イルカショーで子どもの笑顔 ウクライナ経済苦境の中

イルカショーで子どもの笑顔 ウクライナ経済苦境の中

イルカショーで子どもの笑顔 ウクライナ経済苦境の中

ロシアによる軍事侵攻は、ウクライナ経済にも大きな損害を与えています。観光地の「オデーサ」も深刻な影響を受けている場所の1つですが、有名なイルカの施設が再開しました。スタッフの思いを取材しました。

「黒海の真珠」と言われるウクライナの都市、オデーサ。豊かな文化と歴史で知られ、年間330万人が訪れる一大観光地でしたが。

記者
「こちらが有名なオペラハウスです。非常に美しい円形の建物なんですけれども、入り口から横の入り口まですべてサンドバッグが積まれています」

かつては観光客でいっぱいだったはずの通りもバリケードや障害物だらけ。街を発展させた功労者の像も、ご覧の通りです。そして。

記者
「映画史上不朽の名作とされるエイゼンシュテイン監督の戦艦ポチョムキンで有名になったこちらの階段、ガラガラです」

映画ファンには人気のスポットも人の姿はみられません。インフラが破壊された上、全土に戒厳令が敷かれ、経済も大きな打撃を受けているウクライナ。オデーサのような観光地ではそれが目に見える形で現れているのです。ただ、侵攻から1か月以上本格的な攻撃がないことから、少しずつ再開する施設も出てきています。

海岸沿いにあるイルカ館です。先週末、営業を再開しました。イルカショーのほか、子どもたちとイルカがふれ合う「イルカセラピー」なども行ってきたこの施設。ロシアの侵攻が始まった日から閉鎖され、1か月以上開業できませんでしたが、イルカ訓練士のアナスタシアさんらスタッフたちは毎日通ってイルカの世話を続け、攻撃を受けた場合の対策も施していました。

イルカ訓練士 アナスタシアさん
「プールに5、6本ロープを渡していました。もし天井が落ちてきたらイルカが息をしにくくなってしまいますから」

最悪の場合、イルカを別の場所に移すことも検討しました。突然、観客が来なくなってイルカたちも戸惑っていたといいます。

イルカ訓練士 アナスタシアさん
「たくさんの人が見に来て拍手をしてくれているというのはイルカたちもわかっています。それがなくなってしまったことでとても悲しそうでした」

それでも、嬉しいこともありました。侵攻が始まった後に赤ちゃんイルカが2頭生まれたのです。一頭は「ヴィクトリー」、もう一頭は「ウクライナ」と名付けられました。また、閉鎖で途絶えた収入を補おうと、外国の人たちが数か月先のチケットを購入し、経営を支えてくれたということです。

ガラガラの観客席。それでも、戦時下の子どもたちには良い息抜きになったようでした。

母親
「この子には全部そのまま伝えています。戦争が起きていて、困難な時であること。でもそのうち大丈夫になると。どう?楽しかった?」

「うん。とっても良かった」

イルカ訓練士 アナスタシアさん
「楽しむということはとても大事なんです。たとえつらい時期であってもです。こころの平静を保つため、生きている意味を忘れないためにも」

今だからこそ動物たちと触れ合い、少しでも穏やかな気持ちになってほしい。アナスタシアさんたちはそんな思いでいます。
(01日15:57)

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