【速報】カラオケパブ女性オーナー殺害事件 二審も懲役２０年 大阪高裁が被告の控訴退け一審判決支持
大阪・天満のカラオケパブで２５歳の女性オーナーを殺害した罪で、一審で懲役２０年の判決を言い渡された男の控訴審で、１０日、大阪高裁は１審の判決を支持し、男の控訴を退けました。
男は大阪地裁で行われた一審では、「死刑にしてください」などと訴えていましたが、控訴審で弁護側は「量刑が重すぎる」などと主張していました。
事件は、２０２１年６月、大阪市北区のビルにあるカラオケパブで起きました。オーナーの稲田真優子さん（当時２５）が、首や胸など十数か所を刃物で刺され死亡しているのが見つかりました。
警察は店の常連客だった宮本浩志被告（５８）を逮捕しました。当時、宮本被告は、大阪市内の機器メンテナンス関連会社に勤め、兵庫県西宮市の集合住宅で妻と子どもと暮らしていました。近所に住む人からは、「真面目な印象。優しいお父さんって感じ」という話が聞かれていました。
■一方的な好意 被害者「もう来ないでほしい」
一方、稲田さんの店での宮本被告の様子は違ったものでした。
（稲田さんの知人）
「（宮本被告は）前の店からのお客さんで、まゆさん自体が『もう来ないで』と言ったトラブルがあったみたい」
店の常連客として、週に４～５回程度店を訪れていた宮本被告。稲田さんに一方的な好意をよせていたとみられ、稲田さんののＬＩＮＥには、毎日大量に送られてくる宮本被告からのメッセージが残されていました。
（宮本被告のメッセージ）
「まだ既読にならないね」
「地声で説明して！」
（稲田さんのメッセージ）
「いっぱいかかってきて、怖いんですが」
（宮本被告のメッセージ）
「話せばすぐ終わったのに
まゆさんは
なんでも人のせいにするの？」
一方的なメッセージは、深夜に及ぶ日もありました。そして、事件当日も―。
（宮本被告のメッセージ）
「また後程伺いますね。昨日の話聞きたいな、よろしくね」
■死刑を望む被告 無罪を主張する弁護側
去年９月、宮本被告の初公判が始まりました。裁判長から名前や生年月日を聞かれても、宮本被告は何も話さず、弁護人が発言を促すと。
（宮本被告の発現）
「被害者の気持ちをくんで、ぜひ死刑にしていただきたい」
自らを死刑にするよう３分間にわたり語った後、「いかなる質問にも答える気はありません」と訴え、その後は黙秘を貫きました。
一方で、弁護側は無罪を主張。被告本人と弁護側の主張がねじれる中、裁判は進み、去年１０月、宮本被告に懲役２０年の実刑判決が言い渡されました。
大阪地裁は、「血液が犯行の時以外についた可能性は考えにくい」などとして宮本被告を犯人と認定しました。
宮本被告は、最後の意見陳述でも、「死刑を宣告していただきたい」などと５０分にわたって自らの主張を話し続けました。
そして、５月２２日、大阪高裁で控訴審が始まりましたが、宮本被告は法廷に姿を見せませんでした。
弁護側は、「（一審の）量刑は不当だ」と主張をしていて、宮本被告に被害者の遺族に対し、弁済の意思があることなどから「懲役２０年は重すぎる」などと主張しました。
一方、検察側は棄却を求め、出廷した稲田さんの兄が「具体的な弁済方法は示されず、支払う意思は見られない」などと陳述しました。
■遺族への手紙に宮本被告「真優子さんには今も感謝」
裁判の中では、認否を一度も明らかにすることのなかった宮本被告ですが、娘の命が奪われた真相を知りたいと、真優子さんの母親が一審の判決後に送った手紙には返信をしていました。ただ、その中に事件に関する具体的な記述はありませんでした。
＜宮本被告からの手紙＞
「お手紙ありがとうございました。（中略）真優子さんに対しては、今も感謝しております。
もし、今、彼女に贈る言葉としては『ありがとう』以外に思い浮かびません。真優子さんと私はおそらく性格が正反対だっただろうと思います。
真優子さんには何事にも挑戦していく姿勢、そしてそれをやりぬく力があることを感じてました。これは、私には持っていないものです。（中略）
真優子さんを見ていると、何だか自分の夢をかなえてくれているように感じていたため、今も感謝したい気持ちでいっぱいなのだと思っています。（中略）
いつかどこかでゆっくりとお会いできれば幸いです。ありがとうございました。 宮本浩志」
また、宮本被告は７月、真優子さんの兄と大阪拘置所で面会に応じ、犯行を認めて、謝罪をしたということです。裁判の中では、被告から事件のことについて、認否も含めても、何も語られていませんでした。
■裁判では最後まで何も語らなかった宮本被告
１０日、大阪高裁は懲役２０年を言い渡した一審の判決を支持し、宮本被告の控訴を退けました。控訴審では被告は１度も裁判に姿を見せることはありませんでした。
判決の理由について、大阪高裁の齋藤正人裁判長は、弁護人が指摘した第三者による犯行については「あくまで抽象的な可能性を述べただけだ」としました。そのうえで、被告が遺族に対して、弁済の意思があるため、量刑を軽くすべき主張していることについても、「実質的にはまだ弁済をしておらず、量刑に考慮すべき事情とは言えない」と述べました。
