真相は・・・ 「ウクライナが空爆」とロシアが主張する思惑(2022年4月2日)

真相は・・・ 「ウクライナが空爆」とロシアが主張する思惑(2022年4月2日)

真相は・・・ 「ウクライナが空爆」とロシアが主張する思惑(2022年4月2日)

ロシアの軍事と安全保障に詳しい小泉悠さんに、ロシアが「ウクライナから貯蔵施設を攻撃された」と主張する思惑や、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発からロシア軍が撤退した意図について、またプーチン大統領の80%を超える支持率についてお聞きしました。

●ロシア主張・・・ウクライナ軍がロシア領土内を攻撃
板倉)
CNNによりますと、首都キーウ(キエフ)近郊にある空港からロシア軍が撤退したと報じています。しかし、その一方でフランス軍によりますと、戦闘が激化しているマリウポリの制圧に向けてロシア軍が前進していて、マリウポリに関して、数日から数週間で陥落する可能性があると分析しています。そうした中、ロシアが今回ウクライナに侵攻後初めて、ロシアの領土内が攻撃されたという情報も入ってきています。それが、ウクライナとの国境に近いベルゴロドという場所にある燃料貯蔵施設がウクライナ軍によって空爆されたとロシア側が主張しているんですが、ただこれウクライナ側は否定しているということですね。

高島)
小泉さん、ロシアの貯蔵施設がウクライナに攻撃されたという、ロシア側の主張ですけれども、どうご覧になっていますか?

小泉さん)
2つの可能性が考えられると思うんですね。1つ、ベルゴロドという街が目の前にハルキウ(ハリコフ)がありまして、ここを攻略するための拠点になっているわけですね。
軍事用語で言うと策源地という言い方をしますけども。ベルゴロドを叩くということ自体はウクライナ側から見ると軍事的合理性はあるわけですよね。防御というのも必ず守り一辺倒ではなくて、可能であれば必ず逆襲をかけますし。それから、ベルゴロドでは数日前に弾薬が爆発するという事件も起こっていて、これも実態はよくわからないんですけども、ウクライナがこういった形で目の前のベルゴロドに対して反撃をかけてるってことはあってもおかしくないだろうというふうに思います。ただ、今出てきている色んな情報を見てみると、ロシアが自分でやったんじゃないかというような説も囁かれるようになっていて、その場合は、ウクライナに対して「全く無関係の民間施設を攻撃しようとしてるんだ」というような罪をひっかぶせるような、いわゆる偽旗作戦ですよね。この2つの可能性が今のところ考えられるのかなと思っています。

高島)
停戦交渉が行われてる中でのそういった行為というのは、発展が見えないような気もするんですが、その辺はどうですか?
小泉さん)
実際ロシア側からも、例えば。「ウクライナがやったから我々としてはこうだ」というはっきりとしたレスポンスは今のところ見えてこないけども、もしかすると交渉の中で、「ウクライナ側はこんな非道なことをしてきた。民間のインフラ施設を攻撃してきたじゃないか」というようなこと言って優位に立とうとしているのかもしれませんし、あるいは全く別の思惑があるのかもしれないです。

高島)
一方で、ロシア軍のチョルノービリ(チェルノブイリ)原発からも撤退したということですけれども、この動きはどう見ていますか?
小泉さん)
これもはっきりしていなくて、そもそも軍事的な合理性から考えると原発を占拠する必要はなかったはずなんですよね。ですから何か政治的な理由で「原発を占拠せよ」という命令があったんだと思います。今回ここから撤退していったということになると、1つは政治的な理由で「やっぱりもうそこは保持しなくてもよい」というふうに言われた可能性と、今実際にこのキエフの周辺からロシア軍は引きつつありますので、その一環として一緒に撤退してるという可能性ももう1個考えられると思います。
高島)
その撤退した軍がマリウポリの方にこう行くということはあるんでしょうか?
小泉さん)
ロシア、マリウポリに限らず東部の方に注力すると言ってますから、ここで引き抜いた部隊を東部の方にぐるっと回してくるという可能性は1個あるとますし、同時に東部の方に注力するということ自体が陽動作戦で、実際は1度下げた部隊を再編成してまた改めてキエフの攻略を狙いにいく。つまり、それによってウクライナの政権を転覆させようとすると。そういう可能性も依然として残ってると思いますので、全く予断を許さない状況であると思っています。

●プーチン大統領の支持率83%

板倉)
アメリカのバイデン大統領はプーチン大統領について、「孤立しているようだ」と発言しています。しかしロシア国内で、民間の世論調査機関によりますと、プーチン大統領の支持率、83%だと発表しています。これは4年ぶりのことで、80%を超えているということですが。 ロシア国内情報統制が行われている中で、この数字自体の正確性も含めてロシア国内でのプーチン大統領の支持というのはどうなんでしょうか。

小泉さん)
まず、今回の世論調査を発表してきたのが、「レバダセンター」という民間の世論調査機関で、ここは本来わりと政府に対して厳しい立場なんです。ですから、ここからこういうふうに、グッと支持率が上がってるよという情報が出てきたのであれば、実際に上がってるんじゃないかは思います。 今ロシアのメディアを見ていると、ロシア軍は決して負けているように見えないんです。メディアだけ見ていると。何十カ所ウクライナ軍施設を破壊したと言っていますし、ロシアの戦争を「正しいんだ」と言ってますから。一般の人たちは、ある程度この戦争は上手くいってるし、正しいという認識を持ってるんじゃないかと思うんですね。 だから、そういう時にそのプーチン大統領に対する支持が集まるってことはそんなに不自然ではないと思いけども。やはりこの先、戦死者が増えるとか経済的な状況が悪くなっていくという時に中長期的にプーチン大統領の支持率は、どういうふうになるんだろうというのは非常に気になるところですよね。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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