退職後に孤立しないために…悪戦苦闘…シニアの“地域デビュー”「地元との接点を」【Jの追跡】(2023年12月2日)
仕事を辞めて、社会との接点が減ると自然と会話が減り、人間関係も薄れがちに…重要となるのが「地域とのつながり」です。地域のコミュニティーには、退職後、悪戦苦闘しながらも“地域デビュー”する86歳男性の姿が…66歳の女性は、近所の幼稚園で働くことで“地域デビュー”につながりました。
■“地域デビュー”も…最初は会話にあまり入れず
厚生労働省の調査によると、65歳以上がいる世帯は全体の半数を占め、その中で単身者は3割を超えています。また、高齢の単身男性7人に1人は人と話す回数が「2週間に1回以下」という報告があります。
地域との接点があまりもてない現役時代。引退後、初めてコミュニティーに加わることを“地域デビュー”といいます。
北区立いきがい活動センター「きらりあ北」 立花由紀子さん:「定年退職後、地域にデビューすることは、なかなか難しくて。何かきっかけがないと、というところから男性限定の座談会を開催しています」
行われていたのは、男性限定の座談会。参加費は無料です。この日は、70代を中心とした6人が参加。その中には、この日“地域デビュー”した田中松雄さん(86)の姿がありました。
田中さん:「女性は、おしゃべりが上手だから。男性となると、こちらから話かけるけど、向こうが変な顔をするんですよ」
北区在住の田中さんは会社員として働いていた時は、地域の活動にあまり参加したことがなかったといいます。
今回、施設にあるチラシを見て初めて“地域デビュー”しました。
参加者:「先週、子どもたちが来たから、駅に近い所のおそば屋さん(へ行った)」「あそこ商店街ありますよね、並んでいる?」「はい」
参加者同士で話がはずみますが、なかなか会話に入れない田中さん。趣味のクラフト細工を披露しますが…。
職員:「これを始めるきっかけは?」
田中さん:「たまたまこういうボールを紙か何かで作った」
職員:「くっつけるのは、どのように?」
田中さん:「1本のひもを自分でグルグルと巻いて」
職員:「巻きつけているだけですか?」
田中さん:「そうです」
職員との会話のほうが多めです。
せっかくの“地域デビュー”を果たしても、続かない人は少なくないといいます。
あれから1カ月、男性限定の座談会に再び田中さんの姿がありました。
田中さん:「10分もあれば(完成)」
参加者:「えー10分!?」「接着剤は?」
田中さん:「木工用ボンドです」
参加者:「器用でないとダメだ」
場の雰囲気に慣れたのか、趣味のクラフト細工の話題で話の中心となった田中さん。地域デビューを果たしたようです。
総務省によると65歳以上の就業率は、年々増え続けています。理由として経済面の他に、65歳以下では見られなかった「仲間づくり」というデータもあります。
地元で働くことをきっかけに“地域デビュー”する人がいました。
■悪戦苦闘…仕事で“地域デビュー”目指す
去年退職した 南小夜子さん(66):「私、すごくおしゃべりなので」「(Q.この1年、会話する機会は?)減りましたね。お隣の人と接点がなかったので、話すことがない。あいさつぐらいしかできなかった」
「人と話すことが好き」という南小夜子さんは66歳。去年まで、事務の仕事で都心へ1時間ほどかけて通勤していました。
しかし、退職と同時に人との交流も減り、話す機会も無くなったといいます。
南さんは今、地元に新たな仕事を見つけ“地域デビュー”をしようと考えていました。
南さん:「定期買うときもうれしくて。うわ!定期だ!とか思って」
職場は、家から一駅。定期券を購入して久々に気持ちが高ぶっているようです。
南さん:「孫が3人いまして、そういう意味では全くの初心者とも違うかなと。すごく楽しみ」
南さんが見つけたのは、地元の保育園の清掃の仕事です。これまでのキャリアは生かせませんが…。
南さん:「(Q.どうでしたか?)楽しかった!」
笑顔の理由は、久しぶりの仕事だけでは、ありませんでした。
南さん:「本当に新たな発見でした。保育園さんが、すごく地域と関わろうとされているんですよね。やっぱり、色々な人と話ししたいし、すごく良かったと思います」
改めて知った「地域との関わりの重要性」。南さんの“地域デビュー”は始まったばかりです。
■“地域デビュー”して…地元イベント参加
一方、北区在住の清水宗仁さん(75)もまた、“地域デビュー”を果たしました。
清水さんは、埼玉県で5年前まで印刷工場を経営していました。当時は、職場と自宅を往復の毎日。しかし、仕事を辞めた途端…。
清水さん:「体重も10キロも落ちるぐらい、結局、家に閉じこもっている」
一家の大黒柱として働いていた時とは一転して、外に出歩くことも少なくなったといいます。
清水さん:「妻も子どもも、みんな働いていますから。家にいてもいたたまれない」
どことなく、自分の存在意義を見失っていました。そんな時に出会ったのが、地元の就労訓練です。
ここは、北区が運営する「プレ就労カフェ」。この日の訓練は、先輩として新人を指導するという設定で行われました。
講師:「(新人から)自信がないからキッチンをやらせてください、レジは分からないからと申し出が…。(新人は)どんな印象ですか?」
清水さん:「自己中心的でわがままに見受けられる。最初の私でした(笑)」
就労訓練を始めて7カ月の清水さん。かつての自分を「自己中心的」と振り返ります。
7カ月前の2月、コーヒーをトレーに乗せたまま提供してしまいます。講師の指導を受け、再度チャレンジするも…。
清水さん:「お待たせしました、コーヒーでございます」
講師:「コーヒーだけを提供して…」
清水さん:「あ、コーヒーだけ…」
講師:「ごゆっくりどうぞ」
清水さん:「ごゆっくりどうぞー」
初めての接客に悪戦苦闘。当時を振り返り、仕事以外の人とあまりかかわってこなかったことを後悔したといいます。
清水さん:「(現役時代は)男同士の社会ですから、セクハラも何もあまり気にしない形で、(職員に)後で謝るぐらい失礼なこと言った。指摘されましたね」
訓練に参加して7カ月…。
講師:「注文入ります。ブラ(ブラジリアンコーヒー)1つと、ココア1つです」
参加者:「じゃあ、ブラを入れて頂いて」
清水さん:「あれ?…お盆、お盆。あ、レシート…」
コーヒーのはねかえりを拭き取る清水さん。誰の指摘を受けることなく自ら行動。相手を思いやる心配りです。
行動の変化は“地域デビュー”につながっていました。
清水さん:「社会活動に参加していると、うれしいというかね。ありがとうと感謝されたり、またお願いしますって言われると。さらに向上したいと思うんですよね」
いまでは、“地域デビュー”をきっかけに地元のイベントやボランティアにも、積極的に関わるようになったといいます。
清水さん:「ボランティアに参加して、自分の孫みたいな子と、おじいちゃんと言われながら…これ、また楽しいんですね」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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