ウクライナ『人道回廊』なぜ実現しない?中国の“仲介”でロシアに変化は?専門家解説(2022年3月7日)
ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、中国の王毅外相が「必要な仲介をしたい」と発言しました。
また、トルコのチャブシュオール外相は会見で、10日にロシアのラブロフ外相、ウクライナのクレバ外相と3者会談を行うと明らかにしました。
会談の場所は、トルコ南部のアンタルヤだということです。
チャブシュオール外相は「この会談が解決に向けた礎になることを望む」と述べ、「平和と安定に向けた重要な一歩となるよう願う」と期待を込めた発言をしたということです。
◆ロシア情勢に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さん、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんに聞きます。
(Q.仲介の動きをどう評価しますか)
兵頭慎治さん:「王毅外相の発言は『国際社会と共に必要な時に必要な仲介を行う』というものです。これは、中国単独でただちに仲介役を買って出るとは読み取れません。トルコの仲介による3国の外相会談は、ロシアによる軍事侵攻が始まって初めて、第3国が仲介する形のハイレベルの会談になります。トルコはNATO(北大西洋条約機構)加盟国でありながら、ロシアとの関係も深く、地政学的にも十分仲介役になるので、期待を込めたいと思います。ただ、前日のトルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領による電話会談で、プーチン大統領は『ロシアの要求が満たされた場合のみ、軍事作戦を停止する』と強硬な姿勢を崩しておらず、情勢は厳しいと思います」
ロシアとウクライナは先週末、市民を退避させるルートの確保、いわゆる“人道回廊”で合意しましたが、二転三転しています。
2回目の停戦協議を受け、両国はロシア軍が侵攻を続ける南部ドネツク州の2つの都市、マリウポリとボルノバーハで一時休戦し、住民の退避を5日から行うとしていました。しかし、ウクライナ当局によりますと、5日にはロシア軍が一時停戦を守らず延期。6日もロシア軍の攻撃が続いたため再延期されました。
一方、ロシア側は「人道回廊は設置されたが、町の住民はウクライナ軍によって、人間の盾として踏みとどまっている」と主張しています。
7日午後4時からは、首都キエフなどで人道回廊を設置すると言っていますが、ロシア国防省が示したルートは、ロシア国内か、ベラルーシへのルートだけで、ウクライナ側は「許容できない」としています。
(Q.人道回廊が進まない理由はなんですか)
兵頭慎治さん:「停戦が十分に履行されなかった原因に、ウクライナ側もロシア側も正規軍だけが戦っている訳ではないことが挙げられます。ウクライナ側には、国民総動員による一般の市民や、外国からの義勇兵も参加しています。ロシア側も民兵や傭兵、民間軍事会社から派遣されたような人たちも前線に立っているのではないかとみられています。両者が停戦命令を下したとしても、指揮命令系統がどこまで共有されているか。そこに問題があるのではないかとみています」
黒井文太郎さん:「ロシアの言い分のなかにある『人間の盾として踏みとどまっている』がキーポイントだと思います。ロシア側は人道的な措置をしたいが、ウクライナ軍が妨害しているというストーリーを作って、相手が悪いということで通していこうとしています。ロシアは2015年、シリアの内戦に介入した時も同じ手法を取りました。ロシアを後ろ盾としたアサド政権は、街を包囲した後『何時間停戦します』と言って出てきたところを銃撃し、『中にいる武装勢力が仕掛けている。住民を人質に取っている』と主張していました。その後、ロシアとアサド政権側は、爆撃をして、最後は化学兵器まで使いました。何かをする時に相手のせいにするのは、ロシアは常套手段です。また、自分たちの勢力の方にだけ避難ルートを空け、逃げてきた人に相手の悪口やプーチン大統領に対する感謝を言わせて、ニュースにするというやり方もシリアではよくやっていました」
(Q.3回目の停戦協議では何が議論されそうですか)
兵頭慎治さん:「人道回廊のルートや、どう避難させるのかについて、双方が細かく合意できるかがポイントになるのではないかとみています」
(Q.ザポリージャ原発に続き、南ウクライナ原発にも進軍しているのではないかという情報もあります。ロシアの戦略をどうみますか)
黒井文太郎さん:「プーチン大統領は『ウクライナが核兵器をつくって、ロシアを攻撃するから、自衛のために攻撃する』と主張しています。ハリコフの核研究施設を制圧したもの、核兵器を阻止するためとしていますが、この後、ウクライナが核兵器を作っていた証拠を捏造して発表することが予想されます」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
コメントを書く