カギは「柿の木」クマ空き家“潜伏”に秘策あり 被害激減の理由を追跡(2023年11月22日)

カギは「柿の木」クマ空き家“潜伏”に秘策あり 被害激減の理由を追跡(2023年11月22日)

カギは「柿の木」クマ空き家“潜伏”に秘策あり 被害激減の理由を追跡(2023年11月22日)

 22日も秋田県で男性がクマに頭をかまれ、けがをしました。後を絶たないクマ被害を防ぐには一体どうしたら良いのでしょうか。鍵は庭先に植えられている「柿の木」にありました。地域が一体となって、被害を激減させた町の秘策とは。

■終わらぬ冬支度“仁王立ち”も

 柿の木の上には大きなクマ。我が物顔で、むしゃむしゃと実を頬張っています。現場は秋田県大館市の住宅の庭です。住民はいつ家に入ってくるか気が気ではなかったといいます。

 北海道興部町では道路にヒグマが現れました。改めて映像を見ると、最初クマは背筋をピンと伸ばして仁王立ち。何やら遠くを見つめています。すると、車に気が付いたのか、こちらをじろり。草むらへ逃げていきました。

 季節はまもなく冬ですが、クマはまだ冬支度を終えていないようです。群馬県は暖冬の今年は通常、クマが冬眠する来月以降も現れる可能性があると警戒しています。

 群馬県:「暖かいので冬眠する時期ではないと感じれば(冬でも)普通に活動するのかなと。(餌(えさ)を)探し続ける個体もいると思う」

■緊迫“過去最多”被害の秋田

 負傷者も出ています。22日午前6時ごろ、秋田市内の路上で80代の男性がクマに頭をかまれました。病院に運ばれましたが、意識はあるといいます。男性を襲った後、クマはその場から逃げていきました。

 秋田市の職員:「周辺に柿の木もあるので、『できる限り早く実を落として』と注意喚起をする」

 秋田では異例のペースでクマが出没。被害者は70人に上っています。

■なぜ?空き家に“潜伏”富山

 被害をひも解くことで分かる、新たな事実。取材班が向かったのは今年7件の人身被害が起きている富山県。1週間前に男性2人がクマに襲われた現場です。

 襲われた男性の母親:「(クマに)襲われるの初めてだから、あっという間だった。(茂みが)クマのすみかになっていたかもしれないと思うと恐ろしい」

 隣接する住居と目と鼻の先。クマが空き家の敷地内で生活していたことが判明したのです。人里に出没する都市型クマと空き家。切っても切れない関係がありました。

 秋田県大仙市では2日連続でクマが出没。住民は空き家にできたハチの巣を狙ったのではと話します。

 岩手県西和賀町では住居から離れた倉庫に気付いたらクマが居座っていました。

 住民:「1週間前、すごく夜中に猫の叫び声がするわけ。ものすごい音がして。その頃から(クマが)居座っていたのでは」

 空き家とクマ。富山市で男性2人が襲われた事件では、空き家周辺にいくつも痕跡が残されていました。現場を調査した専門家は…。

 クマの研究歴19年 富山県自然博物園ねいの里 赤座久明さん:「古いフンと新しいフンがあるのが、空き家の屋敷にあるのを見た。(クマの滞在は)2日くらい。もう少し前かもしれない」

 クマが少なくとも2日間、拠点にしていたと指摘。

■屋敷林 日中の“隠れ家”に好都合

 赤座さんが特に注目しているのが、空き家とそれを囲う屋敷林。風よけなどのために植えられた木々です。

 クマの研究歴19年 富山県自然博物園ねいの里 赤座久明さん:「日中の隠れ家になっている。あまり手入れが行き届いていない屋敷林は低木層がうっそうとしている。本来の昼間(山で)隠れ家にしている所とよく似た環境」

 空き家の11年前の画像。そして現在。比べてみると屋敷林が、よりうっそうとしていることが分かります。空き家、そして管理が滞った屋敷林。2つが合わさると、よりクマに適した環境ができ上がってしまうのです。

■庭先の柿の木“放置”が標的に

 屋敷林だけでなく、空き家とともに放置される柿もクマ出没の大きな原因です。冬眠前のこの時期。今年は山のどんぐりが不作で、人里の柿の木に集まるクマが連日、目撃されています。

 21日に富山県立山町で駆除されたクマ。住民が週に1回ほどしか確認しない納屋に居着いていたといいます。

 クマがいた納屋の持ち主:「家に柿の木がある。ハシゴでも届かない所に実がある。それを狙ったのでは」

 赤座さんは、空き家や住民の高齢化で柿が放置されるケースが多いと警鐘を鳴らします。

 クマの研究歴19年 富山県自然博物園ねいの里 赤座久明さん:「昭和の時代は社会全体がまだ貧しくて、子どものころはよく庭の柿を自分たちでもいで、おやつの代わりにして食べていたが、多い家には5本か、それ以上の柿の木が今でもなりっぱなしの状態で放置」

 クマの大量出没に悩んだ赤座さんはある行動に出ます。山間にあるにもかかわらず、この秋クマの出没はゼロ。劇的な変化を生んだ秘策がありました。

■今秋“出没ゼロ”被害激減の秘策

 富山市には、柿を剪定(せんてい)するなどし、丸ごと管理している地区があります。県内で19年クマを研究している赤座さんが手掛けました。

 クマの研究歴19年 富山県自然博物園ねいの里 赤座久明さん:「わずかな市役所の補助金を使って、今年も(柿の木を)3本切った。全部で120本を超える量を4年間で切った」

 その効果は…。

 庵谷地区に住む人:「柿がなくなって寂しいけどクマに襲われるより良いからね。(クマが)来ないってことで良かったかなと」

 クマの痕跡などの目撃情報を確認すると、冬眠準備期間である10月以降、この庵谷地区にクマは出没していません。

 今年、対策に乗り出した地域もあります。富山市のお隣、立山町。70歳以上の高齢者のみが住む世帯を対象に地域おこし協力隊員が無償で柿の木を伐採。

 立山町に住む人:「あまりにもクマの被害があるし、その時は気付かなかったが(家の近くに)クマのフンがあった」

 柿の木の伐採を呼び掛けていた赤座さん。今後はクマの滞在場所になり得る屋敷林を管理すべきと訴えます。

 クマの研究歴19年 富山県自然博物園ねいの里 赤座久明さん:「平野部には手入れのされていない、うっそうとした屋敷林に潜む場合が多い。クマがねぐらとするような薄暗い屋敷林を改善していく対策が必要」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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