カビだらけ館長室、節電で真っ暗収蔵庫…クラファン反響の国立科学博物館 苦境の実態 #shorts
東京・上野の国立科学博物館が、光熱費の高騰などで資金難に陥っています。一般のファンにクラウドファンディングを呼び掛ける事態にまで追い込まれている苦しい現状を独自取材しました。
■収蔵場所がなく…“段ボール箱のまま”
一日に7000人近くの人が訪れる、東京・上野の国立科学博物館。夏休みシーズンの8月7日、館内には多くの子どもの姿が見られました。
高校1年生(16):「(Q.いかがですか。ご覧になって?)ものすごく大きくて、本当にいたんだなとびっくりしてます」
中学2年生(13):「歴史を感じられる場所で、とても良いと思います」
動物や植物などの標本、2万点以上が展示されている館内。実はこれらはほんの一部で、500万点以上が茨城県つくば市にある研究施設に保管されているのです。その研究施設の内部を取材しました。
国立科学博物館 植物研究部 細矢剛部長(59):「(Q.電気が全くついていない)節電は全館を挙げて心がけておりますので、日中は明かりをつけないようにしてます」
大量の標本が保管されている収蔵庫ですが、節電のため真っ暗です。スマホの明かりを使って中を歩いてみます。電気は一応、たくさん設置されていますが、本当に真っ暗です。
細矢部長:「普段は中の明かりをつけないようにしてます。明かりをつけますね」
すると、目の前には通路をふさぐほどの大量の段ボール箱が置かれています。
細矢部長:「(Q.段ボール箱がいっぱいある?)いわゆる昆布とかワカメとか海藻の類(標本)なんですけれども、頂いてきたのが、なかなか整理できない状態で」「(Q.昆布とワカメが放置?)一日も早くこういうのは整理して棚の中に入れたいんですけれど、未整理のために中に入れることができないという状態が困っている」
大量の標本をこれ以上、収蔵するスペースが館内にないため、段ボール箱のまま放置せざるを得ないといいます。
■室内温度も綱渡り状態 背景に電気代高騰
室内の温度を一定に保ち、何とか保存できていますが、実はそれも綱渡り状態です。
細矢部長:「(Q.室内温度は?)22℃に設定されています」「(Q.22℃で大丈夫?)一番怖いのは虫です。虫の卵が孵化(ふか)する温度が19℃(以上)。それ(19℃)以下にすると、そういうことが起きない」「(Q.19℃より3℃高いが?)なんとか耐えられるかというところ。安心感は減りますけどね。価値が理解されていないこともあると思うんですけれども、標本は、そこにその生物が確かにいたということを示す物的証拠になるんですね。必要があれば、元に戻って検証できるというのが標本の大きな特徴です。そういった情報を蓄積することによって、将来に役立つんですね」
研究環境が維持できるギリギリの状態まで行われている節電。その背景にあるのが、電気代の高騰です。
2年前まで、およそ2億円で推移していた年間の光熱費が、2023年度は倍の4億円近くにまで膨れ上がる見込みだといいます。
■館長室は“カビ” 職員部屋はエアコン故障
厳しい経営状況に立たされている国立科学博物館。上野の博物館内にある館長室でも影響が出ています。
国立科学博物館 篠田謙一館長(67):「この話は博物館の恥みたいな話なので、あんまり詳しくはしたくないんだけど。館長室の一番端を見ていただくと、青カビ、黒カビみたいなものが生えてる。これは私が館長になってから、どんどん増えています。ここはある意味、一般のお客さんが入ってくる場所じゃないから、直すのは最後と思っているうちに、こんなになってしまいました」
補修の予算を捻出できないため、カビだらけになってしまった館長室。異常事態は、隣の職員の部屋でも見られました。
篠田館長:「総務課の部屋で、本来ならばちゃんとしたエアコンがあるのですが、壊れていて今1台、補助についているようなやつをフル回転させて」「(Q.エアコンについてるテープは?)修理、おそらくちゃんと動いていないので、だましだまし使っているんですけれども。本来ここについているエアコンは、もう2つとも壊れているので、これで2022年の夏から、ずっと過ごしています」
天井に設置されている2台のエアコンが去年、故障。古びた家庭用のエアコンを持ち込み、テープで補修しながら、何とか使っているといいます。
■資金難も…館長「入館料は上げたくない」
この日、館長室には厳しい予算状況について、相談に来る研究者の姿がみられました。
国立科学博物館 副館長 真鍋真博士(63):「節電することは積極的にやっているんですね。だから、今の状態だと、これ以上節電するというのは難しいと思う」
篠田館長:「やるとこまで、やってしまっている」
真鍋博士:「入館料を頂かないという選択肢は、もうなくなってしまったぐらいの状態。これをできるだけ(来場者の)負担にならないように」
篠田館長:「子どもはやっぱり大人が連れてくるし、一番お金のかかる世代がここに来て子どもに見せているわけだから、そこはなるべく(来場者に)負担にならない形にしたいと思うよね」
年間収益のおよそ2割を占めるのが入館料ですが、それだけは上げたくないと篠田館長は話します。
現在、国立科学博物館は27億円をかけて新たな収蔵庫を建設中です。しかし、その費用も不足する事態になっています。
■苦肉のクラファン 9時間で目標1億円達成
危機的な状況に陥っている国立科学博物館。この状況について、博物館を所管する文化庁はどのように考えているのでしょうか。
文化庁の担当者:「国としても、これからエネルギーなどの価格の推移について注視しなければならないと考えているが、入場者やインバウンド客が戻ってきていて、それがどのぐらいの収入になるのか、年間を通して見ていく必要がある」
8月7日、博物館は起死回生を狙い、新たなチャレンジに踏み切りました。
篠田館長:「標本の収集と保管は、広く国民の皆さんのご理解とご協力を得て行っていくことが重要だと考えました。標本は未来の日本人全体のための宝だと考えているからです。そこで1億円のクラウドファンディングを実施すると考えたわけです」
収蔵庫建設の費用を捻出するため、クラウドファンディングをスタートさせたのです。目標は11月5日までに、1億円を集めることとしました。
篠田館長:「かなりチャレンジングな取り組みなんですね。失敗したとか全然(お金が)足りないのが一番恐ろしいわけです」
1億円集まるかどうか、不安を口にしていた篠田館長。ところが、初日で目標額をあっという間に突破しました。
スタートから丸一日が経ちますが、果たしていくら集まっているのでしょうか?
■丸一日でいくら集まった?
国立科学博物館を巡っては、2001年の独立行政法人化により国からの交付金が徐々に減ってきた背景があります。
そこで、8月7日午前8時から始まったクラウドファンディング、8月8日午前7時の時点で集まっている支援金は、およそ2億5500万円。目標額の1億円の2倍以上の寄付が集まっていますが、11月5日まで続ける予定です。
今回、クラウドファンディングに支援した人には、寄付額に応じて、ここだけでしか手に入らない貴重な返礼品が用意されています。
例えば5000円の寄付だと、研究者のスケッチをあしらったオリジナル「トートバック」が送られる予定です。
(「グッド!モーニング」2023年8月8日放送分より)/a>
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