【報ステ】飲食店困惑…海鮮市場から消えた“日本の水産物”中国・規制強化の狙いは?(2023年7月26日)

【報ステ】飲食店困惑…海鮮市場から消えた“日本の水産物”中国・規制強化の狙いは?(2023年7月26日)

【報ステ】飲食店困惑…海鮮市場から消えた“日本の水産物”中国・規制強化の狙いは?(2023年7月26日)

今、夏の旬を迎えているホタテ貝。港では連日、水揚げが続いています。日本のホタテは、海外でも非常に人気が高く、たくさん輸出されていますが、中国では規制強化が始まり、生産者に不安が広がっています。

ホタテ猟師:「一番の稼ぎ時に、なんでこういう規制になるのかな」

福島第一原発でたまり続ける“処理水”。放射性物質のトリチウムなどを含みますが、政府は基準値以下に薄めて、海に放出する方針です。しかし、中国は、この方針に反発。「日本が輸出する全ての水産物を検査する」という規制に乗り出しました。

去年、全ての食品のなかで輸出額がトップだった、ホタテ。その5割を、中国が占めています。

ホタテ漁師:「値段で左右される仕事なので、困っています。7~9月で値上がりしてくるので、上がる時期に(価格が)10円でも20円でも下がったら、月々の給料がかなり変わってくると思います」

北京最大の海鮮市場。立ち並ぶ店のなかには「日本料理用食材の専門店」と書かれたところも。しかし、日本の水産物の姿は消えてしまったといいます。

卸売業者:「(Q.日本の海産物は今は)今、放射線の件があるのでありません。(Q.以前は日本産はあったのですか)以前はもちろんありました。大勢の人が日本産が好きでした。でも今は、なくなったので仕方ありません」

仕入れがなければ、飲食店も当然、影響を受けます。北京にある飲食店に届いたのは、最後のホタテでした。

飲食店オーナー:「もう冷凍も、これで終わりです。これが終わったら、日本産はしばらく入荷しませんから、この店からも消えますね、ホタテは。本音としては、やっぱり日本産が欲しいです。日本産は使いやすいんです。ちょっとした味付けでも、分量がちょっと違っても、味が狂わない」

日本政府はこの措置に対し「日本産食品の安全性は、科学的に証明されている」と抗議しています。街の人の受け止めは…。

北京の人:「(Q.日本から輸入された海産物は食べたいか)そんなに食べたいと思わない。日本から輸入された海産物には、気をつける必要があると思っている」「表示がしっかりしていれば、科学を信じる。(Q.今後も日本の海産物を食べたいか)(検査が)通れば食べようと思う」

冷蔵だと10日、冷凍だと1カ月程度。ホタテ加工業者は、税関手続きが通常より大幅に長くなることを心配しています。

背戸水産・背戸卓也社長:「輸出されないということはないが、1個1個検査されるので、中国に入るのに時間がかかるので、結局は日本にモノが停滞してしまう。そういう部分での値崩れが一番、皆さん懸念していると思う」

北海道の別の業者には、すでに冷蔵の商品の注文が「ゼロ」になった所も…。

背戸水産・背戸卓也社長:「水産物は、輸出が大きく影響してくる。中国が一番輸出している量が多いので、その辺が難しいところ。みんな様子をうかがっている。大きく変に動けない」

■規制いつまで…中国の狙いは

中国総局・冨坂範明総局長に聞きます。

(Q.日本政府の処理水を海洋放出する方針に対して、中国政府は前のめりに規制強化をしています。これはどういう意図なのでしょうか)

冨坂総局長:「放出前の全数検査という厳しい措置は、日本に対する強いけん制の意味があると思います。中国では春先ごろから、CCTVといった官製メディアが、福島第一原発の処理水問題をキャンペーン的に報道しています。直接的な批判というよりは、福島で反対している人の声や、ペルーやチリといった、地球の反対側で放出に反対する人の声を多く紹介する内容となっています。連日、こうした報道に接している中国の人のなかには『日本の食品は本当に大丈夫なのか』と懸念を持っている人が、少しずつ増えている印象もあります。来月とも言われる処理水放出を前に、中国が規制措置を緩めることは、ほとんどないと言っていいと思います。現時点では、福島を含む10都県からの食品輸入禁止、それ以外は検査をすれば輸入できますが、処理水が放出された場合は、輸入を禁止する区域が広がっていく懸念があります」

処理水について、IAEAは今月初め、「放出計画は安全基準に合致している」という見解を示しました。韓国も、その見解を尊重して「国内に及ぼす影響はほとんどない」と発表しています。輸入規制についても、EUが今月半ばに、福島の原発事故以来続けてきた規制を完全に撤廃すると発表しています。

(Q.こうしたなかで、輸入規制にこだわる中国の姿勢には、政治的な理由があると考えられますか)

冨坂総局長:「大きく2つの理由があると思います。1つは外交的な側面。例えば、中国は現在、中国人の日本渡航でビザ免除を求めています。こういった外交交渉で使えるカードの一つとして、処理水問題を使いたいという思惑があると思います。もう1つは国内的な要因です。現在、中国の経済成長は停滞していて、直近の第2四半期のGDPはプラス6.3%と、一見高い数字ですが『期待されていたほどのリバウンドではなかった』という声が強いです。個別に見ても、不動産の売れ行きは悪く、16~24歳の若い世代の失業率は20%を超えています。不満を和らげるたい状況で『国民の安全を守る』というスローガンは、聞こえがいいです。言い換えれば、処理水問題を使って、中国国内の問題から焦点をそらしている側面もあると思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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