「KAZU1」引き揚げ後の“変化” そこから新たに分かったこと(2022年5月27日)

「KAZU1」引き揚げ後の“変化” そこから新たに分かったこと(2022年5月27日)

「KAZU1」引き揚げ後の“変化” そこから新たに分かったこと(2022年5月27日)

 北海道・知床沖で沈没した観光船「KAZU1」が27日午後、網走港に到着しました。その網走では、海上保安庁が運行会社の桂田社長から任意で聞き取りを行っていることが分かりました。

 強風のなか、網走港に接岸した「KAZU1」。一方、海上保安庁が「知床遊覧船」の桂田社長から任意で話を聞いていることが分かりました。

 26日、182メートルの海底から引き揚げられ、ついに海上に船体を現した「KAZU1」。その姿から新たなことが次々と分かってきました。

 沈没からすでに1カ月以上が経過し、引き上げ作業中にも再び海底に沈んだ「KAZU1」ですが・・・。

 まず、目立ったのは前方の手すり部分の消失ですが・・・。

 水難学会・安倍淳副会長:「最初に、120メートルに沈んでしまった船を撮影したROV水中ロボットの映像を見ると、しっかりとステンレス製の手すりがついていたので(消失したのは)引き揚げ後のことになると思う」

 ROVの映像を見ると、確かに前方の手すりが確認できます。こちらは事故原因とは関係なく、引き揚げ作業中に落下した時に損傷したと考えられるそうです。

 しかし、損傷部分は他にも・・・。よく見ると船体上部のアンテナが折れ曲がっていて、左舷の手すりも曲がっています。

 船底から落下したはずなのに、なぜ船体上部の手すりやアンテナが損傷したのでしょうか。

 水難学会・安倍淳副会長:「衝撃を外部から受けると“内側”に曲がる。この場合は外側にはねているので・・・」

 安倍氏によると、上部の手すりは内側から外側に曲がっているので、こちらも引き上げ作業の際に曲がったものと考えられ、衝突など沈没の直接原因ではないとみられるそうです。

 さらに、気になるのは客室の左舷にあるドア。そして、客室の中央の窓です。映像を見ると、いずれも「板」のようなものに変わっていますが・・・。

 水難学会・安倍淳副会長:「120メートルの場所に沈没した所から引き揚げる時に『流出物がないように』ということで、ダイバーの手によって開口部の閉塞作業、穴をふさぐということだと思う」

 海上に引き上げる際に、壊れた窓やドアから船内のものが流出しないようにダイバーがふさいだと考えられるそうです。

 ただ、この窓の割れ方を検証するとこんなことが明らかになるといいます。

 水難学会・安倍淳副会長:「ガラスについても、沈没時のエア(空気)が抜ける行為が内側から外側方向に割れたのか、沈没による『圧力の急激な変化』によって割れるとすれば、『内側方向に割れてくる』はずなんですね。外圧のほうが高まるから」

 前方の窓が割れた原因が沈んだ際に受けた水圧であれば、ガラスは外側から内側に向かって割れます。

 しかし、実際には窓は反対に、内側から外側に向けて割れていることが分かっています。

 水難学会・安倍淳副会長:「本船が沈没する時に、船尾を先にして船首側を立てて沈んでいく時に、エア(空気)が抜ける時に、エア(空気)の抜け道になったという可能性も考えられる」

 船が沈んでいく時の態勢が分かることで、沈没の原因究明につながるわけです。

 網走港に到着した「KAZU1」は、この後、2日ほどかけて船内の水を抜いた後、陸揚げされる予定。国交省は、家族に対して「船体を見せる」ことで調整をしています。

 今後は、どのような部分を重点的にみて事故原因を究明していくのでしょうか。

 水難学会・安倍淳副会長:「やはり『目撃者がいない』というのが海難事故は特殊性がありまして、あとは再現できないんですよ。当時『KAZU1』が風速15メートル以上、波高2、3メートル、そういうなかで『どういう挙動をしたか?』というような痕跡が船に残っていないかどうか、そういうことを、時間をかけて捜査機関は証拠集めをしていくと思う」

※「KAZU1(ワン)」は正しくはローマ数字
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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