【解説】化学兵器の使用はあったのか?マリウポリ制圧に攻勢強めるロシアに各国の対応は?【Nスタ】
ウクライナの軍事組織が「ロシア軍が不明の毒物を使用した」とSNSで発信。被害者に呼吸困難などの症状があるとして「化学物質による攻撃」との見方を示しています。アメリカ政府は「現時点で確認はできない」としながらも、引き続き注視していく方針です。化学兵器の使用はあったのか?その場合、各国はどう対応するのか?TBSスペシャルコメンテーター星浩さんが解説します。
■ロシア軍の毒物使用疑惑 南東部の都市・マウリポリとは?
ホラン千秋キャスター:
心配な情報が入ってきました。実際に使用されたかどうかは確認されていないのですが、ウクライナの軍事組織が「ロシア軍が毒物を使用したのではないか」という情報を発表しました。
そして、その毒物が使用されたとみられるのが“マリウポリ”という街です。このマリウポリという街へロシア軍が制圧に向けて攻勢を強めています。
マリウポリという南東部の街はドネツク州というところに属しています。そしてドネツク州とルハンシク(ルガンスク)州というのを2つ合わせてドンバス地域と言います。ドンバス地域と並ぶ形で、ロシアが一方的に併合したクリミアと言う場所があるわけです。
では、マリウポリはどういった街なのか見ていきましょう。
マリウポリはドネツク州第2の都市で、侵攻前は▼約40万人が暮らしていました。港湾都市として発展し、重工業の中心地でもあります。マリウポリにはどういった重要度について専門家に聞きました。
笹川平和財団 畔蒜泰助さん
「マリウポリを取れば、ドンバスからクリミアまで陸続きにすることができる。2014年に奪取に失敗したプーチン大統領にとって、政治的にも重要」
2014年に奪い取れなかったマリウポリを“今回こそは”というふうに思っているのかもしれません。
■死者2万人超えとの情報も・・・マリウポリの現状
ホランキャスター:
大変悲惨な状況になってしまっています。
マリウポリ ボイチェンコ市長(AP通信のインタビューに対して)
「1万を超える市民が死亡した。遺体が町じゅうに散乱していて、死者は2万人を超えるかもしれない」
実際どれくらいの方が亡くなっているのか、まだしっかりと確認はできていないような状況です。
さらに11日のことです。ウクライナ兵のSNSにはこんな投稿がありました。
ウクライナ兵のSNSより
「弾薬の補給もなく、食料も水もほとんど飲めず、きょうがおそらく最後の戦いになるだろう」
ただこの投稿に関しては、実際にウクライナ兵によって行われたものなのか分かっていません。海外メディアによるとハッキングされた可能性もあるということで、実際には何が起きているのかわからないというような状況です。
■呼吸困難などの症状 “化学兵器”は使用されたのか?
ホランキャスター:
そして、マリウポリで動きがありました。
ウクライナの軍事組織「アゾフ連隊」のSNSによりますと、ロシア軍がウクライナ軍人と市民に対し「不明の毒物」を使用したと発表したのです。どのように使用された可能性があるのでしょうか。
アゾフ連隊の責任者によりますと「ロシア軍が無人機から投下した」可能性があるということです。被害者は呼吸困難などの症状を訴えていて、これは「“化学物質”による攻撃なのではないか」という見方だそうです。
アメリカの見方はどうなのでしょうか。国防総省のカービー報道官は「現時点で確認はできないが、引き続き状況を注視していく」としています。
井上貴博キャスター:
まだ証拠がない中でハッキングのリスクもありますし、情報の信ぴょう性はわからないという大前提のもと、いずれにしてもいつ使ってもおかしくないと言われていた化学兵器。これはプーチン大統領としては、欧米の足元を見て行動しているということも言えるわけですか。
星浩コメンテーター:
まず化学兵器ですが、今までイラン・イラク戦争やシリアで使われたと言われています。私もシリアに取材に行ったことあるのですが、当事者は認めませんのでなかなか確証は取れない。だから確認というのは難しいと思うのですが、ただ今の段階ですと使われた可能性はかなりあるという認定だと思います。アメリカなどでもそういう見解になりつつあるようです。
ただ、ロシアの方は戦況全体としては相当もう手詰まりになってきてます。“化学兵器を使う可能性があるぞ”ということで、相手に対するブラフとして使ってる可能性は私はかなりあると思います。
井上キャスター:
手詰まりだとしても、とても厄介な展開ですね。
■“化学兵器”が使用されていたら・・・アメリカはどう動く?
ホランキャスター:
4月8日時点では、マリウポリの中心部はロシア軍による進軍・制圧が確認されていない場所が多く見られました。しかし、11日になりますと、さらにロシア軍が中心部に進軍したとみられます。どんどんマリウポリという街が攻め込まれてしまっている状況です。
では、ここで何が起きているのでしょうか。こちらは親ロシア派による発表です。
ドネツク人民共和国 軍事担当報道官
「(マリウポリの)製鉄所の地下に3000~4000人のウクライナの勢力が隠れている」
これに対して“化学部隊の手でいぶり出す”と化学兵器を使う可能性を示唆していたのですが、実際に使われていたのかどうかというのはわかりません。
こういった発表をどう受け取るのかという部分も大変難しいところです。もしこの化学兵器を使っていたとしたら、各国はどう対応するのでしょうか?
アメリカ バイデン大統領(3月24日のロイター通信より)
「もしプーチン大統領が(化学兵器を)使用すれば我々は対応する」
どのような対応がなされるか、注視されています。
井上キャスター:
対応というのは何を指すのか。やはり武力行使になると世界大戦になってしまう、それはできない。どこまで踏み込めるのでしょう。
星コメンテーター:
実際に化学兵器を使った場合にアメリカが対応した具体的な例があります。4年前、トランプ政権のときにシリアで化学兵器が使われたという認定をして、クルーズミサイルでその拠点を爆撃したのです。
ですから今回のバイデン大統領は否定も肯定もしていないのですが、仮にその人道的な配慮で化学兵器が使われた場合、その親ロシア地域の拠点をクルーズミサイルで攻撃する可能性を否定してないですね、実は。
もちろんロシア本土に対して攻撃というのは、なかなかリスクがあるります。世界大戦になる可能性もあるのですが、親ロシア地域の軍事拠点、そこに化学兵器を使ったということを理由に空爆するという可能性は否定してない、というところに注目すべきだと思います。
井上キャスター:
それは証拠が出た後に行動を起こすのですか。
星コメンテーター:
トランプ政権のときもある程度確証があったことで、空爆に踏み切ったということがありましたから。そういう例はもちろんアメリカを参考にしてると思います。
(12日18:31)
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