「奈良のシカ」保護施設で獣医師から”虐待”疑う通報、市が調査 施設側は虐待を否定「エサは十分」

「奈良のシカ」保護施設で獣医師から”虐待”疑う通報、市が調査 施設側は虐待を否定「エサは十分」

「奈良のシカ」保護施設で獣医師から”虐待”疑う通報、市が調査 施設側は虐待を否定「エサは十分」

 国の天然記念物「奈良のシカ」を保護する施設で、鹿への虐待を疑う通報があり、奈良市が立ち入り調査を行いました。施設を運営する団体は、虐待を否定しています。

 (神田貴央記者)
「奈良市保健所の職員が『奈良の鹿』を保護する施設の事務所の中に入っていきます」

 3日、保健所の職員らが立ち入り調査を行ったのは、「奈良の鹿愛護会」が運営するシカの保護施設「鹿苑(ろくえん)」です。

 施設に調査が入るきっかけとなったのが、獣医師の”虐待”通報。

 調査の対象は、農作物に被害を与えたり、奈良公園から離れた場所で見つかったりして保護されたシカで、「特別柵」と呼ばれる場所に約240頭が収容されています。

 今年9月、施設で働く獣医師が「十分なエサが与えられていないなどの虐待がある」として奈良市に通報しました。

 通報した獣医師によりますと、雄のシカは、健康な状態で保護されたにもかかわらず、約7割が飢餓状態になり、肋骨が浮き出ていると指摘しています。

 さらに、脱毛の症状もみられ、こうした状態は5年以上続いているというのです。

 (通報した獣医師・丸子理恵 さん)
「だいたい年間にすると、(施設に)いた頭数の3分の1が死んでいる。エサを増やしてほしいとか、質をよくしてほしいとか、予算を増やしてほしいと言ったが、聞き入れてもらえなかったので、奈良県と奈良市と文化庁に通報しました」

 一方、愛護会側は虐待を真っ向から否定しています。

 (奈良の鹿愛護会・山崎伸幸事務局長)
「人に迷惑をかける鹿はまた農地に戻るので、一生をここで過ごしてもらおうと。鹿にはエサを十分に与え、生活してもらっている」

 人に慣れない野生のシカはストレスでエサが食べられないことも多く、一定数が死んでしまうことは避けられないと説明しました。

 専門家は慎重な調査が必要とした上で、鹿を保護する体制にも課題があると指摘します。

 (野生動物の生態に詳しい 北海道大学・立沢史郎特任助教)
「『鹿苑』に収容される鹿の数がどんどん増えていて、栄養状態が元々収容される段階で良くない個体も多い。実際に鹿を増やし、『鹿苑』に収容される鹿が増えている状況を作り出しているのは、誰なのだろうかということを考えないといけない」

 調査では、飼育環境の確認や職員への聴き取りが行われたということです。

 (奈良市 保健所保健衛生課・稲葉好之課長)
「通報にあった状況は判断しにくい。今後調査を続け今月中に何らかの判断をする」

 市は調査結果をもとに、今後の対応について慎重に判断するとしています。

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