取り残された牛…断水で搾乳できず「乳牛諦める」 孤立した牧場では牛舎倒壊で【グッド!モーニング】(2024年1月24日)

取り残された牛…断水で搾乳できず「乳牛諦める」 孤立した牧場では牛舎倒壊で【グッド!モーニング】(2024年1月24日)

取り残された牛…断水で搾乳できず「乳牛諦める」 孤立した牧場では牛舎倒壊で【グッド!モーニング】(2024年1月24日)

 能登半島地震では、住民が避難した集落に取り残された牛が、崩れた牛舎で死を待つしかない状況になっています。この窮状を訴える牧場主を取材しました。

■牛舎が傾き…黒毛和牛など外に放つ

 1日の地震で震度6強を観測した石川県珠洲市。唐笠町にある松田牧場も、大きな被害を受けました。

 牛舎は奥に行けば行くほど傾斜がついています。牛舎の中を見ると、牛が手前と奥にいて、餌(えさ)を食べています。傾いた牛舎の中には、まだ牛が残っている状況です。

 3年前に取材した時の映像です。松田牧場は2014年に設立。標高200メートルほどの山間にあり、およそ40ヘクタールの広大な敷地で乳牛およそ45頭と、肉牛およそ60頭を飼育しています。

 牛舎は全部で4棟ありますが、そのうちの1棟が地震の揺れで大きく傾いてしまいました。

松田牧場 松田徹郎さん(35)
「この牛舎は見て分かる通り、いつ崩れてもおかしくない状態」

 この牛舎にいたのは主に黒毛和牛で、30頭ほど。松田さんは、牛たちを外に放ったままにしています。

松田さん
「ただ、地震でおびえて3頭だけ(外に)出ない牛がいて。今、牛舎には3頭だけ残っている。気が動転して、パニックになってしまったのでは」

■「断水で搾乳できない」乳牛諦める決心も

 松田さんには、妻と3人の子どもがいますが、地震発生時は、珠洲市から100キロ以上離れた金沢市の自宅にいたため、無事でした。

 牧場の従業員も全員無事が確認されましたが、3人が被災し避難しています。

 牧場がある唐笠町は、住民がほとんど避難し、現在は、松田さんを含め牧場で牛の世話を続ける3人が残っているだけです。

松田さん
「ここでは僕だけが」
「(Q.1人で?)はい、生活しています」
「電気が来たので、エアコンが動くし、石油ストーブもあるし。お風呂も何とか湧き水を沸かして入ったり、ドラム缶風呂に入ったり…」

 震災後は牛舎の横にある事務所で寝泊まりしているという松田さん。停電は解消されましたが、何よりも大変なのは、水が使えないことだといいます。

松田さん
「今は断水状態で、水が全然来るめどが立たないので、搾乳ができない。パイプとか、牛乳をためるタンクを洗浄するのにきれいな水が必要。搾乳の前も搾乳後も(洗浄)しなければいけない」
「(Q.かなりの量が必要?)一日400リットルとか」

 3年前には、こう話していました。

松田さん
「(Q.すごい。もうこれでミルクとれている)(1頭あたり)30リットル平均ぐらい。ホルスタインは牛乳を生産する牛、黒毛和牛は牛肉を生産する牛だが、どちらも相場の上下があり、相場に経営を振り回されたくなくて、どちらも飼っている」

 しかし、乳牛は大量の水が必要なことに加え、病気を防ぐための毎日の搾乳など負担が大きく、松田さんは「乳牛を諦める」決心をしているといいます。

松田さん
「黒毛和牛を30頭減らすのか、牛乳の出荷めどが立たない搾乳牛(乳牛)を30頭減らすか、どちらかの選択をしなければいけない状態で。それだったら、搾乳牛(乳牛)を販売する(手放す)しかないのかな」

 ところが、乳牛を手放そうにも業者が来られない状況。それでも、こう話します。

松田さん
「まずは人が、従業員が無事で良かった。その次に牛も無事で、本当に良かったと思った」

■取り残された牛…住民避難も連れて行けず

 松田牧場の近くには、他にも大きな被害が出た牧場があるといいます。

 土砂崩れなどで道路がふさがれ、車は入ることができません。険しい道のりを歩くことおよそ30分。見えてきた建物の手前側が倒壊してしまっています。奥の建物も中が見え、骨組みが出てしまっています。

 被害が最も大きかった牛舎。30頭近くの牛が飼われていましたが、牛舎が倒壊して下敷きになっています。まだ3頭近くの牛が生き残っているということですが、うめくような鳴き声や、時折ガタッという物音が聞こえてきます。

 牧場主は地震後、数日間孤立していましたが、ヘリコプターで救助され、無事でした。やむを得ず牛を残したまま、現在は避難しています。

 牧場主の許可を得て近付くと、かろうじて倒壊していない牛舎に牛の親子がいました。

松田さん
「餌をあげることぐらいはできると思う。(でも)僕の牧場も牛舎が1つだめになり、牛があふれている状態。なかなか連れていくことも難しい」

 それでも、松田さんは何とかこの状況を乗り越えていきたいと話します。

松田さん
「食料とか水や、そういったものは十分にありがたいことに支援をいただけていて。他に必要なものといえば、やはり牛舎を建て直す資金とか、そういったものになる」

(「グッド!モーニング」2024年1月24日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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