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【解説】中国の本音は?”ロシア批判”を避ける“あいまいな立場”
ロシアとウクライナの人道回廊は、今度こそ本当に実現するのか。状況が悪化し続ける中、事態の打開に向けたカギを握るといわれる中国の動きに注目します。
■ロシア国防省が人道回廊実施を発表
ロシアとウクライナの2回目の停戦協議で合意した人道回廊とは、南東部の「マリウポリ」と「ボルノバハ」に避難ルートの人道回廊を設置し、一時停戦している間に住民を避難させるというものです。
当初は現地時間の5日、一時停戦して、ザポリージャに向けて避難ルートが設置される予定でした。ところがウクライナ側は「ロシア側が停戦を守っていない」として、避難は行われませんでした。一方、ロシア側は「ウクライナの民族主義者が民間人の退避を妨げた」と主張しています。
さらに、6日もロシアとウクライナの双方ともに「停戦が守られていない」と主張し、人道回廊は中止となりました。
ただ、こうしたさなかにも人道回廊の設置場所のひとつ、マリウポリでは多くの人が戦闘に巻き込まれ、命を落としています。マリウポリの病院に、1歳半の男の子が両親に抱えられ運び込まれました。男の子には救命措置がとられましたが、息を引き取ったということです。
医師はライフラインが止まっていると訴えています。
医師
「電気、水道、暖房、何もない状況で働き続けています。薬も不足し始めています」
■プーチン大統領 “強気”崩さず
そして、ロシア国防省は日本時間7日午後4時に人道回廊を実施すると発表しました。
しかし、人道回廊が実際行われているのか、詳しいことは分かっていません。一刻も早い事態の収束が求められますが、プーチン大統領は、フランスのマクロン大統領との電話会談で、ウクライナとの3回目の停戦協議について「ロシア側の要求を無条件に満たせば、対話を続ける準備はできている」と発言しました。
ロシア側はウクライナの非武装化などを求めていますが、それらを何の条件もなくのめば対話をすると、強気な姿勢を崩していません。
■事態収束にカギを握る中国の立場は
現時点では糸口がないですが、この状況を誰がどうすれば変えられるのでしょうか。
7日、国会で岸田総理は「中国に対して責任ある行動を呼びかけていく」と述べた上で「中国とロシアの対外政策を含む動向について注視し、適切に対応していきたい」と話しています。
中国による仲裁は、当事者であるウクライナも期待を寄せています。では、中国はどのような姿勢を示しているか。
中国外務省はロシアが侵攻した2月24日の会見では、中国がロシアを非難しないことについて、西側メディアの記者が「都市を攻撃せず、軍事施設だけ攻撃するならそれは侵略ではないのか」と質問したところ、過去にアメリカが行ったアフガニスタンやイラクでの行動について、「あなたたち西側のメディアは当時『侵略』という言葉を使ったのか」と逆質問で質問の論点をずらしました。
さらに「では、ロシアが何をしたら中国は非難するのか」との質問に「あなたはなぜそんなにしつこく、中国にロシアを非難させようとするのか」といら立ちを隠しませんでした。つまり、この時点では、論点ずらしや逆質問、いわゆる逆ギレなど、あらゆる論法でロシアを非難するのを避け、寄り添う姿勢を示していたのはハッキリしています。
■中国 “ロシア寄り”の姿勢
その後、先月25日に国連安保理でロシア軍の即時撤退を求める決議案が採決されましたが、中国は棄権しました。さらに先月28日、SWIFTからロシアの特定の銀行を排除する措置にも反対の姿勢を示しました。2月下旬、中国政府は、ロシア産小麦の輸入を拡大すると発表しました。世界各国が制裁に踏み切る中、逆にロシアを支援するという動きすらみせてきました。そして今月2日、国連総会の緊急特別会合でロシアを非難する採択は棄権しました。
このようにロシア寄りの姿勢を示してきた中国ですが、今月に入り少し変化もみえ始めています。中国外務省の会見でも今月1日、「(ウクライナで)死傷者が出たことは遺憾だ。現在の情勢は我々が望まないものだ」と表明しました。
4日には、原子力発電所への攻撃を受けて「ウクライナの核施設の安全保護の情勢を深刻に懸念している」と国際世論に寄り添うような、常識的なメッセージを出しました。
■中国の本音は?
結局、中国はどのような立場をとりたいのか。
NNN・富田徹中国総局長によりますと「中国は悩ましい立場に立たされている。蜜月関係を築いてきたプーチン大統領が世界中から猛烈な批判を受ける中、付き合いを続けて自分たちに批判の矛先が向くのは困る。また、中国はウクライナとも貿易上深いつながりがあり、どちらにも加担しているようにみせたくないのが本音」だということです。
■中国のスタンスに変化はあるのか
こうした中、北京では7日、王毅外相の会見が行われています。
中国外相の会見は年に一度だけですが、冒頭からウクライナに関する質問が相次いでいます。今までのところ、王毅外相はロシア批判を避ける従来の姿勢を繰り返しています。
王毅外相は会見で「問題の解決には理性が必要であり、火に油を注ぐべきではない」と述べ、世界各国のロシア批判に距離を置く立場を説明しました。また、「対話仲介の後押しもしたい」との考えを示していますが、具体的な話には踏み込んでいません。
一方で、ウクライナに対しては赤十字を通じての人道支援を表明するなど、双方への配慮もアピールしています。
中国としては、この後も基本的には“あいまい路線”をとり続けるとみられます。
なぜ“あいまい路線”をとり続けるのかというと、それしか選択肢がないからといえます。中国にとっては、アメリカと対抗するパートナーのプーチン大統領を怒らせるわけにはいかず、また内外の反戦世論にも神経を尖らせています。
パラリンピックの開会式では、国際パラリンピック委員会の会長が大会期間中の休戦を破ったロシアを批判しましたが、中国国営メディアはその内容を中国語で伝えませんでした。これも今の中国の立ち位置を象徴する場面といえます。
平和の実現のために、今後どのような行動をとるのか。大国・中国の対応がますます重要になります。
(2022年3月7日放送『news every.』より)
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