【報ステ解説】「兵士の犠牲を顧みてない」死傷兵31万人…戦争は続く?プーチン氏会見【報道ステーション】(2023年12月14日)

【報ステ解説】「兵士の犠牲を顧みてない」死傷兵31万人…戦争は続く?プーチン氏会見【報道ステーション】(2023年12月14日)

【報ステ解説】「兵士の犠牲を顧みてない」死傷兵31万人…戦争は続く?プーチン氏会見【報道ステーション】(2023年12月14日)

ロシアのプーチン大統領が14日、年末恒例の記者会見を行いました。ウクライナ侵攻をめぐって、ロシア兵の死傷者が31万人を超えるとの分析も出ていますが、強気の姿勢を崩しませんでした。背景に何があるのでしょうか。

◆強気の姿勢変わらず

招かれた海外メディアや国民からの質問に、3時間以上にわたって答える年末の恒例行事です。

ロシア国民からの質問:「大統領が外からの攻撃を乗り切る時、役立つものは何でしょうか?」

プーチン大統領:「最も重要なことを選択し、目標を達成するためには、あらゆることを行うよう努める必要があります」

質問は戦地からも…。

ドンバス地方の戦闘員:「勝利は目前です。戦闘終結後、兵士たちの身の振り方はどうお考えですか?」

プーチン大統領:「皆さまのような方が、若者の育成に必要不可欠なのは明らかです」

戦況が芳しくなかったからか、去年は行われなかったので、2年ぶりの開催です。

ロシア タス通信:「西側は、ウクライナへの協力疲れがみられるが、どう思う?」

プーチン大統領:「クリミアに黒海…オデッサに至ってはロシアの町。ソ連が崩壊した後も、ウクライナの南東は親ロシアでした。我々はいつでも関係修復に賛成だが、向こうが、ああだこうだ言うのです」

◆ロシア軍 東部で攻勢 強める

プーチン大統領からは、余裕と自信が垣間見れました。というのも、ウクライナ東部の前線では今、ロシア軍の攻勢が激しくなっているとされています。

シンクタンク『戦争研究所』(9日):「ロシア軍は、大統領選の前に主導権を握るため、最も厳しい天候の時期に、複数の戦線で攻撃作戦を展開したと思われる」

こうした展開を可能にしているのは、圧倒的な数のロシア兵です。現在、戦線には61万人の兵士がいるといいます。

ウクライナ兵(Forbes誌12日):「歩兵・装甲部隊が、次から次に波のように押し寄せてきた」

◆死傷者31万人超 批判の声も

ただ、その一方で…。

ウクライナ軍報道官:「ロシア兵は毎日、300~400人が命を落としている。動物のような扱いだが、死ぬことより、上官が怖いようだ」

アメリカの情報機関の試算では、侵攻開始後のロシア兵の死傷者は、31万5000人に上ります。こうした現状に、ロシア国内で批判の声が出ていないわけではありません。ただ、こうした声を完全に無視することはできないのか、このような場面がありました。

プーチン大統領:「(Q.第2の動員はありますか?)彼ら動員兵は最初、皮肉も言われたけど、素晴らしい仕事をしてくれています。約24万人の動員兵が今、戦闘地域で戦っています。13日までで48万6000人の志願兵がいると聞きました。今のところ、追加動員の必要はありません」

◆プーチン氏が見せた“余裕”

防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.2年ぶりのプーチン大統領の国民との直接対話イベントを、どうみましたか)

兵頭さん:「14日の会見でも、強気の姿勢を示しながら、時折、余裕の笑みを浮かべていました。この背景には2つあります。中東情勢の悪化以降、ウクライナ問題への関心が大幅に低下し、欧米諸国の軍事支援も先細りするのではないかという期待。そして、イスラエルを強く支持するアメリカに対する、国際社会の非難が高まっているので、これをうまく利用しながら、反米の国際世論を高めていこうと。戦況もこう着状態に陥っていると言いながらも、プーチン大統領は『ウクライナ側の反転攻勢は失敗に終わった』『ロシアの戦況は悪化していない』とアピールしています。この状態であれば、これからの本格的な選挙キャンペーンも乗り切れると判断したのだと思います」

◆死傷兵31万人戦況へ影響は

アメリカの戦争研究所によると、戦況の中心はドネツク州のアウディイフカだということです。ウクライナ側は「ロシア軍の攻撃を撃退した」としていますが、ロシア側は「作戦を継続し、アウディイフカ近郊で着実に攻勢を強めている」と分析しています。

一方で、アメリカの情報機関の報告書によると、ロシア軍は、侵攻開始時の兵力は約36万人でしたが、侵攻開始から約2年間で、死傷した兵士は31万5000人に上るとしています。さらに、戦車3500両のうち、2200両を失ったとしています。

(Q.これだけの損失があるなかで、まだ戦争を続けていけますか)

兵頭さん:「来年3月の大統領選挙までに、アウディイフカを一つの戦果としてあげたいので、犠牲を顧みない人海戦術を行っています。確かに開戦以降、犠牲は拡大していますが、契約兵を大幅に増やしていくという大統領令を最近出しました。最終的には、ロシア軍を150万人体制に移行していく予定です。さらに、選挙が終わったら、追加動員を行うのではないかという見方もあります。今後、兵力の増強を確実に行いながら、軍事侵攻をさらに続けていく構えです。一方、ウクライナ側は兵力不足が深刻で、最近は兵士の平均年齢が40代に突入しているということで、かなり厳しい状況に直面しています」

(Q.戦いが長期化していくなかで、今後戦況はどうなっていきそうですか)

兵頭さん:「お互い、大きな打開ができる材料は持ち合わせていません。ただ、長期戦になればなるほど、ロシア側に有利な展開になると、プーチン大統領は考えてると思います。その最大の要因が、アメリカの支援。アメリカ議会は今、空転しているので、新しい予算が決まっていません。さらに、来年11月のアメリカ大統領選挙で、トランプ政権が復活すれば、ウクライナへの軍事支援が低下していく可能性があります。プーチン大統領は、そこを期待しているような感じもします。今後の戦況は一にも二にも、アメリカの内政がどう変化し、ウクライナへの軍事支援がどうなっていくのか。そこが大きく影響すると思われます」

(Q.最終的にロシアが優勢に立つことはあり得ますか)

兵頭さん:「時間はロシアに味方すると考えている、プーチン大統領。再選すると任期が6年間延長され、少なくとも東部南部の完全制圧を目指す意向です。最終的にロシアが有利な戦いを進めていくことができるかどうか。今後も注目していく必要があります」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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