コロナ重症病棟の“引っ越し”も 数字に現れない医療ひっ迫の実態
新型コロナウイルスに感染した場合に、重症化リスクのある高齢者でもすぐには病院に収容できない状況が続く東京。入院できている感染者でも、自力で呼吸が出来ない「重症」や酸素投与が必要な「中等症」が増えていて、追い込まれつつある医療現場を取材しました。
「今、6床の重症患者さんのベッドがありますが、そこに6人、満床の状態で入院しています」
東京医科歯科大学病院のコロナ重症病棟。自力で呼吸できないほど肺炎が悪化し、人工呼吸器などが必要となる重症者の増加を受け、先週、病棟の“引っ越し”を余儀なくされました。
人工呼吸器が装着され意識のない患者を1人ずつ慎重に新たな重症病棟へと運びます。ベッドに移すときは、チューブなどが外れないよう8人がかりです。
この病院では先週、一般病棟の一部を新たにコロナ重症患者専用に改装し、重症病床を6床から12床に倍増させました。現時点で10人が入院しているということです。
東京医科歯科大学病院 植木穣 病院長補佐
「もう第5波のころの比率を大きく超えて、重症化、高齢者が多い状況。そういった方が、今次々と都内の大学病院に重症化して運ばれている」
こちらは自力で呼吸が出来るものの、酸素投与が必要な「中等症II」の患者。
医療スタッフ「今度はブドウゼリーですね。これをちょっと食べてみますよ」
患者「もっと、もっとたくさん」
医療スタッフ「飲めた?」
高齢患者の場合、正常に飲み込めるかどうかのチェックなど、治療行為以外にもさまざまな対応が欠かせません。
東京医科歯科大学病院 リハビリテーション科 酒井朋子医師
「食べていただくにも、それでまた誤嚥しちゃうと悪くなる。嚥下評価がかなり必要な世代の人たちが多く入院している」
これは70代の患者への治療薬を検討している様子。
薬剤師
「併用薬で併用禁忌薬がたくさんあるので」
今月新たに承認されたコロナの飲み薬「パキロビッド」は、高血圧の薬などとの併用に注意が必要です。
医師
「一応飲んでいる薬はこういうかたちで。この中だと大丈夫そうですね」
高齢患者は回復にも時間がかかります。
東京医科歯科大学病院 植木穣病院長補佐
「長期滞在になったり、重症化したりする高齢者の方々を多く含み始めているという状況ですので、(感染者の)数そのものが若干減っても、医療的に負荷のかかる方が多くなっている現状がありますので、まだまだ医療としてはピークアウトしたと言える状況ではない」
実際、東京では、感染者のなかで65歳以上の高齢者が占める割合が増え続け、それに伴うように入院患者のうち酸素投与が必要な人の割合も増えていて、「中等症II」と「重症」の増加が深刻です。
東京都 小池百合子知事
「数字の方は陽性者の数から少し遅れた形で高齢者の重症者が増えている。今回これまでの病床数に加えてプラスアルファを足し込んでいく。重症化に対しての必要な対策という風に考えています」
重症化リスクのある高齢者なども病院で収容できない状況を受け、東京都はきょうから新たに高齢者施設でクラスターなどが発生した場合の治療拠点を荒川区に開設。また、立川市にもプレハブを利用した高齢者向けの医療施設を100床用意して高齢の感染者らへの対応を強化するということです。
(21日17:23)
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