“国連の機能不全”ウクライナ情勢で浮き彫りに…足かせとなる「拒否権」必要性は?【サンデーモーニング】風をよむ|TBS NEWS DIG

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“国連の機能不全”ウクライナ情勢で浮き彫りに…足かせとなる「拒否権」必要性は?【サンデーモーニング】風をよむ|TBS NEWS DIG

ロシアのウクライナ侵攻が続く中、世界平和を守るための仕組みが今、苦境に立たされています。

■60年前のキューバ危機 そのとき国連は?

遡ること60年。1962年、国連安保理では、アメリカと当時のソ連大使の間でこんな場面が・・・

米・スティーブンソン国連大使:
「ソ連がミサイル基地をキューバに建設し、弾道ミサイルを配備していることを否定しますか?イエスかノーか?」

ソ連・ゾーリン大使:
「ここはアメリカの法廷ではない。まるで検察官のような、あなたの質問には答えたくない」

ソ連がキューバにミサイルを配備しているとして、ミサイルの即時撤去を迫るアメリカ。曖昧な答えを繰り返す、ソ連。

キューバ危機と呼ばれた、米ソ両大国の激しい対立に、国際社会は核戦争という深刻な不安に覆われましたが、瀬戸際で回避されました。

この年、発足17年を迎えていた国連。地球上の多くの人々が、世界平和の鍵を握る機関として、国連に信頼を寄せていた時代でした。

■ウクライナ侵攻で“機能不全に苦しむ国連”浮き彫りに

それから60年後。4月26日、長いテーブルをはさんで向かい合った国連のグテーレス事務総長と、ロシアのプーチン大統領は・・・

グテーレス事務総長:
「我々の目標はウクライナの人々の苦しみを減らすことです」

プーチン大統領:
「私たちは国連憲章に従って、特別軍事作戦を始めただけだ」

鋭い視線で、ロシアの立場を主張するプーチン大統領。そこで浮き彫りにされたのは、機能不全に苦しむ国連の姿でした。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は・・・

ゼレンスキー大統領(4月5日):
「国連の果たす役割は終わってしまったのか。国際法の時代は終わったのか。もし、答えがノーなら、直ちに行動をとってください」

国連は今回、ロシア軍の侵攻直後、軍の即時撤退を求める決議案を採決。しかしロシアは拒否権を行使。拒否権の力が改めて示されたのです。

■強力な「拒否権」はなぜ生まれた?重視された“大国の協調”

振り返れば、一般市民も巻き込み多数の戦死者を出した第一次大戦。その反省から生まれた国際的な平和維持機構が、国際連盟でした。
しかし、国際連盟は機能せず、繰り返された世界大戦。そこで結成されたのが、より強力な“国際連合”です。その国際連合が重視したのが大国の協調でした。

国連の中心となったのが、アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国で構成される常任理事国。この5か国の内、1つでも反対すれば、決議は採択されないとする、強力な「拒否権」が与えられました。

では、そもそも「拒否権」という発想が何故生まれたのでしょう?今や、国連の足かせと指摘される「拒否権」。その必要性を、国連はこう説明しています。

「平和を保障する最善の方法は、大国を共通な合意を通じて協力させることである」

また、拒否権は大国を国連につなぎ留める“安全弁”とも言われます。世界平和の理念と自国の国益が相反する常任理事国を追い詰めれば、脱退や分裂に繋がりかねません。
実際、国際連盟では日本とドイツが相次ぎ脱退。その結果が、第二次世界大戦を招いたという指摘もあり、拒否権は、こうした事態を防ぐ“安全弁”になるというのです。

■拒否権に説明責任も・・・ ロシア側は拒否

世界情勢の変化が国連に与える影響は、拒否権にも反映します。
拒否権の最多行使国は、アメリカとの対立が続いてきたロシアの119回。それに次ぐのがアメリカで82回です。

こうした拒否権の応酬は、人道支援や平和維持活動の停滞にも繋がり、国連の改革を求める声が高まるなか、新たな動きが。

4月26日、国連総会は、拒否権を行使した常任理事国に対し、行使後、10日以内に総会で行使した理由の説明を求めるという決議案を採択しました。しかし・・・
 
ロシア・クズミン国連次席大使:
「常任理事国に圧力をかける試みで断固として拒否する」

また、国連安保理は5月6日、ウクライナ情勢をめぐって、ロシアも含め全会一致で「議長声明」を採択。今回、安保理として初めての一致した対応ですが、ロシアの名指しを控えたほか「侵攻」などといった表現は使われていません。

安保理関係者は「ロシアも巻き込んだ対応としては今はこれが限界だ」と話しています。

安保理の議場前に掲げられた、ピカソのタペストリー「ゲルニカ」。第二次大戦前夜のスペイン内戦で行われた、市民を巻き込む無差別爆撃の惨状を描いた作品です。
各国の外交官たちは、この「ゲルニカ」の前に集まることで、ロシアの軍事侵攻に抗議の意思を示しました。拒否権という厚い壁に阻まれた国連の存在意義が今、問われています。

(サンデーモーニング 2022年5月8日放送より)

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