帝政ロシア「ツァーリ」自認か プーチン氏の世界観(2022年4月24日)

帝政ロシア「ツァーリ」自認か プーチン氏の世界観(2022年4月24日)

帝政ロシア「ツァーリ」自認か プーチン氏の世界観(2022年4月24日)

ロシア正教会復活祭の儀式に姿を現したプーチン大統領と、その場を取り仕切るキリル総主教。
深いつながりがあるこの2人には、ウクライナ侵攻の背景となった、ある共通の価値観があるといいます。

▽プーチン氏“精神的盟友”と復活祭に
イエス・キリストの復活を祝うロシア正教会の復活祭。
「世界の平和、精神の救いのため祈りましょう」
プーチン大統領も参加し、平和への祈りが捧げられました。

プーチン大統領の“精神的盟友”だと言われているロシア正教会のトップ、キリル総主教(75)。
戦闘が続くウクライナのドンバス地方に送るパンに聖水を振りかけました。
(ロシア正教会 キリル総主教)「できるだけ早くこの内戦が終わり、待望の平和が訪れますように」
キリル総主教は、プーチン大統領を擁護する発言を繰り返しています。
(ロシア正教会 キリル総主教)「ロシアを公然と敵とする勢力が国境に近づいています。NATO諸国はロシアの恐怖や危機感を無視して、年々、軍事力を拡大しています。」

▽2人に共通する価値観「ロシアの世界」
2009年の総主教就任以来、プーチン大統領と何度も面会しているキリル氏。
(プーチン大統領)「ウクライナ、ベラルーシ、ロシアは1つの民族です」
(キリル総主教)「私たち(ロシアとウクライナ)は、みんなキエフ(キーウ)から出発した歴史的運命で結ばれた1つの民族です」
2人に共通する価値観とされるのが・・・
「ルースキー・ミール(ロシアの世界)」。
ロシア語を話す人やロシア正教を信じる人などが住む地域は同じ「ロシアの世界」だと考えているといいます。
(笹川平和財団 畔蒜泰助主任研究員)「ロシア正教というのは、ルースキー・ミールの最も中核に位置付けられる、それを共有してるロシア・ウクライナ・ベラルーシというのが、まさにルースキー・ミールの最も重要な核であるということなんだと思います」

モスクワ郊外に2年前に完成した「ロシア軍主聖堂」。第二次世界大戦の勝利をたたえ、祖国を守るために戦った戦没者の写真や武器が展示されています。
今月3日、キリル総主教はここで、兵士たちに特別な祈りを捧げました。
(ロシア正教会 キリル総主教)「世界の大多数の国は(我が軍に敵対する)巨大な力の影響下にあります。私たちも大いに強くならねばなりません」
ウクライナ侵攻に深くかかわるロシア正教会。内部からも批判の声が挙がっています。

▽「プーチン政権のプロパガンダの手先に・・・」
モスクワに近いコストロマ州で公然と戦争反対の声を挙げたエーデルスタイン司祭に話を聞くことができました。
(ロシア正教会 エーデルスタイン長司祭)「イエス・キリストは私たちに武器を手に取ることを教えたことはありません。教えてくださったのは愛だけです。キリル総主教は今、プーチン政権のプロパガンダの手先になっています」

23日時点でロシア正教会の司祭など293人がウクライナでの戦争終結を求める請願書に署名していますが、ほとんどの司祭は声を上げられずにいるといいます。

▽帝政ロシア「ツァーリ(皇帝)」を自認か
2000年の大統領就任以来、プーチン大統領はロシア正教の信仰と伝統を重じる姿を見せてきました。
2018年には、マイナス6℃の寒空の下・・・伝統行事「主の洗礼祭」で、水に体を浸します。
帝政ロシア時代、「神の代理人」として権力をふるった「ツァーリ(皇帝)」に、自らの存在を重ねているといいます。
(笹川平和財団 畔蒜泰助主任研究員)「おそらく自ら自認しているのではないかと思うんですけども。プーチン大統領の理想とする世界観というのは、それはおそらくソ連の時代の世界観ではなく、ロシア帝国時代の世界観」

プーチン氏が「ルースキー・ミール」という価値観を前面に押し出すようになったのは、2期目の大統領に就任した2012年ごろ。
きっかけは、その前の年にロシア各地で起きた「反プーチンデモ」だとみられています。
(笹川平和財団 畔蒜泰助主任研究員)「ソ連邦が崩壊し共産主義が敗れ、ロシアは西側が掲げる民主主義あるいは自由主義というものに対して思想的・イデオロギー的に対抗する手段を失った。2012年以降プーチン大統領が掲げたのが伝統的な価値観に基づく保守主義という考え方であり、ルースキー・ミールという考え方」

2014年に一方的に併合したクリミア半島。
今回侵攻したキーウも、ドンバス地方も、プーチン大統領が考えるルースキー・ミールなのだといいます。
(笹川平和財団 畔蒜泰助主任研究員) 「(キーウは)ロシア正教においてまさに源流の場所だと。ドンバス地方もそうですし、ウクライナ南部、オデッサ(オデーサ)あたりまでもそうでしょうし。さらにはモルドバの沿ドニエストル地方などもそれにあたる。ルースキー・ミールという考え方からするとおさえたいという所なんだと思いますね」

4月24日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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