「1日2兆円」ロシアが抱える莫大な戦費 数々の誤算にプーチン氏は【後藤部長のリアルポリティクス】 

「1日2兆円」ロシアが抱える莫大な戦費 数々の誤算にプーチン氏は【後藤部長のリアルポリティクス】 

「1日2兆円」ロシアが抱える莫大な戦費 数々の誤算にプーチン氏は【後藤部長のリアルポリティクス】 

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、両国の対面での停戦交渉がトルコ・イスタンブールで行われます。ここにきてロシアの軍事戦略が変わったという見方があります。その背景にあるものとは?後藤政治部長に解説してもらいました。(聞き手:岡村仁美キャスター)

■「1日2兆円」ロシアが抱える莫大な戦費

ーーロシアの現在の状況をどう見ていますか?

ロシアにとってはいろいろな意味で誤算があったと思います。おそらく1ヶ月という期間で戦争が続くと言うことは想定していなかったと感じています。

なぜかというと、いまの戦争は大変なお金がかかります。ロシア軍は、大量に数十万単位で兵を動かしているだけでなく、ミサイルや装甲車戦車などを駆使しています。そのため、燃料弾薬テクノロジ-にかかる金額は半端ではないものになっているはずです。

イギリスのシンクタンクによれば「1日2兆円」との試算です。あくまでイギリス側の見立てですから本当にそれだけかかっているかどうかわからないですが、ミサイルなど使用されているものを考えますと、それぐらいかかるのかなと思います。

■ロシアの経済事情にプーチン氏は

ここで注目したいのがロシアの経済事情です。ロシアは軍事的にはアメリカと並ぶスーパーパワーですが、経済的にはそうでもありません。GDPで見れば日本円でおよそ200兆円程度です。これは世界の順位で言えばベスト10に入っていなくて、韓国よりも少ないんですよね。日本と比べると3割から4割くらいです。そうした中で1日2兆円の戦費を投じるのは負担となります。2兆円はGPDで1%です。日本の防衛費を考えると、だいたい1年間で1%前後ですから、ロシアが経済的にもかなり厳しいのではないかなと推察できます。

ーー停戦の行方はどう見ますか?

プーチン大統領から見れば1日2兆円かかるようなことを続けていられないと言うのが本心だと思います。

ゼレンスキー大統領も、日本の国会での演説で見たように、現実的な状況や世論にどう訴えれば良いかなどに長けた政治家だと思いますので、現実を見据えて交渉するのではないかとおもいます。

■怒り心頭で?バイデン氏の発言に波紋

ーーウクライナを支援してきた国際社会がどう対応していくかも重要ですよね。

ここまでウクライナが善戦してきたのは、アメリカやイギリスなどの国際社会が支援してきたことが大きいです。特にアメリカの動きが注目されます。

そんな中でバイデン大統領が気になる発言をしています。先週のことですがウクライナの隣国ポーランドを訪問した時、バイデン大統領がプーチン大統領について

「権力の座にとどまり続けてはならない」

と発言しました。これを聞いた時私も“おや”と思いました。プーチン大統領に対して「おまえを引きずり下ろす」というような強いメッセージだと感じたんです。

この発言についてバイデン大統領は「プーチンを倒すため何かをするという基本方針はない」と釈明はしたのですが「道徳的な怒りを表現したもの」として発言の撤回はしていません。バイデン大統領の怒りがまさに“心頭に発する”と言う気持ちを伝えたんだと思います。

ただ、国際政治の場で特に戦争に関わるリーダーがあまり感情を露わにすることは得策ではない部分が多いと思います。まさにいま経済制裁を通じて徐々にロシアを追い詰めているという環境ですからロシアの軍事侵攻のどう挫くか“感情”よりも“冷徹さ”“緻密な計算”が求められると思います。
(29日16:30)

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