ウクライナ侵攻で“小麦争奪戦”「3月から供給停止」で大混乱 ロシアの戦略?(2022年5月17日)

ウクライナ侵攻で“小麦争奪戦”「3月から供給停止」で大混乱 ロシアの戦略?(2022年5月17日)

ウクライナ侵攻で“小麦争奪戦”「3月から供給停止」で大混乱 ロシアの戦略?(2022年5月17日)

 ロシア軍によるウクライナ侵攻は食糧危機を招きかねない状況となっています。ロシアの攻撃で港が閉鎖されたため、大量の小麦が輸出できなくなっているからです。今後、懸念されるのは世界的な「小麦争奪戦」です。

 G7(主要7カ国)の外相は共同声明を採択。ウクライナ侵攻により、ロシアが世界的な食料危機を招いていると非難しています。

 ドイツ、ベアボック外相:「ロシアはウクライナに対する軍事戦争を今や『小麦戦争』とでも言うべきものとして、世界の多くの国家、特にアフリカに拡大することを意図的に選択しています」

 世界中で「小麦の争奪戦」が巻き起こる懸念が。

 ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ南部の貿易港オデーサ。WFP(国連世界食糧計画)は、この港から警鐘を鳴らしています。

 国連世界食糧計画・ビーズリー事務局長:「すぐに港を開いて貿易を再開しないと大惨事になります。世界の何百万人もの人が餓死することになります」

 小麦戦争による食料危機は、すでに世界中で起きています。

 エジプトでは、食卓に欠かせないパンの価格が2倍以上に高騰。

 エジプトの市民:「値段が上がってしまったから、買うのはいつもの半分です」

 エジプトの製粉所、マフムード・サーレムさん:「ロシアとウクライナの戦争が始まって、小麦の輸入は止まってしまいました」

 エジプトでは食料不足を賄うため、去年約600万トンの小麦を輸入。その8割をロシアとウクライナに依存していました。

 ブラジルやインドなど他の国からの輸入に切り替えましたが、小麦戦争の影響で、さらなる窮地に・・・。

 小麦の生産量、世界2位のインドが国内に安定供給するため、小麦の輸出を禁止する措置を取ったのです。

 その背景にはウクライナ侵攻による小麦価格の上昇が・・・。

 小麦の輸出大国でもあるウクライナで一体、何が起きているのでしょうか。

 小麦の輸出会社:「ロシア軍が小麦を盗んでロシアへ輸送しています」

 ロシア軍がウクライナから強奪した大量の小麦。運ばれたとされる場所は中東のシリアです。ロシア軍が強行する密輸の実態が見えてきました。

 ウクライナ最大の港湾都市オデーサ。貿易港として栄えてきた町は、ロシア軍の侵攻によって封鎖される事態に陥っています。

 国連世界食糧計画が食料危機に警鐘を鳴らしています。

 国連世界食糧計画・ビーズリー事務局長:「この港にある穀物は世界の4億人の食糧を支えています。しかし、港は戦争のために閉鎖されてしまいました。すぐに港を開いて貿易を再開しないと大惨事になります。世界の何百万人もの人が餓死することになります」

 世界中の人が餓死する危機・・・。

 ウクライナ農業省の次官は、ロシア軍による意図的な戦略だと訴えます。

 ウクライナ農業省・ビソツキー次官:「戦争が始まってからウクライナの小麦の9割が輸出されていない状況です。ウクライナ国内に限らず、国際的に食料不足の脅威を引き起こす戦略」

 ウクライナは世界有数の小麦の産地。輸出量は世界5位を誇ります。

 ところが、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まってから貨物船での輸出が止まっています。

 本来であれば、小麦を積んだ貨物船はオデーサの港から黒海を経てトルコの海峡を通るルートを進みます。

 ところが、ロシア海軍が通行を妨害しているといいます。

 ウクライナ農業省・ビソツキー次官:「ロシアの海軍はウクライナの船が通っていたルートの近くに軍艦を配置しているので、貨物船に危険が及びます。さらにロシアは輸出ルートに機雷を仕掛けているのです」

 黒海にはロシア海軍が仕掛けた「機雷」と呼ばれる水中兵器が浮遊しているといいます。貨物船が接触、接近すると爆発する仕組みです。

 この海路が使えないため、輸出会社は日本を含む世界56カ国以上に小麦などを運ぶことができないのです。

 ゼレンスキー大統領:「私たちの農産物の輸出がなくなって世界の様々な地域が食料不足の危機にひんしている」

 輸出できない小麦は、封鎖されたオデーサ港の倉庫に保管されています。その量は2000万トンにも及ぶといいます。

 オデーサに倉庫を持つ小麦輸出会社の社長は、さらなる脅威を警戒しています。

 小麦輸出会社「テクライン」・ポロシェンコ社長(37):「倉庫に関して最も大きな脅威はロシアのミサイルが直撃することです」

 すでに小麦畑では、ミサイルの被害が相次いでいます。

 農家:「これは私たちの農場の近くに落ちたミサイルの一部です。畑で草を焼き尽くしました」「キーウ州の農場は、3分の1以上がロシア軍の攻撃の被害を受けています」

 そして、ロシア軍に占領された南部の地域では、小麦の強奪も起きているといいます。

 小麦輸出会社「テクライン」・ポロシェンコ社長:「現在、占領された地域にある倉庫からロシア軍が小麦を盗んでロシアへ輸送しています」

 ウクライナメディアが報じたのは・・・。

 Zマークが付いた車列。ロシア軍が盗んだ小麦を運んでいる映像だといいます。

 ウクライナ農業省・ビソツキー次官:「南部にある倉庫からロシアが小麦を盗んだことは間違いないです。分かっているだけでも50万トンの小麦が盗まれました。彼らは盗んだ小麦をクリミア半島かロシアの地域に移動し、その後は把握しにくい状況です」

 ロシア軍が持ち去った小麦は一体、どこへ・・・。

 AP通信が、ある衛星写真を公開。中東シリアの港です。

 映っているのはロシアの貨物船。盗んだ小麦を積んでいるとみられます。果たしてロシアの狙いとは。

 CNNは港に止まっている船をロシアの貨物船「マトロス・ポジニッチ」と特定。この船は先月、クリミア半島の港で目撃されていました。

 シリアはロシアの友好国で、ソ連時代から密接な関係を築いています。

 ウクライナの輸出会社の社長は涙を流しながら切実に訴えます。

 小麦輸出会社「テクライン」・ポロシェンコ社長:「戦争が終わることを期待しています。戦争が早く終わって引き続き、日本との貿易で協力してもらえると思っています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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