ロシアの“軍事要塞化”進む北方領土に日本はどう対処を【後藤部長のリアルポリティクス】

ロシアの“軍事要塞化”進む北方領土に日本はどう対処を【後藤部長のリアルポリティクス】

ロシアの“軍事要塞化”進む北方領土に日本はどう対処を【後藤部長のリアルポリティクス】

ロシアは北方領土での軍事演習を繰り返しています。日本政府は2012年の第二次安倍政権成立後、首脳会談を繰り返し平和条約締結と北方四島の帰属問題に力を入れてきましたが、その陰で着々と北方四島の軍事施設の強化やミサイル配備を進めてきました。ロシアの“軍事要塞化”が進む北方領土に日本はどう対処していくのか?TBS報道局の後藤俊広政治部長が解説します。(聞き手:渡部峻キャスター)

きょうは北方領土について考えていきたいです。ロシアがここにきて様々な形で軍事演習を行っています。着々とロシアは軍事基地化、軍事要塞化を意図した準備を一定期間進めてきたことが見えてきたと思います。軍事演習を頻繁に行っていて、4月1日に1000人規模で軍事演習を行ったということ、特に択捉と国後という大きな島がありますが、そこを中心に行いました。対戦車ミサイルの発射準備演習を行ったということで、3月25日にも同様の軍事演習を行っています。これは3000人を超えたものです。半月で二度も大きな演習を行っていることは政治的な意図があると思います。

ーーロシア側にとってどういったメッセージがあるのでしょうか?

ロシアは平和条約交渉を中断すると発表しています。ロシアに対して制裁を強めている、そうしたことへの強いメッセージがあると思います。

ーー威嚇という意味は?

威嚇に近い、軍事演習というのは目の前で軍事力を見せるわけですから、かなり強い威嚇だと思います。日本もこれに対して積極的な発信をしてきています。「外交青書」という外務省がまとめる出版で北方領土について「ロシアによる不法占拠」という文言を明記しました。これは歴史的な事実だから問題ないのですが、この20年近く2003年を最後に記載されていませんでした。おそらくロシアに対して必要以上に刺激しない方がいいだろうという判断だと思いますが、19年ぶりにそういった文言が復活した。さらに北方領土は「日本固有の領土」という文言も復活しています。11年ぶりということです。2003年は小泉内閣、小泉さんは外交に関しては日米同盟と北朝鮮の拉致問題の解決の二本柱に力を入れていて、ロシアに対してはシビアに見ていたのではないかなと思います。

日ロ関係が劇的に動いたのは2012年の第二次安倍内閣の成立からです。安倍総理はプーチン大統領とは個人的に相性が良かったのか、実に27回の首脳会談を行いました。回数でいえば非常に多いです。おそらく安倍総理の意図としては懸案の平和条約交渉を進めたいということと、平和条約締結のための懸案である北方領土の帰属問題。プーチン大統領との会談の中で4島のうちの一部は返還されるのではないかと。具体的には歯舞・色丹の2つに関しては、2つの島の返還を基本とする“日ソ共同宣言を基に”ということですから、そういった狙いがあって交渉を進めて行ったと思います。2019年の東方経済フォーラムで安倍総理は演説で「ウラジーミル。君とぼくは同じ未来を見ている」ウラジーミルって誰の名前かわかります?

ーープーチン大統領ですね。

プーチン大統領の名前をフレンドリーな言い回しであえて名前で呼びかけた。さらに「ウラジーミル。2人の力でかけて駆け抜けようではありませんか」これは2人の首脳が協力して平和条約を締結しようというメッセージだったと思います。その時の安倍総理の心象として一定程度進むのだろう、帰属問題も含めて確証に近いものがあって、こういったメッセージを発したんだと思います。しかしそれが2年半ほど前のことでしたが、まさかこういう状況に日ロ関係がなるということは誰も予想できなかったと思います。

ーー平和条約交渉が白紙になっている。

平和条約交渉が中断ですよね。中長期的に進まないのではないかというのは想像できます。もう一つは外交の教訓にしなければならないことは、この10年日ロの友好ムードは進んでいましたが、その一方でロシアは軍事要塞化を進めていた事実もあります。

「防衛白書」によれば2016年には択捉島と国後島の沿岸には地対艦ミサイルを配備。さらに2018年までには最新型の主力戦車が確認されました。また地対空ミサイルも配備されていました。まさに、先ほど安倍総理がメッセージを出したのが2019年ですが、ちょうどその時期と同時並行で軍備を進めていた。これはロシアの冷徹な、外交では友好関係を結ぶけれども、その一方、軍事安全保障では着々と軍事要塞化、兵器を配備して既成事実を積み重ねてきたんだという、非常に国際政治の厳しさを感じます。

ーー北方領土はかなり(北海道から)近いところにあります。

実は一番近い海岸の町からだと国後島まで24キロです。私たち東京で通勤する距離もだいたい20キロから30キロくらいというのが相場と思いますが、それぐらいのところにある、そこが軍事要塞化が進んでしまうと、我が国の安全保障のあり方にも変わってくる厳しい状況が迫ってくることにもなりかねません。これまで日本は東アジアに関しては1に北朝鮮、2に中国の海洋進出が日本にとっての脅威でしたが、ここにきて千島から北方領土に関する軍事プレゼンスをさらに強めることになった場合、東西南北すべてから安全保障の脅威や課題と向き合わなければならない、というのがいまの状況です。
(04日16:39)

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