「2週間が好機」ウクライナ東部攻防の行方は・・・NATO軍事支援加速の狙いは 専門家に聞く(2022年4月11日)
ロシア軍がウクライナ東部への攻勢を強めるなか、アメリカメディアは、ウクライナ進攻の総司令官に、新たにアレクサンドル・ドボルニコフ氏が任命されたと伝えました。
ドボルニコフ氏は2015年、シリア内戦で指揮を執り、在任中に民間人へ化学兵器を使った攻撃や無差別爆撃が行われ、大きな役割を果たしたとされています。
アメリカメディアなどからは“シリアの虐殺者”と呼ばれ、ロシア国内では“英雄”の称号を与えられています。
◆防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
(Q.ドボルニコフ氏が司令官になると聞いて、最初にどう思いましたか)
兵頭慎治さん:「ベテラン級で重鎮の将軍で驚きました。これまでにロシア国内のチェチェン紛争やシリアの内戦で、戦況の立て直しに貢献し、ロシア政府から英雄の称号を受けました。大物の将軍を前線での総司令官に任命したというのは、これから5月9日の対独戦勝記念日までに、東部2州を完全に制圧するという強い意志を表明したと受け止めています。
(Q.新たな司令官任命で、ロシア軍の侵攻はどう変わりますか)
兵頭慎治さん:「これまでウクライナ全土でバラバラに戦闘していた感じがありました。ドボルニコフ司令官が、より効果的・効率的な軍事作戦を総指揮していくのだと思います。ロシア側の軍事行動がさらに激しさを増す可能性があります。
ただ、長期の戦いを強いられている、現場の兵士の士気は大幅に低下しています。ウクライナ側も欧米からの追加の軍事支援を受けて、徹底抗戦の構えを見せているので、今回の指揮官任命によって、ロシア側が選挙区で有利な状況になるのかは、時間をかけて見極める必要があると思います」
(Q.“シリアの虐殺者”と呼ばれる司令官の着任で、化学兵器の使用などの懸念はありますか)
兵頭慎治さん:「シリアでも人口密集地に空爆をしたことがありました。ウクライナでもすでに東部クラマトルシクの駅での攻撃を命じたという見方もあります。さらに、ロシアの戦況が悪化した時に、生物化学兵器などの大量破壊兵器を使用する可能性が高まると、欧米諸国も危ぐしているようです」
元NATO欧州連合軍最高司令官のウェズリー・クラーク氏が、海外メディアの取材で「ウクライナを救うのは次の2週間がチャンス。今こそ、ウクライナ軍に強力な武器を支援すべき」と分析しています。
実際、アメリカ、チェコ、スロバキアなどNATO加盟国が軍事支援を進めています。週末にはイギリスのジョンソン大統領がウクライナの首都キーウを電撃訪問。新たに装甲車120台や対艦ミサイルシステムなどを提供すると発表しています。
(Q.ジョンソン首相の電撃訪問やNATOの軍事支援強化は戦況にどう影響しますか)
兵頭慎治さん:「5月9日まであと4週間。前半2週間の攻防戦が最終的な戦況を決定付けると、ロシア側もウクライナ側も見ているようです。ジョンソン首相が電撃訪問し、ウクライナへのさらなる軍事支援を表明したのは、これからの2週間という重要な局面があるので、さらに一歩踏み込んだ軍事支援を行うということだと思います。
キーウから撤退していたロシア軍の部隊が東部に再配置される可能性がありますが、これも2週間くらいかかるという見方があります。ウクライナはその前に攻撃をしなければならないという背景もあると思います。
ロシア側も、このタイミングでドボルニコフ氏を総司令官に就任させて、これからの2週間に対応しようとしているのだと思います」
ロシアのプーチン大統領とオーストリアのネハンマー首相との会談が11日夜に始まりました。ロシアによる
ウクライナ侵攻が始まってから、EU(ヨーロッパ連合)に加盟する国の首脳が、プーチン大統領と対面で会うのは初めてです。
ネハンマー首相はSNSで「我々は軍事的に中立だが、ロシアのウクライナ侵攻に対する態度は明確だ」と述べました。
一方、ロシア大統領府の報道官は「オーストリアにとって重要な天然ガスをめぐる問題についても議論を避けるわけにはいかない」とコメントしています。
(Q.オーストリアとロシアの会談をどう見ますか)
兵頭慎治さん:「オーストリアはEUに加盟していますが、NATOには加盟していません。ロシアで天然ガスをかなり依存している国でもあります。オーストリアとしても対面の首脳会談をやることで、停戦の出口を見出そうとする動きだと思います。ただ、プーチン大統領と直接会談をしたとしても、大きな影響を与えないのではないでしょうか。
オーストリア首脳の会談や、イギリス首相のキーウ電撃訪問など、ヨーロッパの中でロシアに対する対応の統一感がなくなっています。先週まではG7・NATOの外相会談で結束感が見られましたが、各国の被害状況によって足並みが乱れているようにも見えます」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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