“本場トルティーヤ”で地域おこし 夫婦で移住…メキシコ人が過疎地域で奮闘【Jの追跡】【スーパーJチャンネル】(2023年12月21日)
兵庫県の中東部・丹波篠山市に、地区で初めての外国人移住者がいます。東京から丹波篠山市に移住したメキシコ出身のウルタード・アルベルトさん(42)の自宅の庭には、大きなトウモロコシが育っています。過疎化が深刻な地域で、一体なぜ、本場メキシコのトウモロコシを?その謎を追跡しました。
■“本場トルティーヤ”で地域おこし
追跡取材班が向かったのは、兵庫県の中東部・丹波篠山市。市街地から車でおよそ30分。山道を抜けると、のどかな集落がありました。ここに、地区で初めての外国人移住者がいます。
ベトさん
「空気もきれいだし、山もきれいだし気持ちいい」
メキシコ出身のアルベルトさん、通称ベトさんは“あるモノ”で地域おこしがしたいと、今年3月、東京から移住しました。その“あるモノ”とは?
ベトさん
「おいしいトウモロコシでトルティーヤを作って、私たちの村を特別なところにしたい」
本場・メキシコのトルティーヤを作り、絶品のタコスを日本の人たちに食べてほしいと、去年「地域おこし協力隊」に応募しました。丹波篠山市から、今年度からの活動が認められたのです。
「地域おこし協力隊」の活動期間は2年。毎月23万円の報償費と年間140万円の活動助成金も支払われます。
空き家だった築29年の一軒家を借りて暮らしています。
ベトさん
「どうぞどうぞ。妻です」
妻 りかこさん(36)
「よろしくお願いします」
りかこさんとの出会いは1年前。ベトさんがバイクで旅をしている途中に立ち寄った大阪のレストランで、知り合ったと言います。
当時、実家がある奈良県で暮らしていたりかこさんでしたが、ベトさんのトルティーヤに対する情熱に惚れ込み、今年結婚。夫婦で丹波篠山に移住しました。
■トルティーヤの作り方 様々な色も?
ベトさん
「トルティーヤ作りましょう」
家の車庫が、トルティーヤ作りの工房です。
トルティーヤとは、トウモロコシをすりつぶした粉を原料に作る、メキシコの伝統的な薄焼きパン。肉や野菜を挟み、サルサソースをかけて食べるメキシコの国民食、タコスに使われます。
トウモロコシは、もちろんメキシコの品種。ちなみに、メキシコのトウモロコシには様々な色があり、青やピンク、紫のトルティーヤもあります。
柔らかくなるまで炊いたトウモロコシを、細かく砕くと…。
りかこさん
「ほんとにパン生地みたいな」
その生地を伸ばせば本場メキシコのトルティーヤが完成です。
実は、妻のりかこさん…。
りかこさん
「もうだいぶ分かるかも。今8カ月です」
ベトさん
「『マイシッテ』と呼んでます」
りかこさん
「『トウモロコシ赤ちゃん』って意味」
作業が終わると昼食の時間。出来立てのトルティーヤでタコスを作ります。
ベトさん
「例えば海鮮丼とか牛丼とか、何でもある。同じように、トルティーヤの上に何を乗せてもタコスになる。タコスの種類はほんとに多い」
■「第二の故郷」に…近所付き合いに感激
食後にベトさんが案内してくれたのは、寝室がある2階。ここからの景色が、お気に入りだといいます。
ベトさん
「(3月に)来た時、桜が並んでいた。ちょうどお花見でした」
すると…。
りかこさん
「あ!こんにちはー」「今から行きます」
訪ねてきたのは、近所に住む農家のおばあちゃん。野菜をよくお裾分けしてくれます。
ベトさん
「この間、ありがとうございます、ホウレンソウとか。おいしかったね」
近所の人
「きのうサニーレタスもたくさん植えといたから」
こうした田舎暮らしならではの近所付き合いに、ベトさんは感激。すぐに地域に溶け込めました。
アルベルトさん
「きょうはかわいいね、この服」
土井裕子さん(76)
「おばあちゃんにしてはかわいいでしょ」
移住してわずか半年ですが、ベトさんにとってこの集落は、今や第二の故郷です。
土井さん
「高齢化してるから、若い人が住んでくれるのがうれしい」
ベトさん
「私たちも裕子ちゃんいると最高」
■新たな試み“公園でトルティーヤ販売”
地域とのつながりが強まるなか、実は今、ベトさんは新たな試みを行っています。
ベトさん
「ここでタコスパーティーできるから、一緒に作りながら食べられます」
丹波篠山渓谷の森公園 小倉義彦支配人
「トルティーヤを焼く時はベトさんがここにきてアピールする!」
ベトさん
「はい、教えます」
閉校になった小学校で、タコスの試食会を行ったところ大好評!今後、キャンプやバーベキューが楽しめる丹波篠山渓谷の森公園で、ベトさんのトルティーヤを販売する予定です。
小倉支配人
「僕らの夢でもあるし、ベトさんの夢でもある」
■メキシコ料理店から依頼 試食会の反応は?
ベトさんの評判を聞きつけた、京都市内にあるメキシコ料理店に向かいました。
なんと「本場メキシコのトルティーヤを使ってみたい」と依頼があったのです。
メキシカンダイナー「コロリド」 村上巧実店長
「メキシコの本場のトルティーヤも出せたら面白いかなと」
この日は、販売に向けた試食会が行われるため、豚肉とタマネギのタコスなど、全部で5種類を用意しました。
ベトさん
「(豚肉は)先にちょっと焼いてからその鍋に入れて」
そして、店の関係者による試食会がスタート。果たして、反応は?
女性
「トルティーヤの香りがすごい」
女性
「(トルティーヤの)色が違うのもおいしく感じたので、また食べたい」
大好評だったベトさんのトルティーヤ。12月から、メキシカンダイナー「コロリド」で使われることになりました。
■広めようと思ったきっかけは?
一体なぜ、ベトさんは本場のトルティーヤを日本で広めようとしているのでしょうか?きっかけは、バイクで日本中を旅していた時だといいます。
ベトさん
「スーパーで『トルティーヤある?』と聞いたら『トルティーヤはない』と言われて。日本には何でもあるけど、『“おいしいトルティーヤ”はない』と思った」
そこで、自分の手で本場のトルティーヤを作ろうと決意。そんな時に知ったのが、国が地方再生の一環として力を入れている「地域おこし協力隊」でした。
一方、丹波篠山市はトルティーヤで地域おこしをするというベトさんの計画に不安はなかったのでしょうか?
丹波篠山市地域おこし協力隊 コーディネーター 河口英樹さん
「日本人にトルティーヤが受け入れられるかが未知数だった。彼が来てパーティーで実際にトルティーヤを食べたことで『これは面白いな』と、広がっていくだろうという確信を持てた」
■台風で畑が…来春に再チャレンジ
ベトさんがまず取り組んだのが、メキシコの品種のトウモロコシです。
ベトさん
「トウモロコシの畑です。今、見た目がよくないけど」
夏までは順調に大きく成長していましたが、今年8月、関西地方に上陸した台風7号の影響で倒れてしまったのです。
ベトさん
「おはようございます」
こちらは、地元で農業を営む倉豊さん(59)。畑を貸してくれるなど、ベトさんにとって頼りになる存在です。
ベトさん
「いろいろ勉強になりました」
倉さん
「今年は勉強」「今のこんな状態を見たら、みんな絶対に作りたがらない。だから来年は成功させないと」
幸いにも、いくつかのトウモロコシは無事だったため、来年の春に植えて再チャレンジしたいといいます。
■地域イベントで大盛況!オリジナルタコスを販売
この日、ベトさんが工房で作っていたのは、丹波篠山産の野菜をたっぷり使った、スパイシーな味わいのサルサソース。2日後に周辺の6地区が合同で初開催するイベントで販売するタコスに、このソースを使います。
ベトさん
「サルサソースがないとメキシコのおいしい料理ができないから、サルサはめっちゃ大事」「(味見をして)いい感じ」
そして、いよいよイベント当日。地元の新鮮野菜や、野菜で作られたジャムなど、40もの店舗が参加しました。
ベトさんのタコス屋さんは、オープンと同時に、多くの人だかりができています。
メニューは、原木シイタケとチーズのタコス、そしてじゃがバター風のタコス。どちらもベトさん考案のオリジナルタコスです。
香ばしいタコスの香りに誘われて、続々とお客さんが集まります。
男性
「おいしい。ビールが欲しいね」
この日、県外から来たという女性たちはタコス初体験です。
県外から来た客
「うまっ!」「名前だけで具体的に知らなかった。おいしい」
その後も行列が続き、あっという間に完売してしまいました。
ベトさん
「このおいしいトルティーヤを食べてくれれば何が違うか分かるので一回試してください」
本場メキシコのトルティーヤで地域おこしを!ベトさんの挑戦は始まったばかりです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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