【専門家解説】なぜ消防隊員2人が犠牲に? 道頓堀ビル火災現場の特異性と建物火災の危険性とは

【専門家解説】なぜ消防隊員2人が犠牲に? 道頓堀ビル火災現場の特異性と建物火災の危険性とは

【専門家解説】なぜ消防隊員2人が犠牲に? 道頓堀ビル火災現場の特異性と建物火災の危険性とは

(黒木千晶キャスター)
 大阪・道頓堀のビルの消火活動中に消防隊員2人が死亡した火事。元火災調査官をされていた、元小田原市消防本部の永山政広さんに話を伺います。

 まず火災が起きた場所を改めて振り返っていきます。道頓堀川沿いのビルになります。約9時間後に鎮火しました。非常に入り組んでいて、消火が難しい場所ですよね?

(永山政広氏)
 そうですね。川に面しているところもだいぶ焼けてるようですが、そこの部分は、はしご車が入れないような道ですので、なかなか高い位置の消火活動がしにくい、それからそもそも道も狭いですから、多くの消防車が近くに寄ることができなくて、非常に消火活動は困難な場所だったと思います。

(黒木キャスター)
 ビルの構造を改めて見ていきます。火元と見られるビルは、地下1階から5階まであるビルです。いま今ピンクで示している部分が延焼している部分です。火元と見られるビル、そして隣のビルもあり、こちらの6階で、亡くなった消防隊員2人が見つかっています。
 このビルですが、57年前に建設されて、エレベーターそして非常階段が1本あるということです。そしてこの建物ですが、消防法違反があったということです。一昨年(2023年)6項目で法令違反があったと指摘されています。法令違反が今回の火事の原因につながった可能性というのはありますか?

(永山政広氏)
 そうですね。全てがつながったとは言い切れないと思うんですけれども、例えば防火対象物の点検実施ということで、これは防火対象物の機能を全体的にチェックするわけなんですが、どの程度の部分で異常があったのかと、そもそも異常がなくて点検をやってないだけということもありますし、もし異常でも、置いていけないところに可燃物をたくさんに置いたりとか、そういったことで延焼拡大や避難の支障になるということもあるんですけども、そういったことが指摘されていたのかどうかというのは、これだけだと読み取れないので、ただ単に点検がされていないだけだったら、直接関係があるとはちょっと言い切れない部分もあります。

(黒木キャスター)
 昨日も永山さんに解説していただきましたが、このような指摘をされていました。「外壁の部分が非常に気になる」とおっしゃっていました。昨日の映像をご覧いただきたいと思います。建物の外側が激しく燃えている様子が確認されます。このような外側の大きな火の上がり方というのは、どのような燃え方があったと想定されていますか?

(永山政広氏)
 これはですね、通常の建物だと、窓から炎が吹き出すというパターンが多いのですが、これはどちらかというと外壁に沿って外の部分が多く燃えている、激しく燃えていると見受けられますので、そこにどんな可燃物があったのかということを調べるのが非常に重要になってくると思います。

(黒木キャスター)
 現段階では推測にはなってしまうと思いますが、永山さんはどんな可能性を想定されていますか?

(永山政広氏)
 一つは、前面に看板があったようですが、看板の材質とか構造も気になりますし、それから燃える前の状況、それから燃えた後の残骸を見ますと、看板の奥にエアコンのようなものがあったように見受けられます。こういったものがあると、エアコン自体も発火源になりますし、あるいは別のルートで燃えたとしても、すごい火力があります。それからエアコンの配管は断熱材をつけているので、これに着火するとやはり延焼ルートになりうるということで、この辺を調べるということが、延焼経路を調べる重要なポイントかなと思います。

(黒木キャスター)
 今スタジオでも映していますけれども、外壁には室外機が並んでいるのが見えます。それから外壁沿いに配管が上まで伝っています。今の現場の映像でも、壁沿いが激しく燃えているのが確認されます。このような外側の部分の火の周りが非常に強かったというのが想定されるのでしょうか?

(永山政広氏)
 そうですね。ですから通常の建物の中だけで燃えているのとは違う状況だったので、消防隊としてはすごく消火活動がしづらかったと思います。

(黒木キャスター)
 今回、2人の方が亡くなりましたが、消防法違反の建物というよりは、外からの燃え方というものが非常に今回作用したんじゃないかと推測されるのでしょうか?

(永山政広氏)
 そうですね。この辺が、法令の違反がどの程度だったかということは、今後調べていく必要があると思いますけれども、ちょっと通常の火災とは燃え方が違うということが、今回の惨事の引き金になっている可能性は十分あると思います。

(黒木キャスター)
 実際に火災に巻き込まれた際にどんな状況になってしまうのか、ビル内部の映像を以前に取材したものがあります。

 永山さん、初期消火の可能性についてはいかがでしょうか?

(永山政広氏)
 そうですね。こういった雑居ビルになりますと、初期消火が非常に重要になってきます。ある程度の規模になってしまうと、人間の力では消せないので、一つの手段としてはスプリンクラー。それから消火器の使い方も訓練をして、何があっても簡単に落ち着いて行動ができるようにということを日頃から身につけることが重要だと思います。

(高岡達之 特別解説委員)
 永山さんも火災の最前線に立たれたことがあると思います。今回の殉職された原因、調査委員会も開かれるということですが、やはり第一線の消防士の心理について伺いたいんですが、どなたも厳しい訓練で自らの命を危険にさらすなということは叩き込まれているはずです。しかし、やはり駆けつけた最初の方々は、生存者いないだろうか、取り残された方がいないだろうかと、燃え盛る炎があっても、危険だと思っていても、その狭間で中に入る、そういうことがあり得ると思いますが、現場の消防士の永山さんご自分の身でも、やはり俊潤をされたことがあると思います。どういう思いで、今は行かねばならない、いやここは引かねばならないという決断をされるんですか?

(永山政広氏)
 消防士というものは、そういう現場に立ってしまうと、なんとかしようという気が100%になってしまいます。ですからそこを冷静にコントロールするのが隊長の役割だったりということで、バランスを取るというのが非常に重要なんですね。ただし、今回についてはどうだったか分からないんですが、想定外のことが起きると、要は安全に安全を重ねてということで活動はするんですが、100%の安全ばかりを考えてしまうと、十分な活動ができなくなってしまいます。ですからギリギリのところで皆さんがんばっていると。それが想定外のことが起きると、どうしても対処できなくなってしまうということで、それが今回は起こってしまったということが、非常に悲しいと私は思っています。

(黒木キャスター)
 本当に現場の消防隊の皆さんには頭が下がる思いですが、今回の痛ましい火事を受けて、各地でも建物の点検が行われています。きょうは奈良でも建物の点検が行われました。関西は雑居ビルが多いですが、一つ一つ点検するのはかなり難しいものがあるんでしょうか?

(永山政広氏)
 雑居ビルというのは、建物のオーナーの方と、テナントの方が別々の場合だったり、テナントが頻繁に変わったりということで、なかなか消防が立ち入り検査をしても防火指導がしづらいというところもあります。ですから消防に指摘されたから直すといういうことではなく、むしろご自分で日頃から防火ということに気を配っていただくのが一番だと思います。

(高岡 特別解説委員)
 その部分ですが、責任追及の段階になった場合に、第一義的には所有者の責任が重いと思いますが、お金を払って借りたテナントが勝手に中を改造したりした場合、過失の割合はどういうふうに分けられていくんでしょうか?

(永山政広氏)
 オーナーに無許可で違法な改造をするということになると、テナント側の責任は非常に重くなると思います。ただ、もしオーナーがそれを黙認していたりすると、かなりオーナーの側の責任もあります。ただ、やはりこれはお互いが安全ということに目を向けていただいて、必要なことを考えていただくことが重要だと思います。

(黒木キャスター)
 そんな中ですが、こういったデータがあります。重大な消防法違反がある建物、大阪市内で今月12日時点で18件に上っています。違反している建物がいまだに存在しているということですよね。

(永山政広氏)
 そうですね。やはり企業側からすれば、コストを下げるとか、人のやりくりを楽にするという事情もあると思うんですけども、それは安全に変えられませんので、消防法の基準を守るとか、建築基準法の基準を守るというのは最低限のことですので、さらにプラスアルファの安全意識を持っていただかないと、こういう事故というのは防げないと思います。

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