【解説】米大統領「プーチン氏は孤立」発言 ロシア内の実状は【Nスタ】

【解説】米大統領「プーチン氏は孤立」発言 ロシア内の実状は【Nスタ】

【解説】米大統領「プーチン氏は孤立」発言 ロシア内の実状は【Nスタ】

米バイデン大統領は、ロシア・プーチン大統領について「(政権内で)孤立している」と会見で話しました。はたして真偽のほどは?ロシア政治に詳しい慶應義塾大学・教授の廣瀬陽子さんとともに、最新のロシア軍の動向とあわせて解説します。

■“軍縮”ではなく“再編成”か ゼレンスキー大統領「そこは地獄」

山内あゆキャスター:
人道回廊が機能するかどうか心配されているマリウポリから見ていきます。3月31日、ゼレンスキー大統領は「今マリウポリはヨーロッパで最も怖い場所。そこは地獄、大惨事です。ロシア軍が人々の移動を妨げ、救援物資の輸送もできていない」と危機感をあらわにしました。マリウポリがどうなるのかということが大変注目されています。

ただ、ロシア側は停戦交渉の中で、首都キーウ(キエフ)と北部チェルニヒウ方面に関して軍事行動を大幅に縮小すると言ったのです。

その北部にあるチョルノービリ(チェルノブイリ)原発について、原発運営会社「エネルゴアトム」は3月31日、「チョルノービリ原発に現在、部外者はいない」とSNSに投稿しました。

また、IAEA=国際原子力機関は、「ロシア軍が原発の管理をウクライナ側に戻したと、ウクライナ側から連絡があった」という声明を出していて、状況が一歩進んだような印象を受けます。

首都キーウ(キエフ)については3月31日、バイデン大統領が「プーチン大統領がキーウから全軍を撤退させている明確な証拠はない。(軍縮小は)私は懐疑的だ」と疑問を呈しました。さらに、アメリカの国防総省の高官は「北部のチェルニヒウ周辺でも戦闘は続いている」「キーウの北側でロシア軍の再配置が始まっている」として、“ロシア軍が本国に戻る兆候は全く見られない”とし危惧しています。

■ロシア内部の動きは?プーチン大統領は孤立?

山内キャスター:
ロシア内部の動きについて、ホワイトハウスの広報部長は「プーチン大統領は側近らから、戦況の悪さや経済制裁の影響について、誤った情報を伝えられている」と分析しています。つまり、側近らはプーチン大統領が怖くて真実を報告できていないのではないかとみています。

バイデン大統領も3月の会見の中で、「プーチン大統領は孤立しているように見える」としていて、「確実な証拠はない」と前置きした上で「何人かの側近をクビにしたり、軟禁したりしている兆候がある」とも話しました。

ホラン千秋キャスター:
プーチン大統領は孤立化しているのではないかという報道がありますが、実際のところ今どうなっているのでしょうか。

慶応義塾大学 総合政策学部 廣瀬陽子教授:
実際に孤立していると考えられます。特に、この孤立というのはコロナ時代からずっと続いていることで、まずはコロナ感染を恐れて自ら孤立していったということがあったわけです。それが今でもずっと続いている。孤立の中でさらに疑心暗鬼になって、どんどん殻にこもって、今はどこにいるか殆ど分からないというような状況になっているとも聞いています。
そのため、側近も近寄りがたくなってしまい、プーチン大統領が機嫌の悪くなるようなことを言うと何をされるか分からないということで、実情を伝えられない状況が続いています。それがさらに戦況も悪化しているので、またプーチンの怒りが増すというような、悪循環が起きているようです。

ホランキャスター:
停戦交渉などで出てきている情報と、現実が乖離している部分があると思いますが、専門家の皆さんは実際に何が起きているのかについて、どのように情報収集されているのでしょうか。

廣瀬教授:
今の状況は非常に分かりづらく、全てが情報戦の中で展開されているという部分があります。ですので、色んな情報を総合的に見ていくわけですが、今回の一連の流れでは欧米の情報の精度が非常に高いということがあります。まずそこをメインに見つつ、現地の情報を得られるものを少しずつ総合して、現状判断していくということをやっております。

井上貴博キャスター:
ロシアで強権政治を敷いてきたプーチン大統領の足元が、そんなに簡単に揺らぐのかなという見方もありますが。欧米、西側諸国としてはプーチン大統領が失脚するのをみているしかないということなのでしょうか。

廣瀬教授:
残念ながらそういうところがあります。今、プーチンに物を言える人というのが国内外にいないんですね。そうなると、やはりロシア国民がプーチン大統領を引きずり下ろしていく、ということしか考えられないわけなんですけれども、まだプーチン大統領の支持率は非常に高いという状況です。
しかも情報統制を非常に進めており、各地で起きている反対行動なども熾烈な手段を使って抑え込んでいるということがあります。なかなか国民がプーチン大統領を引きずり下ろす、というのもちょっと難しい展開になっています。

■中国とインドの動きは?ロシアとは“つかず離れず”

井上キャスター:
最後に中国とインドの動きをどうみているのか教えてください。

廣瀬教授:
中国とインドはまともにロシアにつかず離れずの状況で、“基本的に反対はしないけれども積極的に支持もしない”というところです。特に中国は財政などの援助でロシアに寄り添い、そしてインドも制裁をしないような形でロシアに寄り添うというようなところです。欧米との関係とバランスをとりつつ、経済制裁の火の粉が及んでこないレベルでロシアを支えていくとにみられます。

井上キャスター:
そのあたりの綱引きというのが、続いていくのかもしれません。
(「Nスタ」4月1日放送より)
(01日22:30)

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