「子どもの成長が“不安”」虐待防げ 児童相談所“最前線”に密着【news23】

「子どもの成長が“不安”」虐待防げ 児童相談所“最前線”に密着【news23】

「子どもの成長が“不安”」虐待防げ 児童相談所“最前線”に密着【news23】

子どもが理不尽に傷つけられる、痛ましい児童虐待。事件が起きるたび矢面に立たされるのが各地の児童相談所です。

一方、職員たちの仕事ぶりを目にする機会は極めて少なくなっています。
全国の虐待対応件数が20万件を超える中、東京・世田谷区の児童相談所を取材。2020年の開設以来、初めての密着取材で子どもを守る独自の取り組みに迫りました。

編集:小川友広
ディレクター:垣田友也

「激しい泣き声…」家庭訪問に同行 児童相談所“最前線”に密着

東京・世田谷区が運営している児童相談所です。業務に支障が出ないよう職員の顔を映さないことなどを条件に初めて密着取材を受けました。

“子どもが虐待されているかもしれない”こうした連絡は近所の人だけではなく、学校や保育園、病院や警察などからも入ってきます。

児童相談所 職員「すみません。“キンジュリ”お願いします」

所長や副所長、現場の責任者たちが集まってきました。虐待通告が入ると、最初に“キンジュリ”こと「緊急受理会議」が開かれます。

最も多い相談の1つが「子どもの泣き声が長時間聞こえる」というもの。“虐待のリスクがある状態”で、子どもの安全確認が必要と判断されました。

ある日の家庭訪問に同行させてもらいました。子どもが長時間激しく泣いているのは事実なのか。保護者に直接確認しなくてはなりません。働いている親も多いため訪問は夜になることもあります。

ーー今まで怖い思いをしたことは? 
児童相談所 職員
「今のところは大丈夫。うまく話せたときは良かったという気持ちで帰っています」
「私はやりたくて就いた仕事なので。お子さんの人生のターニングポイント。そこに携われるのは大変なこともあるけどやりがいもあるなと」

途中で自転車に乗った女性と合流しました。同じ世田谷区が運営している「子ども家庭支援センター」の職員です。

「子ども家庭支援センター」は子育て支援を担当する部署で児童相談所同様、虐待のリスクがある家庭にも対応しています。

両者の違いは児童相談所が緊急度の高い家庭を担当し、子どもを親から引き離す「一時保護」など強力な権限を持っているのに対し、子ども家庭支援センターは緊急度が比較的低い家庭を担当。

親の子育てをサポートすることで虐待を予防しています。

ーーなぜ児童相談所と子ども家庭支援センターが一緒に家庭訪問するんですか?
子ども家庭支援センター職員「(この家庭は)子ども家庭支援センターが主に対応するケース。なかなか会えない家庭なので児童相談所と一緒に対応出来たらと」

親が子ども家庭支援センターの訪問に応じない場合、児童相談所が同行すると連絡が繋がることがあるそうです。逆に児童相談所の名を聞くと接触を拒む家庭もあるため、子ども家庭支援センターの力も欠かせません。

さらに世田谷区では、区内のエリア毎に担当職員を決めてチームを作る独自の体制を取ることで連携や情報共有をしやすくしています。

同じチームの職員2人が“泣き声が長時間聞こえる”との通報があった家庭へ。離れた場所で待つこと20分。2人が戻ってきました。

ーー結果はどうでしたか?
子ども家庭支援センター職員「インターホンを押しましたが反応が無かったので、お手紙を残してきました」

親は不在でしたが、児童相談所と子ども家庭支援センターの連名で手紙を投函。
すると親が電話に出ました。

母親 「子どもを怒ってなんかいません!もう来ないで下さい!」
職員「そういうお気持ちになりますよね。連絡が入るとお話を聞かせて頂くことになっているんです。ご協力お願いします」

子ども家庭支援センターの職員は親と話すことができ、子どもの無事も確認しました。しかし家庭の詳しい状況はわからないまま。簡単に一件落着とはいきません。

「何もなければいいんですけど、心配な気持ちは募ります。今後も継続しないといけない」

世田谷区の人口は94万人で都内最多。

虐待相談件数は多いと1か月200件を超え、年々増加傾向です。
区は虐待が起きないようにする予防のための取り組みに力を入れています。

感情をぶつけられる時も…相談“月に200件超”

世田谷区が毎月行っている児童相談所と子ども家庭支援センターの合同会議。
この日、相談していたのはある気がかりな家庭について…。

以前、この家庭では母親が子どもを身体的に虐待し、児童相談所が子どもを一時保護。

その後の支援で子どもは自宅に戻ることができ、また母親と暮らし始めました。
なぜ再びこの家庭が心配になったかというと、母親が妊娠したため。

前回虐待が起きた原因は、育児ストレスだったからです。

児童相談所 職員
「過去の経過から(虐待が)起きないのが一番だけど、起きるのは心配しないといけないから、起きた時に祖父母が(子どもを)みるのか、公的サービスを使うのか聞ければ」

大切なのは負担が増していく母親を支えること。虐待を予防するためにも、サポートが専門の子ども家庭支援センターを中心にしてこの家庭を支援することになりました。

子ども家庭支援センター 職員
「こんにちは、今お時間大丈夫ですか、赤ちゃんの様子も大丈夫ですか?」
「今度お家を訪問させてもらえたらなと思っているんですが」

その後、母親は無事に出産。職員は電動自転車に乗って家庭訪問に向かいます。

ーーお母さんのどんな点に注目?
子ども家庭支援センター 職員
「どういう負担を感じて(子育てを)やられているかとか、すごく大変な思いをしていないか。
生活状況が変わったのでその辺を注目して様子を見ていきたい」

訪問を受けた母親は…。

職員「こんにちは。お母さん、睡眠時間は足りてますか?ご飯は作れていますか?」
母親「ありがとうございます。今は大丈夫です、少し余裕が出てきました」

母親は落ち着いていて、赤ちゃんと子どもも元気な様子。母親は行政の子育て支援サービスについて「急ぎでは必要ない」と話しましたが、こんな言葉も口にしたそうです。

母親「今は落ち着いているんですけど…子どもが成長していったらどんな気持ちになるか、自分でもわかりません…不安です」

職員「またお話を聞きに来ますね。困ったらいつでも相談して下さい」

子ども家庭支援センター 職員
「今の段階では落ち着いているので、現状においては良かった。ただこれからどうなっていくかは注意深く見守らないといけない」

虐待相談の対応件数は、全国で年間20万7660件(2021年度)。

虐待が深刻化する前に子どもを救う。虐待そのものを防ぐ。
幼い命がこぼれ落ちないよう、現場では奮闘が続いています。

虐待から子どもを守る“社会の目”

山本 恵里伽キャスター:
児童相談所という名前はよく見聞きしますけども、実際こうして見てみると、改めてとても大変な仕事だなと感じます。

喜入 友浩キャスター:
もう一つ現場の声を聞いてみました。児童相談所で18年間所長を務めた藤林さんによりますと・・・

西日本こども研修センター あかし 藤林武史 センター長
「子どもの命は児童相談所だけで守るわけではない」
「関係機関で情報共有し、ワンチームで子どもを守る意識を持つ」

ことが大切だと話されています。

喜入キャスター:
学校や病院などから、子どもが虐待を受けているのではないかという相談などを受け世田谷区の場合ですと、緊急度が高い場合は児童相談所が比較的、緊急度が低い場合は子ども家庭支援センターが対応に当たるということになっています。

ではどのようなチームで連携していくのか。

【連携】子どもを守る 地域ネットワーク
学校・保育園・幼稚園・病院・警察 など
→児童相談所・子ども家庭支援センター 

山本キャスター:
本当に大切なネットワークです。VTRでも職員の皆さん本当に奮闘されていましたが、児童相談所“頼み”にはなってはいけないのかなと感じます。

喜入キャスター:
コロナ禍もあって、周りにどんな子どもがいてどんな状況か、分かりにくくなっていますよね。ですから比較的子どもに近い学校・保育園・幼稚園とこの関係機関が協力して動き出すということがいかに大事かということですよね。

山本キャスター:
やはりこの虐待のニュースを聞くと、その親であったり、児童相談所の方に目が行きがちで、批判の対象にもなると思う。そこに目を向けるのではなく、そのご家庭にはどんな支援が必要だったのか、どんなサポートがあれば虐待に至らなかったのかを考える必要がある。それは私たち伝える側も、社会全体としても、その予防策にもっと目を向けるべきだなと感じました。

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