処理水の海洋放出「24日見込む」 終了までに「少なくとも30年」(2023年8月22日)

処理水の海洋放出「24日見込む」 終了までに「少なくとも30年」(2023年8月22日)

処理水の海洋放出「24日見込む」 終了までに「少なくとも30年」(2023年8月22日)

 福島第一原発の処理水の海への放出について、岸田総理大臣は22日、関係閣僚会議を開いて「24日を見込む」と表明しました。2日後に迫った放出に漁業関係者の思いは。

■処理水の海洋放出「24日見込む」

 福島第一原発で日々、たまり続けている処理水を海に放出する日が決まりました。

 岸田総理大臣:「気象・海象条件に支障がなければ8月24日を見込みます。たとえ今後、数十年の長期にわたろうともALPS処理水の処分が完了するまで、政府として責任を持って取り組んで参ります」

 処理水が海に放出される日は2日後の24日。漁業関係者は複雑な思いを口にします。

 マルキ遠藤(ホヤ養殖・加工) 遠藤仁志社長:「あまりにも急…。急なのかなと。もうちょっと余裕を持たせていただければ、その間にやることというか準備というのが、多分個々にあると思うんですよ」

 漁業関係者:「あまりにもひどすぎる。何も言えない。問答無用だもんね」

 放射性物質「トリチウム」が残った処理水は大量の海水を混ぜてトリチウムの濃度を国が定めた安全基準の40分の1未満にしたうえで、およそ1キロに渡る海底トンネルを通って沖合に放出されます。

 その安全性について、テレビ朝日社会部の原発担当記者は。

 テレビ朝日 社会部(原発担当) 吉野実:「汚染水をALPSに通すと多核種除去設備といいますけども、これに通すとトリチウム以外の放射性物質というのは国の基準値以下に抑えることができるんですけれども、どうしてもトリチウムだけはALPSでは取り除けないんですね。だからこれは100倍以上に海水で薄めて海に流していきましょうということになっているわけで、これについての科学的な安全性については原子力規制委員会であるとかIAEAがそれぞれ担保していると、そういう形になっています」

 福島県沖では9月1日から底びき網漁が解禁となるため、政府としてはその前に放出して海水のモニタリング調査を実施し、安全性に問題がないことをアピールしたい考えです。

■終了までに「少なくとも30年」

 その放出が終わるまでには少なくとも30年はかかるともいわれています。

 東京電力HD 小早川智明社長:「廃炉の作業とともにですが、非常に長期間にわたります。決してその間、風評を起こさないという強い覚悟、責任を果たしていくことが重要だと考えております。もし風評対策にもかかわらず損害が発生した場合には、速やかに適切に賠償を行っていくと」

 処理水の放出を巡っては、2015年に当時の安倍政権と東京電力は「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と福島県漁連に文書で約束しています。

 この約束について政府は。

 西村経済産業大臣:「廃炉の安全な完遂と、その時点での漁業の生業の継続が確認されて理解は完了し、約束は果たされたことになると。約束は果たされていないが、破られたとは考えていないとの声をいただきました」

 政府は関係者から一定の理解を得たとしています。

■漁業関係者「末端は理解してない」

 一方、福島県の漁師・石橋正裕さんは約束は破られたと感じています。

 福島・相馬双葉漁業 石橋正裕さん:「全漁連の会長が『理解は深まった』なんて言ってるんですけど、末端の漁業者なんていうのは全然理解していないし、若い漁業者の意見も取り上げてもらったうえで処理水放出に関してのやり取りをしてほしかったのはある。一般消費者の方が不安で福島の魚を食べてもらえない、買ってもらえないというのが一番不安だと思います」

 政府はその風評被害対策としておよそ300億円、漁業の継続支援などにおよそ500億円の基金を設けて漁業者の支援に充てるとしています。

 テレビ朝日 社会部(原発担当) 吉野実:「漁業者の方たちも言っているが、安全性については一定の理解は進んでいるが、安心についてはやっぱり…。安心の問題というのは個々人によって違うので、すべてに安心を与えるという回答はなかなか難しい。ですから国と東京電力は海上のモリタリングするポイントを100カ所ぐらい強化して魚もとって放射性物質を測ると、こういうことをずっと繰り返す。当面の間、繰り返すので安心を何とか担保していくと、こういうことしかできないかなと思う」

■中国外務省反発「極めて無責任」

 22日午後5時前、中国・北京の垂秀夫大使が中国外務省に呼ばれました。中国は処理水の海洋放出に反対しているため、それに関連する内容とみられます。

 中国外務省 汪文斌副報道局長:「日本が海洋放出を強引に押し通そうとする正当性はありません。この動きは極端に自己中心的であり、極めて無責任である。中国はこれについて深く関心を持ち、強く反対します」

 実際に放出が行われた場合、中国側のさらなる反発も予想されます。

 西村経済産業大臣は22日午後、福島県漁連を訪れて風評被害対策などについて説明しています。

 福島県漁連 野崎哲会長:「我々は反対であるという形で、今後とも臨みたいと思っております」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事