【解説】“ずさんな安全管理”浮き彫り 社長が初会見 知床・観光船事故

【解説】“ずさんな安全管理”浮き彫り 社長が初会見 知床・観光船事故

【解説】“ずさんな安全管理”浮き彫り 社長が初会見 知床・観光船事故

知床半島沖で事故を起こした観光船の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長が27日、初めて記者会見を行いました。社長の至らなさと、あまりにもずさんな安全管理への対応が見えてきました。「一夜明け 社長は… 」、「出航判断した理由」、「船長の“センス”」、以上の3つのポイントについて詳しく解説します。
■“ずさんさ”明らかに…運航会社・社長会見 国交相は強く非難
28日午後、知床遊覧船の桂田社長は北海道・斜里町で、犠牲となった方の遺体が安置された体育館を初めて訪れ、手を合わせました。乗客の家族から「ここに来て、謝ってほしい」という強い要望があり、訪れたということです。

27日夕方に行われた桂田社長の会見では、いろいろな面でのずさんさが明らかになりました。この会見を受けて、28日、斉藤鉄夫国土交通大臣は強く非難しました。

斉藤国交相
「到底、ご家族のみなさまの納得のいただける説明ではなかった。私が第一に感じたのは、当事者意識の欠如、責任感の欠如だと思います」

また、斉藤国交相は、桂田社長の態度だけでなく、もう一点、強く否定したことが出航した理由についてです。桂田社長は27日の会見で次のように説明しました。

知床遊覧船 桂田精一社長
「条件付き運航というもので、午後に天気が悪くなる場合は、船長判断で戻ってきていただくことを長年やっています。みんな長年やっているような形です」

桂田社長は会見で、何度も口にしていたのが「条件付き運航」という言葉です。天気などが急変した場合、船長判断でルートの途中でも戻るというもので、事故当日は社長と豊田船長が話し合って、「条件付き運航」での出航を決めていたわけです。

28日、斉藤国交相は、「条件付きということはありえない」と強く否定しました。国土交通省としては、安全管理規程のルール上、「荒れるおそれがある場合は出航できない」と条件付き運航という考え方はないと明言しています。

■「危険な予報が出ていたなら、出航は取りやめるべき」と指摘も
「条件付き運航」について、元・海上保安監で海上災害防止センターの伊藤裕康理事長に聞きました。

伊藤理事長は、「今の気象予報は非常に精度が高いので、危険な予報が出ていたなら、例え目の前の海が静かでも、出航は取りやめるべきだった」とした上で、「知床遊覧船が行ってきた条件付き運航は明確な規定はなく、言わば船長の感覚任せな部分があった。また、現場がより慎重に安全側に立って、早めに船を返すなどを判断するならまだしも、今回はその逆だった」と指摘しました。

つまり、少しでも危なければ、引き返すのではなく、今回は、「『少しでも行けそうなら、行けるところまで行ってしまおう』という考え方が問題だったのではないか」と伊藤理事長は指摘しました。

■過去にも座礁事故 行政指導も…
「条件付き運航」で引き返すかどうかを判断する船長の能力がどうだったのかが、とても重要になってきます。

同じ知床で、別のクルーズ船を運営する会社の人は、豊田船長について「去年から船長になったばかりで経験も浅い。定置網に突っ込みそうな角度で運航している場面を目撃した」という声があがっています。

実際、2021年6月には、豊田船長の「KAZU 1」は座礁事故を起こし、北海道運輸局から行政指導も受けていたということです。

■なぜ?経験の浅い人が船長に 船長抜てきの判断材料とは …
なぜ、経験の浅い人が船長になれたのでしょうか?

桂田社長は、豊田船長について「『素晴らしいセンスがある』と、ベテラン船長から言われていた」ということです。

桂田社長によると、通常はベテラン船長について3年ほど甲板員をやってから、4年目くらいから船長になるということです。2年目で船長になったのは、「センスがあると見込んだから」と言っています。

船長抜てきの判断材料は、他にもあったようです。桂田社長によると、豊田船長は大型トラック、観光バス、水上バスなどの運転手を長年務めた経験を「買われた」ということです。

■船長に求められる“資質”とは? 専門家に聞く
ただ、先ほどの伊藤理事長は、「センスというのは非常に感覚的、抽象的な言葉だ。船長に最も求められる資質は、船の操縦技術以上に、現場の海域を熟知していることで、適切な状況判断ができる能力」だと強調していました。

つまり、「“操縦がうまいか下手か”ということよりも、現場の海域でどこに岩があり、波の特徴がどうなのかなどを経験としてわかっていることが、重要だ。今回の最大の問題点は、「現場の船長に、判断を全て任せていたことだ」と伊藤理事長は指摘しています。

     ◇

今回の社長会見で見えてきたのは、海の怖さや自然の脅威を最も熟知しているべき人たちが、その意識が希薄なまま、人の命を預かる立場にいたという現実です。大型連休を前にした大きな教訓ですが、その代償はあまりに大きすぎます。
(2022年4月28日放送「news every.」より)

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