核保有国の北朝鮮は今回のウクライナ情勢をどう見ているのか【サンデーモーニング】風をよむ|TBS NEWS
このところ不気味な動きを続ける北朝鮮。背景には何があるのでしょうか?
■「黒いカバン」の正体は―
4月12日、ベラルーシのルカシェンコ大統領とともに、宇宙基地を視察した、ロシアのプーチン大統領。
近くにいる軍人らしき人物が持っている、黒いカバン。8日の映像でも同じく、黒いカバンを持つ男性が確認できます。
イギリスの複数のメディアは、この黒いカバンの中には、核ミサイルの発射装置、“核のスイッチ”が入っているのでは、と指摘しました。
■核の使用ちらつかせる“もう一つの国”
ウクライナを巡って、ロシアの核兵器使用が懸念される中、同じく今、核の使用をちらつかせている国があります。それは・・・
4月15日、金正恩総書記の祖父、金日成主席の生誕から110年となった北朝鮮。金総書記の出席のもと、市民による大規模なパレードが行われました。
そして17日、労働新聞は金正恩総書記も視察した「新型戦術誘導兵器」の発射実験の写真を掲載し、実験は成功したと報じました。
朝鮮労働党トップに就任し、4月11日で10年となった金総書記。この間、憲法を改正して、北朝鮮を「核保有国」と明記し、核・ミサイル開発を推し進めてきました。
また金総書記の妹・与正氏も、4日付けの談話で、韓国が軍事的な対決を選択した場合には、核兵器使用も辞さない構えを見せています。
■ウクライナ情勢 北朝鮮はどうみる―?
その核保有国・北朝鮮は、今回のウクライナ情勢をどう見ているのでしょうか。
北朝鮮が初めて反応を示したのは、侵攻開始2日後の2月26日。
北朝鮮外務省はウクライナの事態について、「ロシアの合法的な安全上の要求を無視して、一方的な制裁・圧迫のみにしがみついた米国の強権と専横に根源がある」と主張し、ロシアを擁護したのです。
そしてこのロシアによるウクライナ侵攻から、北朝鮮が“ある教訓”を得てしまう懸念があると、専門家は指摘します。
慶應大学 礒﨑敦仁教授
「構造としては、核を持たない小国が大国に侵略されてしまった。それを防ぐために核ミサイルが必要なんだというのが北朝鮮の論理。ウクライナ情勢を受けて、北朝鮮が『核が必要だ』『核に依拠しないといけない』という考え方に、さらに傾いていくという懸念はある」
1991年、ソ連から独立したウクライナ。独立直後は、旧ソ連時代の核が配備されていたため、世界第3位の核保有国でした。しかし94年、ロシアやアメリカなどとの間で「ブダペスト覚書」を結びます。
米・クリントン大統領(当時)
「アメリカとウクライナ、そしてロシアとで、ウクライナの核廃棄に調印します」
これは安全保障の約束と引き換えに、ウクライナが核兵器を放棄するという内容でした。
しかし、今回、ロシアはウクライナに侵攻し、その約束を反故にしたのです。
またかつて、核開発を放棄したリビアのカダフィ体制が、NATOの軍事介入を経て、2011年に崩壊したことも、北朝鮮は「中東諸国の教訓」と名づけて、その後、核保有の必要性を明確に訴えるようになります。
■北朝鮮に見えつつある“危険な兆候”
そして2016年、北朝鮮はそうした考えを明らかにした論評を行います。
「弱肉強食の法則が作用する国際政治の秩序の中、核を保有しなければならないというのは、21世紀の現実が証明した血の教訓だ」
さらに今回のウクライナ侵攻で、北朝鮮に危険な兆候が見えつつあるというのです。
ロシアのウクライナ侵攻を食い止めることができなかった国連は、その機能不全を露呈。それが北朝鮮に大きな影響を及ぼすのでは、と専門家は指摘します。
慶應大学 磯崎教授
「今のウクライナ情勢は発射実験どころではない。隣国が隣国を直接攻撃 している状況。そういった状況でも国連が機能不全に陥っていることを目の当たりにした北朝鮮は、兵器開発をますます堂々と進めることができるのではないかと考えておかしくない」
実際、3月の北朝鮮によるICBM=大陸間弾道ミサイルの発射に対しても、中国とロシアが慎重な姿勢を崩さず、全会一致が必要となる声明を出すことができませんでした。
その一方で、北朝鮮の去年1月時点での核弾頭保有数は40~50発。毎年10発のペースで増えているという推計もあります。
韓国では5月、北朝鮮に対し融和的だった文在寅政権に代わり、強硬な姿勢を示す尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が大統領に就任。南北関係の緊張が高まることが懸念されます。
尹錫悦氏
「いかなる挑発も確実に抑止できる強力な国防力を構築する」
こうした中、北朝鮮は4月25日に「朝鮮人民革命軍」創建90年を迎えますが、それに合わせ、軍事パレードやICBM発射の可能性も指摘されています。
今回のウクライナ侵攻を注意深く見守る北朝鮮。今後の東アジア情勢に与える影響は決して小さくはありません。
(サンデーモーニング2022年4月17日放送より)
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