のと鉄道も甚大被害…ベテラン整備士の覚悟「このまま終わらぬ」土砂崩れで線路寸断【羽鳥慎一モーニングショー】(2024年1月17日)
石川県で地震発生から2週間以上経ちましたが、16日に震度5弱の余震があり、インフラ復旧のめどが全く立っていません。地元の住民の足となっている一つ「のと鉄道」は、線路上の土砂崩れなどにより、全線で運休が続いていて、被災者の生活に大きな影響が出ています。
■線路寸断 土砂崩落…住民の足 復旧のメド立たず
巽通敏さん(52)
「何がどうなっとんの」
地震発生直後、自宅の倒壊で生き埋めになった男性が撮影した映像です。
柱は折れ、尖った先端がむき出しになり、鋭利な釘が飛びだしています。
巽さん
「大津波警報の防災放送を聞いた時点で、『ああ、これで溺死(できし)かな』と思った」
男性は、地震発生からおよそ15時間後に救出されました。
能登半島を襲った地震は今も、市民の足へも甚大な影響を及ぼしています。
レールは大きくゆがみ、トンネルの出入り口には大量の土砂が崩れ落ちています。
のと鉄道 常務取締役兼鉄道部長 小林栄一さん
「復旧見込みは、正直どれだけかかるか分かりませんね」
■鳴り響く緊急地震速報 続く余震…厳しい寒さ
16日午後6時42分ごろ、能登地方では再び緊急地震速報が鳴り響きました。能登町では室内の電灯が横に大きく揺れています。
輪島市の道路上では揺れに備え、警察が安全を呼び掛けます。
志賀町では最大震度5弱を観測。志賀原発を映した映像は発生の瞬間、激しく揺れています。
被災地で、15日から降り続いた雪。道路にも亀裂や地割れがあるはずですが、雪で全く見えない状況です。
雪で亀裂が覆われてしまった道路を救急車が慎重に進んでいきます。
住民
「道が分からないです。大丈夫かなって思ったら、雪がドサッとなったり、陥没していたり」
最低気温マイナス1.2℃を記録した珠洲市の給水所では、給水パイプが凍結。お湯をかけるなどして、水が出るように対応しました。
2週間以上が経っても繰り返し襲う地震。そして、寒さとの闘い。終わりの見えない不安が続く被災地では、長きにわたって復旧が見通せない、深刻な問題が起きていました。
■のと鉄道 土砂崩れで寸断…社屋は危険判定
能登半島を南北に走る鉄道。今週、南側の一部で運行が再開しましたが、被害がより深刻な北側のエリアでは、復旧とはほど遠い現実がありました。
トンネルの出入り口付近では、土砂が崩れ線路がふさがり、国交省の調査員が被害の状況を確認しています。
七尾駅から穴水駅のおよそ33キロをつなぐ第三セクター、のと鉄道。乗客の7割ほどが通勤・通学のために利用している地元の足です。
しかし、至る所で土砂崩れが起きていて倒木が線路に横たわり、行く手を遮っています。線路のレールも損傷し、いまだ全面運休が続いています。
穴水駅に隣接するのと鉄道の本社でも、ひび割れたガラスのドアが横たわり、外壁も一部がはがれ落ち、ガラスの破片なども散乱しています。
のと鉄道 常務取締役兼鉄道部長 小林栄一さん
「こんな感じなんで、どうしようもないですね…」
小林さん
「今の判定で行くと、赤紙ですわね。だから、撤去とかという形になっていくんでしょうね…」
本社の建物は応急危険度判定で「危険」とされ、使うことができません。
■“桜のトンネル”観光で人気も…地震で一変
地元の人だけでなく、観光客にも愛されてきたのと鉄道。列車からは七尾湾を一望でき、春には美しい“桜のトンネル”も見られます。
世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」の中を走るのと鉄道。車窓からは日本の原風景が広がります。
さらに、地元の名産「能登カキ」。肉厚で甘みが多いのが特徴です。
このカキを穴水駅で食べられるイベントが新年の名物。本来なら、観光客や地元の人の憩いの場になるはずでした。
小林さん
「くしくも、きのうがスタートだったんですよ。1月1日からいきなりこれ(地震)だったもので」
年間およそ6万人の観光客が訪れ、コロナ前の85%まで客足が回復したのと鉄道。3月16日には、北陸新幹線が金沢駅から福井県の敦賀駅まで伸びることで、さらなる観光客の増加に期待を寄せていたところに起きた地震でした。
小林さん
「(課題は)山積みですよ。復旧見込みは正直どれだけかかるか分かりませんね」
全社員49人の無事は確認できているといいますが、家が全壊・半壊し、避難所生活を余儀なくされている人も多く、今は自宅の被害が少なかった社員7人ほどが電話対応など、交代で事務所に寝泊まりしているといいます。
小林さん
「はい、のと鉄道です。ご苦労様。珠洲からここまで道路事情が非常に悪いので、始業時間までに来なくていい」
電話の最中にも余震があり、急いでヘルメットをかぶります。
■通学の足…車に乗れない住民は切実「早く動いて」
先を見通せない状況のなか、地元からは鉄道の再開を望む声が聞かれました。
のと鉄道利用者
「集まる憩いの場にもなるし。車に乗れない人がいて、鉄道を利用する人もたくさんいる。早く動いてほしい」
受験生の父親
「息子が受験で七尾の学校に受験したいということで、非常に迷っています。鉄道が通るか通らないかで」
高校受験を間近に控え、志望校への通学の足が失われる恐れがあります。
中学3年の長男
「(Q.本当は七尾の高校に…)行きたいところなんですけど、列車があんな感じで行けないかなって…」
受験生の母親
「家族会議して悩んで…」
「(Q.のと鉄道はどういう存在?)無くっちゃ困る存在」
先週には、復旧に向けて被害状況を把握するため、国交省から派遣された調査隊が線路や損傷した部分を確認しました。
調査隊員
「橋じゃなくて、周りが動いちゃった…」
小林さん
「(調査の)取りまとめたものが早ければ1週間、もしくは10日から2週間の間には必ず(調査報告を)まとめたものをお出しできるような話でしたね。止まっているわけにはいかないので…」
バスによる代替輸送の検討など、少しずつでもできることを進めたいといいます。しかし、問題もあるといいます。
小林さん
「はい、もしもし。はい、そうです。小林です。もしもし…。こんな状態なんです」
「NTT回線ここ1カ所だけしか使えないので…。復旧に向けて必要なのが通信関係ですね。これが非常に困っています。(携帯で)発信もできない、受けることもできない」
■「このまま終わらない」ベテラン整備士の覚悟
のと鉄道に勤めて17年、整備士の坂本新二さん(47)も、復旧が見通せないもどかしさを抱えています。
坂本さん
「レールがもう…切れてしまっている」
「(線路の)真ん中入っていただいたら分かるんですけど。2つに分かれていますけど、(手前が)真っすぐだったのがこれだけ…」
「(Q.曲がって…)曲がってこのように」
坂本さんは1日の地震発生時、車両庫で整備をしていました。部品などを仕舞っている倉庫は物が散乱し、手つかずの状態になっていました。
坂本さん
「(地震が起きてドアを)開けて、建物から離れて広い所に出ました。ああいうような形で周りを見たら、ああいうふうになっている状況…」
穴水町に住む坂本さん。自宅は大きな被害は免れましたが、会社からの道中は地面が隆起し、多くの家が倒壊しています。
地震の前は車通勤でしたが、道路の復旧が遅れているため、今は徒歩通勤です。
坂本さん
「悲しくなりますね、ここ歩いてくると。本当に毎日、本当になんか泣けてくる…」
「ただいま」
坂本さんは、2人の子どもを持つ4人家族です。
坂本さん
「これこれ、パパと撮ったの覚えてる?」
次男・大翔くん(8)
「覚えてる」
次男・大翔くんが保育園の遠足でのと鉄道に行った時に、お父さんと撮った写真です。
大翔くん
「(Q.のと鉄道好き?)好き」
坂本さん
「乗り物、好きやもんな」
大翔くん
「うん」
「(Q.パパの仕事姿見てどう思った?)すごいって思った」
大翔くんは、お父さんが働くのと鉄道にまた乗りたいと心待ちにしているといいます。
長男・伊織くん(15)
「こういう(父みたいな)人がいないと、成り立たない仕事なので。大事な仕事だと思います」
坂本さん
「このままでは終わらないので。やっぱり、何とかしていかなきゃいけない」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年1月17日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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