過酷な“真夏のお遍路”に外国人殺到 最大の難所の先に…移住者が守る“オアシス”も【Jの追跡】(2023年8月6日)
四国に点在する88カ所の霊場を巡る「お遍路」。1年で最も過酷な時期に挑戦する外国人お遍路さんの旅に密着しました。さらに、“最大の難所”と呼ばれる遍路道…その先にある宿を復活させたのは大阪からの移住者。移住してまで宿を守る特別な思いとは?
■“歩き遍路”初日の外国人「体と心のトレーニング」
四国に点在する88カ所の霊場を巡るお遍路。全行程は、およそ1200キロです。
過酷な暑さが続く今の季節は、バスや車で移動するお遍路が主流です。
大阪から“車お遍路”:「無理です。歩き遍路さんは、すごすぎます」
大阪から“バイクお遍路”:「もうやっぱり汗だくで。バイクで回ってみても、これは歩きでは無理やなと」
そんなお遍路さんを尻目に、この日、歩き遍路を始めたばかりの外国人に出会いました。
チェコから ダニエルさん(22):「大変な経験も我慢すると、その経験を通じて強くなる。体と心のトレーニングですね」
名古屋の大学院で日本の文化を学んだチェコ出身のダニエルさん。
ダニエルさん:「(Q.それなんですか?)これは5円玉88枚。コンビニに行って5円もらうと使わないで(ためた)」
88カ所のお寺用に、お賽銭も準備万端です。およそ50日かけて、1200キロを歩く計画だといいます。
ダニエルさん:「遍路中ですから酒も肉もダメですね」
なんともストイック。ダニエルさんにとってお遍路は、まさに修業なのです。
■体と心を癒やす 地元住民の「お接待」
ところが歩き始めて3時間、想像を超える暑さに、思わず弱音もこぼします。
ダニエルさん:「大変、でも我慢しかない」
それでも、地元住民による、おもてなし「お接待」が次々と…。ダニエルさんの疲れた体と心を癒やします。
納経所:「タップウォーター(水道水)。クールダウン」
ダニエルさん:「ありがとうございます、感謝します」
納経所:「塩、お塩のアメ」
ダニエルさん:「塩、それもありがとうございます」
納経所:「塩分チャージ」
ダニエルさん:「この道はとても難しいけど、親切な人のおかげで(お遍路が)できると思います。本当にすばらしいと思います」
■「ヒーローになりたい」イタリアからのお遍路さん
この日、13番札所で出会ったのは、イタリアで俳優業をしているというテレンスさん(28)。厳しい暑さを承知のうえで挑戦したのは、“ある目標”があるからだといいます。
テレンスさん:「この旅で“ヒーロー”になりたいんだ。自分に誇りを持てるようになりたい」
ヒーローを目指すと語るテレンスさん、道中で出会った日本人のお遍路さんとも、憧れの“ヒーロー”の話題で意気投合したのだとか…。
テレンスさん:「知っているアニメのセリフをね。『オマエハ モウ シンデイル』」
香川から:「アニメティーチャー、僕が遍路ティーチャー」
ヒーローの旅には、仲間との出会いはつきものですよね。
■移住して遍路宿を復活 お遍路さんの“オアシス”に
過酷な歩きお遍路に挑戦する人たちにとって、“オアシス”とも言うべき「遍路宿」がありました。
福岡から(34):「ちょうど山を下りてきた時に、こういう宿があると、ありがたい寝れるーって。ゆっくりできる。そして、ふかふかの布団。この上ない幸せでございます」
遍路宿「すだち庵」があるのは、徳島県神山町。住民わずか18人、山に囲まれた小さな集落です。
遍路宿「お宿 すだち庵」店主 角田雄士さん(50):「また今度」
アメリカから:「とても快適で、おいしいご飯。静かで、とても良かったわ。ありがとう」
切り盛りするのが、大阪からこの土地に移住した角田さん。2年前、この集落の遍路宿が閉鎖すると知り、わざわざ移住してまで宿を復活させました。一体、なぜなのでしょうか?
角田さん:「特にこの12番札所の山は、(お遍路)の中で一番しんどい場所と言われている。おそらく、ここに宿がないと、お遍路できない人が増えてくるんじゃないか…」
すだち庵があるのは、お遍路の中でも“最大の難所”と呼ばれる山道の先。11番札所から12番札所まで、アップダウンの激しい3つの山を越え、およそ15キロの山道を歩かなければなりません。
■桝田アナが最大の難所に挑戦「心が折れそうに…」
遍路道「最大の難所」はどれほど過酷な道なのか。実際に、桝田沙也香アナウンサーが歩いてみました。
桝田アナ:「遍路ころがし…うねるように階段が続いていますね。だいぶ急斜面ですよ」
お遍路さんが転げ落ちそうなほど急で、険しい山道が延々と続くことが、“最大の難所”と呼ばれるゆえんです。
桝田アナ:「ちょっと心が折れそうになる。曲がっても曲がっても階段が続いているから…」
道中、2人のフランス人お遍路さんに出会いました。
エルワンさん(22):「困難にチャレンジするのが好きだから、お遍路に挑戦してみたかったんだ」
終わりの見えない険しい山道を、ひたすら進みます。歩き始めておよそ3時間、道中に座り込む人がいました。
大阪からの“歩き遍路”:「前、ここでリタイアしたんですわ」
桝田アナ:「きょう、リベンジ?」
大阪からの“歩き遍路”:「リベンジだったんですけど、(今回も)あかんかったですね」
1200年前、弘法大師・空海が歩いたとされる、まさに修行の道。急な上り坂の先、標高745メートルに突如、空海の立像が現れました。
桝田アナ:「すごい、空海だ。これは感動しますね」「この体力がそぎ落とされた時に見るからこそ、なんか感動しますね」
エルワンさん:「空海、大きい」
エティエンヌさん(21):「ここに来た価値がある」
朝8時から登り始め、およそ5時間が経過しました。しかし予期せぬ事態が起こります。
天気予報に反して、思いがけない土砂降り。瞬く間に、登山道が濁流になってしまいました。これ以上続けるのは危険と判断し、この日は一時中断しました。
■ついに“オアシス”到着 店主の思いとは?
翌日、同じ場所に戻ってリスタートします。
遍路ころがしの終盤は、最後にして最大の難所です。石と木の根が入り乱れる、道ともいえぬ急勾配を30分登り続けます。
桝田アナ:「キツイ…あと1キロ…」
最後の力を振り絞り、ようやく12番札所「焼山寺」に到着です。
そして、ここからさらに1時間、山道を下った先にあるのが「すだち庵」です。
桝田アナ:「看板がありましたよ」
エルワンさん:「スダチアン?レッツゴー!」
お遍路さんにとって、まさに“オアシス”。疲れた体を休め英気を養うために、この場所に宿が必要なのです。
角田さん:「この先の宿って何キロも先なんですよ。そうすると、どんどん日が暮れて獣も出るし、危ないです。そういう意味でも、ここに宿があるのは最適なんです」
かつては4軒の遍路宿があった、この集落ですが、現在営業しているのは「すだち庵」のみです。
「すだち庵」も2年前、前のオーナーが急逝し、いったんは閉鎖しましたが、以前のオーナーと親交のあった角田さんは、一念発起し、大阪からこの地に移住し、宿を再開させたのです。
角田さん:「僕もお遍路の時に、たくさんの人に助けられて。受けたご恩を誰かに返してあげたいな、そういう気持ちが一番強かった」
お遍路の過酷さと、素晴らしさを知るからこそ、この場所に宿を途絶えさせたくない、との思いがありました。
■150キロも離れた高知県まで店主が激励
角田さんは、時間の許す限り、お遍路さんの応援に足を運ぶのだとか。
フランスから チエリさん(59):「ファンタスティック!また会えるなんて思いもしなかった。君は魔法の男だ」
この日は、10日前に宿泊したお遍路さんの激励に、はるばる150キロも離れた高知県まで駆け付けました。
角田さん:「会った人にもう一度会うって結構元気もらえるんですよ。ちょっとでも元気になってもらえたらうれしいなーって」
過酷な夏の遍路道。旅路を見守る存在が、チカラになるのは間違いありません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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