【独自】山の所有者激怒「間伐」のはずが・・・ヒノキ6000本“勝手に”伐採 災害リスクも(2022年6月8日)

【独自】山の所有者激怒「間伐」のはずが・・・ヒノキ6000本“勝手に”伐採 災害リスクも(2022年6月8日)

【独自】山の所有者激怒「間伐」のはずが・・・ヒノキ6000本“勝手に”伐採 災害リスクも(2022年6月8日)

 静岡県の山林で所有者の意向に反して、多くの木が伐採されました。伐採されたのは、高さ15メートルほどのヒノキ。その数は6000本以上です。激怒する所有者を取材しました。

■“間伐”のはずが・・・「まるでゴルフ場」

 南アルプスにほど近い、山あいの上空。

 山林の所有者:「際限なく切っているね、これ」「想像を絶しますね。うわ・・・」

 上空から見ると、突如として現れる異様な光景。緑豊かな山々の中に、広い範囲にわたって地表がむき出しになっていることが分かります。

 山林の所有者:「本当に、頭にきています」「何のために、こんな伐採したのか、本当に分からないですよ」

 一体なぜ、こんなことが起きたのでしょうか。

 静岡市の中心部から車でおよそ2時間。“オクシズ”と呼ばれる、林業が盛んな山間地です。問題の山は、標高1400メートル、人の目に触れることがほとんどない林道の先にあります。

 4代にわたって受け継がれてきた山。所有者は、安池倫成さんと勘司さん兄弟です。

 山林の所有者:「ここから、500メートルくらい。うわ、ここだ、ここだ。ひどい。ちょっと、何これ。ゴルフ場みたいだよ、これ・・・。下から見ていて、すごいなと思っていたけど、こんなに切られちゃっているんだ。今まで見ていた規模感じゃない」

 伐採は、まるでゴルフ場開発の現場かのように、大規模に行われていました。実は、この伐採は、静岡県主導で環境を守る目的で行ったものでした。

■説明なく行われた・・・“大規模伐採”

 始まりは去年6月、安池さんが所有する山を整備し、「山崩れの防止」や「水を蓄える」ことを目的とした静岡市森林組合からの提案でした。

 静岡市森林組合:「森林の公共的な責任が果たせていない状況にあるので、やりましょう」

 組合側は、倫成さんに山の4割の木を伐採する「間伐」を提案しました。

 倫成さんはおととしにも、組合の提案で山の別の場所で間伐を行ったことがあり、日光が程よく地表に届いて、森の質が良くなることを実感。同じような工事だと思い、今回の計画に賛成しました。

 静岡県が事業を管轄。ほとんどの費用は補助金で賄われ、伐採は静岡市の森林組合が行うことになりました。この2者と所有者の兄の倫成さんの3者で協定を締結し、去年7月にプロジェクトは動き出しました。

 しかし、今年1月、現場を見た倫成さんは、次のように話します。

 山林の所有者・安池倫成さん:「本当にびっくりしました。切られてしまった山を、どのように再生していくのか。本当に途方に暮れている状況です」

 現場に広がっていたのは、以前に行われた間伐とは、全く異なる光景でした。

■“ヒノキ6000本”・・・なぜ伐採?

 伐採されたヒノキ林は、20度から30度の急斜面。安池さん兄弟は、地表があらわになった部分を記録し、調査しました。

 安池倫成さん:「全体で2ヘクタールくらい。こういう場所が7ブロックあります」

 明らかになったのは、想定外の山の姿でした。さらに、“ある疑問”がありました。

 間伐で、なぜ15メートルという幅で伐採するのか。疑問に思った倫成さんは、静岡県に質問状を送りました。すると・・・。

 静岡県中部農林事務所の回答:「一般的には、樹高の概ね2倍以内の伐採幅であれば、森林の生態系を著しく破壊しない、風害などの気象害を回避・軽減するなどの利点があると言われていることから、樹高の1.5倍である15メートルの伐採幅としました」

 県の解釈では、15メートルの幅は、間伐の範囲内だというのです。しかし、とりわけ幅が大きく見える「D」のポイントに行ってみました。

 山林の所有者:「(Q.この辺も全部切られた場所ですか?)そうです。15メートル幅じゃないですよ、ここは。50メートルくらいありそうな感じしますね」

 山の頂上近くに広がるのは、幅50メートルにも及ぶ広大な伐採現場。幅15メートルを大きく超えているのが、はっきり分かります。

 静岡県は、次のように話します。

 静岡県中部農林事務所・山田達司農山村整備部長:「(Q.50メートル幅の伐採について)あれが、なんでああいうふうになったか、今一つはっきりしないですが、それは(伐採した)森林組合の内部のなかの話になるが。推測ですが、意思疎通がうまくいってなかったのかと」

 名指しされた静岡市の森林組合は、取材に対し、こう答えました。

 静岡市森林組合:「本数で4割伐採の仕様を満たすように、伐採幅を広げるような、追加伐採を行ってしまいました。組合の認識不足で、指示したものです」

 静岡県と森林組合は、事前に所有者に伐採方法を伝えず、所有者の意向と異なる整備が行われたことを認め、謝罪しています。

 さらに、別の問題もあります。

■「森の再生」のはずが・・・土砂崩れの危険性

 来週にも梅雨入りするとみられる静岡。伐採された木は、そのまま放置されている状態です。山の下側に至っては・・・。

 安池勘司さん:「この上の水が流れてきた場合には、大災害にならないかなと心配。ざらざら落ちてくる土質なんですよ。ここから水が流れて、以前こちらに全部、表土が流れてしまった」

「森の力を再生」するどころか、伐採によって災害リスクが高まっている可能性があるといいます。県側も・・・。

 静岡県中部農林事務所・山田達司農山村整備部長 :「一時的に雨水が地表にあたるので、浸食が起きるリスクはあります」「(Q. 短期的には、土砂崩れのリスクがあるかもしれない。所有者からすれば不安ではないか?) それも、ありましてね。所有者と森林組合と我々で協議しながら、リスクを減らすような整備をしていかなければならないと考えている」

 県も、一時的に災害のリスクが高まっていることを認めています。

 静岡市の森林組合は、取材に対し、こう答えました。

 静岡市森林組合:「早急な対応を取らなければならないほどの土砂災害のリスクが高まったとは考えておりません。しかし、このまま、伐採跡地にすることは望ましくないので、何らかの樹種の植栽を実施していきたいと考えております」

 これで、災害が起きた場合、誰が責任を負うことになるのでしょうか。専門家は、次のように話します。

 岡山弁護士会所属・小林裕彦弁護士:「一時的には、土地の所有者が(責任を)負うことになります。(伐採した森林組合の)過失や、(災害との)因果関係が認められないと、(森林組合は)責任を負わないので、そういった点が争点になると思います」

(「グッド!モーニング」2022年6月8日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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