目的は“資産凍結”回避?旧統一教会「最大100億円を国に供託」解散命令請求で会見(2023年11月7日)

目的は“資産凍結”回避?旧統一教会「最大100億円を国に供託」解散命令請求で会見(2023年11月7日)

目的は“資産凍結”回避?旧統一教会「最大100億円を国に供託」解散命令請求で会見(2023年11月7日)

旧統一教会の田中富広会長らが7日、解散命令が請求されてから初めて会見を行いました。

『世界平和統一家庭連合』田中会長:「私たちの不足さ故に、心を痛めておられる皆さま。また、つらい思いをしてこられた2世の皆さま。国民の皆さまに改めて心からおわび致します」

会見は“おわび”の言葉から始まりました。しかし…。

田中会長:「(Q.おわびの言葉は謝罪か)“謝罪”という言葉は、いわゆる被害者が特定されて初めて、謝罪という言葉が使われるのだと思うが、今、裁判が始まりまして、私たちの犯罪性等含めて法廷で議論されていくということが始まりましたので、明確にそこで“謝罪”という言葉には距離を置かなきゃいけない。信仰を失うことを通して、返金要求したら即被害という結論は、距離がありすぎる」

被害者に対する“謝罪”ではないと強調。そして…。

田中会長:「解散命令請求という文部科学省の措置に関しましては、到底受け入れることはできません」

先月、国に解散命令を請求された旧統一教会。その国に対し、新たな提案を持ち出しました。

田中会長:「金額は60億円から最高100億円を考えております」

元信者などへの補償のため、最大100億円を供託金として、国に預ける用意があると明らかにしたのです。解散命令が確定するまでの間に資産を売却し、韓国などに送金するのではないか。国会では、それを防ぐための法律が必要だとの声が上がっています。教団側は、海外への送金は行わないとしたうえで…。

田中会長:「(Q.教団の要求としては、財産保全の法整備はいらないから、自分たちの供託金をきちんと預かれる法律を作れと)被害者も明確じゃなく、被害状況も明確じゃないなかで、供託制度がない。今回、国会を騒がせることがもしあれば、早いうちに特例的な処置を施していただければ。100億円という数字を述べさせていただきました。作れという命令形ではありませんが、ご検討いただければ」

一方で、教団の総資産がいくらあるのかについては、言及を控えました。

会見をじっと見守っていた、中野容子さん(仮名)。母親(当時86)が1億8000万円を献金。教団側から“返金を求めない”という趣旨の念書にサインをさせられていました。さらに、証拠としてこんな動画まで…。

旧統一教会婦人部長:「2つの書類は、ご自身の認識に一致することで手続したのか?」
中野さんの母親:「はい」
旧統一教会婦人部長:「最大の課題は、これまで家庭連合に行った献金について、長女が返金手続きをすると言っていることですか?」
中野さんの母親:「はい」

その後、母親が脱会の意思を示したため、損害賠償を求めて教団を訴えた、中野さん。敗訴ののち、最高裁に上告しています。

中野さん(仮名):「母親の被害…父親のお金も献金してしまったが、それについて(教団から)一切真摯に対応してもらってないので。ああいう言葉を聞くたびに、やってないでしょって、自分の経験上は思いますね」

会見では、安倍元総理の事件以降、返金要請664件に対し、合わせて44億円を支払ったことも明らかに。一方で、霊感商法で信者が相次いで検挙され、当時の会長が辞任した2009年以降、改革を行い、献金トラブルは減っていると主張しました。

中野さん(仮名):「でも、コンプラ守られてないですよね。母が売却させられた土地、果樹園を3度にわたって売却している。2度目の売却は2009年、3度目は2010年ですから。決済の場で、現金で受け取らせて、そのまま教会に運び込むやり方で取り上げているので」

高額献金を要求したのは、組織ではなく、信者個人と強調する場面も見られました。

『世界平和統一家庭連合』勅使河原秀行改革推進本部長:「組織性・継続性・悪質性はいずれもない」

田中会長:「組織的に、そういう問題を引き起こす体制になっていると思わないです」

中野さん(仮名):「何につけても結局『信者個人』。組織は関係ない、そんなことは指導してないと。誰が見ても信憑性(しんぴょうせい)がないこと。まだこんなこと言ってんのか」

最大100億円の供託金をめぐり、法整備を求められた国。7日、野党のヒアリングに出席し、こう応えました。

文化庁山田泰造宗務課長:「向こうさんが100億円と言ったから、政府が動いて何か新しい制度をする。そういうことではないんじゃないかなと。私の頭はそういう出発点に立っていませんので。旧統一教会さんも、現行制度で何ができるか考えるのが、普通なのかなと」

長く被害者弁護に取り組んできた、阿部弁護士はこう話します。

『全国統一教会被害対策弁護団』阿部克臣弁護士:「(供託金は)ピントがずれている。方向がずれている。本当に被害者を思うのであれば、まず被害者にきちんと対応すべきだと」

◆“100億円の供託金”狙いは

今回の会見では“おわび”のほかに“言葉を選んだ”発言がありました。「被害者」ではなく「心を痛めている方」と言い換えたり、被害への対応については、あくまで「献金の返還要請への対応」であると繰り返しました。

なぜこのように言葉にこだわったのか。旧統一教会の問題について詳しい、菅野志桜里弁護士に聞きました。

菅野弁護士:「“違法なことはしていない”という意思表示のための言葉遊び。徹頭徹尾、法的責任を拒否するという強い姿勢を貫いている」

田中会長は、司法による決断が下されるまで、60億~最高100億円の供託金を準備し、元信者への補償の原資として国に預けるため、制度化してほしいとしています。

菅野弁護士:「ご都合主義的な『教団による教団のための』新しい法律を、今の国会に求めること自体、愕然(がくぜん)とする。あわよくば解散命令も回避し、財産と法人格を死守しようとしているのではないか」

100億円と聞くと結構な額に思えますが、政府関係者によると、教団の資産額は1000億円以上とみられていて、菅野弁護士は、この100億は教団にとって損切りに過ぎないとみています。

菅野弁護士:「教団側が最も恐れているのは、与野党で議論に上がっている、教団が保有している資産の保全、つまり凍結されること。100億円を国に渡すことで“凍結”を回避しようとしているのでは」

今回の会見は、解散命令請求の裁判にどう影響するのでしょうか。

菅野弁護士:「教団側の狙いは情状酌量。しかし、供託は非現実的な提案なので、100億円が被害者に届く可能性はゼロ。被害者救済にならないので、裁判にプラスになるとは思えない」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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