生懸命働いていて。あんまり考えてない」

 車を降りて、自宅近くの行き付けの店へ。仕事の緊張感から解放されるひと時です。充実した毎日を送る梅嵜さん。帰宅後、初任給を何に使ったか、聞きました。

 梅嵜さん:「(Q.一番最初に何に使ったか?)一番最初は、両親と祖父にも、自分の作っている『獺祭』を買って帰りました。ラグビーをやっていて、ずっと寮生活だった。全部親だよりで、お金も出してもらった。両親に支えてもらったので、初任給で何か返したいと思った」

 他にも、好きな絵を買ったり、地元の友人にごちそうしたり。自動車税を払ってもなお、初任給は“余っている”といいます。

 梅嵜さん:「(Q.30万円足りていますか?)足ります。足りすぎているくらい」

 ここ20年、日本の平均初任給は、ほぼ横ばい。街の人からは、次のような声が聞かれます。

 70代:「おかしいよね。物はじわじわ上がってくるけど、給料は上がらない」
 50代:「(初任給は)20万ちょっと。自分は、その時からは給料も上がっている。そこまで(変化がないことを)感じてないのかもしれないけど」

■専門家“初任給アップ”は「マストに」

 旭酒造以外にも、今年、初任給を上げる会社が増えています。

 玩具メーカー「バンダイ」に、「モンスターハンター」といったゲームでおなじみの「カプコン」など有名企業が、初任給の賃上げを実施しています。

 就活生:「一番は、自分の働きたい場所だとは思う。2、3番目ぐらいは、お金のことを考えちゃう」「生活に少し余裕を持つほうが、仕事も円滑。気持ちの余裕的に進みやすいと思う。初任給、かなり重要視している」

 4月からの大幅初任給アップを決断した、旭酒造。会社側の狙いとは?

 旭酒造・西田英隆製造部長:「山口県の山の中。人が集まりにくい所に酒蔵がある。人集めは会社にとって、大きなハンデだと思う。まず、酒造りは人づくりからなので。たくさんの人に、応募して頂くという狙い」

 給与アップを発表してから志望者は、前の年に比べ、およそ3倍にアップしました。

 旭酒造・西田英隆製造部長:「純米大吟醸で、日本で一番。おいしさでも一番を取っていくなら、待遇面でも一番を目指す。とにかく、すべて一番を目指していこうと、分かりやすいメッセージを出している」

 今年の就職活動内定率は、今月1日にすでに7割を超える高い水準で、売り手市場にシフトしつつあります。企業の初任給アップの流れは、若者の人口減少も重なり、今後さらに広がるといいます。

 千葉商科大学“働き方評論家”・常見陽平准教授:「世の中全体で、若者が減っていきます。短期的にも中長期的にも、大卒者は争奪戦になっていくし、給与アップは人材獲得、人材定着でも、新卒採用ではマストになってくる」

(「グッド!モーニング」2022年6月20日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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