略奪した小麦を輸送か・・・ロシア“謎の貨物船”独自追跡で迫る「空白の1週間」の実態(2022年5月29日)

略奪した小麦を輸送か・・・ロシア“謎の貨物船”独自追跡で迫る「空白の1週間」の実態(2022年5月29日)

略奪した小麦を輸送か・・・ロシア“謎の貨物船”独自追跡で迫る「空白の1週間」の実態(2022年5月29日)

侵攻の長期化で世界的な食糧危機が懸念される中、ロシアが略奪した穀物をウクライナ国外に運び出しているという疑惑が浮上しています。
衛星写真で捉えられた謎の貨物船を独自に追跡しました

▽”謎の貨物船“追跡 ロ軍略奪物を積載か
19日、クリミア半島のセバストポリで撮影された衛星写真。港に停泊した貨物船の隣には・・・穀物貯蔵用のサイロも映っています。
CNNは『盗まれたウクライナの穀物とみられるものが、ベルトコンベアでロシア船に積み込まれている』と伝えています。
(ウクライナ ゼレンスキー大統領)
「ロシアは食糧危機を引き起こそうとしています。大規模な飢餓を防がなければなりません」
“世界的な食料危機”の懸念が高まる中、略奪した穀物を載せたとみられる貨物船は、どこに向かったのでしょうか?

世界中の船舶の位置情報などが分かる「マリントラフィック」で確認すると・・・
黒海からトルコのボスポラス海峡を抜け地中海へと向かう貨物船、ロシア船籍の「マトロス・ポジニッチ」。この船の動きをウクライナ当局が追っていました。
(ウクライナ農業政策省 ビソツキー次官)
「(ロシア船は)エジプトやリビアで売ろうとしましたが、ウクライナ外務省が素早く手を打って、エジプトやリビアは受け入れることを拒否しました」
両国で接岸を拒否されたという貨物船は、今月5日、キプロス沖で一時、位置情報が途絶えます。次に位置情報が確認できるのは12日。この“空白の1週間”の貨物船の姿を衛星写真が捉えていました。
場所はロシアの友好国、シリアのラタキア港。ウクライナで盗んだ穀物をここで降ろしたのでしょうか?

マリントラフィックによると、位置情報が途絶えた5日時点で海面から船底までの深さをあらわす喫水は9.8m。しかし・・・位置が確認できた12日には5.3mに。これは、荷物を降ろすなどして船が軽くなったことを示しています。CNNは、小麦の出所を偽るため、ここで“別の船に積み替えられた可能性がある”との見方も伝えています。
(クライナ農業政策省 ビソツキー次官)
「ウクライナはシリアとの外交関係がなく、この穀物のその後の追跡はできない」

▽ロシア軍略奪の農機具がチェチェンに
ウクライナ当局によるとロシアはザポリージャ州やヘルソン州などの制圧地域からこれまでにおよそ50万トンの小麦を略奪したといいます。
Zマークをつけたトラックの車列ザポリージャ州で略奪した穀物を載せ、クリミア半島に向かっている様子だといいます。ロシアはウクライナからの穀物略奪を「偽ニュース」だと主張していますが・・・
今月初め、ザポリージャ州の倉庫からおよそ200tの小麦を盗まれたという穀物貯蔵会社に話を聞きました。
小麦を盗まれた穀物貯蔵会社 ラファエリ・ゴロヤン社長)
「(倉庫の)警備員は、ロシア兵たちに近づこうとしたのですが威嚇射撃をされ『それ以上近づけばお前の頭を打ち抜くことになる』と言われたそうです。すぐ次の日に(ロシア兵は)商品を持ち出し始めました。つまり大量盗難が始まったのです」

ザポリージャ州では“農機具”も盗まれています。短時間で大量の小麦を収穫できる大型のコンバイン。
3月、展示していたコンバインなど27台が盗まれたといいます。しかし、この最新型のコンバインにはGPSが備わっていました。確認してみると・・・そこは800km以上離れたロシア南部のチェチェン共和国。プーチン大統領の忠実な配下として知られるカディロフ首長が治めている地域です。チェチェンに運ばれる様子を捉えた映像には・・・あの盗まれたコンバインと・・・トラクターが映っていました。
農機具メーカーはコンバインを遠隔操作でロック。使用できなくしたといいます。
略奪だけではなくロシア軍は小麦畑や穀物倉庫も砲撃。ウクライナの今年の穀物生産量は「半減する恐れ」があるといいます。
(ゼレンスキー大統領)
「ロシアは農業機械も破壊しました。なぜこんなことをするのか?彼らは飢餓を武器とみなしているからです。我々を支配するための武器にしているのです」

▽“大飢饉の再来”懸念・・・ロ軍侵攻で食糧危機
ウクライナでは、1930年代に起きた“大飢饉(ホロドモール)の再来”を懸念する声が挙がっています。
当時、ソ連の最高指導者スターリンは、「ヨーロッパの穀物庫」と呼ばれたウクライナから不作にもかかわらず強制的に農作物を徴収。400万人以上が死亡したといいます。ロシアのウクライナ侵攻による穀物価格高騰の影響は、すでに貧しい途上国に及んでいます。

アフリカ東部の国ソマリア。大規模な干ばつなどで深刻な食料難に陥っていますが、ウクライナ危機が追い打ちをかけたといいます。
(WFP 東アフリカ ヤコブ副代表)「(干ばつで)食料価格が上昇している上に、コロナの影響も残っています。そして気候変動や紛争、さらにウクライナ危機も重なったのです」
小麦の輸出量で世界全体の3割を占めるロシアとウクライナ。特にアフリカは多くの国が両国からの輸入に頼っておりソマリアでは実に9割以上に上ります。現在、栄養失調で苦しんでいる子どもが140万人、
現地で支援活動を続ける世界食料計画は、食料がさらに高騰すれば“飢饉”が発生する可能性があるといいます。
(WFP ソマリア ペトロック・ウィルトン 広報官)
「病院にいる子どもたちを見ると、胸が張り裂けます。その手足は、ほぼ皮と骨だけです。今の懸念はウクライナ危機により、これまでにないレベルまで食料価格が急騰することです。飢饉が発生する危機がすぐそこまで来ています」

5月29日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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