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【解説】3日間で13万人以上が出国…いま何が? アメリカ・ロシア間の“情報戦” ウクライナ情勢
ロシア軍が数日以内にもウクライナに侵攻するとの懸念も高まり、緊迫した状態が続いています。そもそも今、何が起きていて、なぜこんなことになっているのか、わかりやすくお伝えします。
■ バイデン米大統領「数日以内に侵攻があり得る」明言
まず、今回の焦点となっているウクライナは、ヨーロッパの東に位置する国で、面積は日本の約1.6倍、人口は約4200万人です。今、ウクライナを巡って、ロシアと欧米諸国の間で緊迫した状態が続いています。
アメリカのバイデン大統領は17日、ロシアがウクライナに軍事侵攻する可能性について、次のように述べました。
アメリカ バイデン大統領
「(侵攻の脅威は)非常に高い。私の感覚では今後数日以内に起こりうる」
バイデン大統領は「数日以内に侵攻があり得る」と明言したわけですが、その根拠について「侵攻準備のあらゆる兆候がある」などと話しています。
■ウクライナ「親ロシア派側から攻撃」 親ロシア派「ウクライナ政府から砲撃」
そして、既に“きな臭い動き”も出始めています。ウクライナ東部では、一部の地域をロシアに近い勢力「親ロシア派」が実効支配しています。ウクライナ側は17日、「親ロシア派側から攻撃を受けた」とする映像を公開しました。
「親ロシア派から砲撃を受けた」とされる幼稚園では、壁が崩れ落ち、がれきが散乱しています。庭には、砲弾の跡とみられる大きな穴が開いています。また、映像には、園児が避難するような様子も映っています。
一方、ロシアメディアによると、親ロシア派側も、ウクライナ東部で17日、「ウクライナ側から砲撃を受けた」と主張しています。
■プーチン大統領「軍事技術的な手段を含めて、対応せざるを得ない」
背景には、ロシアと、欧米諸国の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の間の対立があります。ロシアが要求しているのは「NATOがこれ以上東に拡大しないこと」です。どういうことか簡単に経緯を振り返ります。
NATOは、冷戦時に旧ソ連の脅威に対抗するために、アメリカや西欧諸国を中心に1949年に発足した軍事同盟です。
冷戦が終わる頃には、16か国がNATOに加盟していました。NATOは冷戦後も拡大を続け、現在は30か国が加盟しています。
ウクライナは元々旧ソ連の一部で、地理的にロシアとヨーロッパの両方に国境を接しています。ロシアとしては、「ウクライナまでNATOに加盟してしまうと、欧米諸国が攻め込んでくる可能性がある」と懸念しています。
つまり、ウクライナは、ロシアにとって安全保障上、極めて重要な国で、いわば「最後のとりで」と言えます。だからこそ、「ウクライナをNATOに加盟させないと保証してくれ」と欧米諸国に求めているわけです。
当のウクライナは、NATOへの加盟を望んでいます。欧米諸国も、加盟するかどうかは「当事国が判断すること。NATOの扉は開かれている」として、ロシアの要求を拒否しています。
これに対してプーチン大統領は、「ロシアの懸念が無視されている」と不満をあらわにし、ロシアの要求に応じない場合は「軍事技術的な手段を含めて対応せざるを得ない」と警告しています。
■ロシアと欧米諸国“情報戦” 真っ向から食い違う主張
緊迫した事態を打開するために、欧米各国は何度もロシアと会談を重ねてきましたが、今回1つ特徴的なのが、“情報戦”というキーワードです。
ロシア側は17日、「ウクライナ国境周辺や軍事演習を終えた部隊などが撤収する様子」とする映像を公開しました。
しかし、欧米諸国は「撤収は確認できない」としていて、アメリカは「撤収どころか最大7000人増員されている」と指摘するなど、ロシアと欧米諸国の主張が真っ向から食い違っています。
また、アメリカのブリンケン国務長官は、「ミサイルや爆弾による攻撃、通信遮断、サイバー攻撃も計画されている。首都・キエフも標的に含まれる」など、ロシア側の動きについて積極的に情報発信しています。
実は、「ロシアとの情報戦の一環」とみられています。ワシントンのある外交筋は、「機密情報を思い切って出し続けて、ロシアの手口を先んじて暴露して、行動制約しようとしている」と分析しています。
つまり、「ロシア側の戦略をあえて先に公表することで、ロシアに侵攻を思いとどまらせよう」という狙いがあります。
こうしたアメリカの情報発信に対して、ロシア側は「偽情報を流して、ロシアが攻撃するかのように見せかけて、事態の緊迫を悪化させている」と非難しています。
■米露“激しい情報戦” ウクライナ国民に疲れも
18日午前10時前、ウクライナの首都・キエフ有数の繁華街では、飲食店などは通常通り営業し、お客さんも入っています。一見すると、平穏な光景といえます。
ただ、「人通りや車の交通量はここ数日で減った」ということです。飲食店の人に話を聞くと、「お客さんの数は、少なくなってきている」ということで、緊張が高まる中、外出を控えている人もいるとみられます。
こうした中、緊張の高まりを受け、一時的に国外に退避する動きも出ています。ウクライナ政府によると、この3日間で13万人以上が出国したということです。ウクライナの国際空港では17日、出国する人たちが殺到するような状況にはなっておらず、混乱は見られませんでした。
キエフの街の人に話を聞くと、「ロシア侵攻の話は以前からあり、準備はできているので、不安はありません」と答える人が多くいました。
また、「軍事侵攻が起きても国内にとどまる予定だ」と言う人に17日、話を聞きました。
取材した市民は、「本当は逃げたくても、表だって『国外に逃げたい』とは言えない。『団結して国を守ろう』と言われているので、『逃げたい』と言うのは恥ずかしいこと」だと話しました。
さらに、「ロシア侵攻の話はもうしたくない」という人も多くいました。
アメリカやロシアなどが仕掛ける“激しい情報戦”で、日に日に警戒感が高まる中、それに振り回され、国民に疲れが出始めているようにも見えました。
■“経済的な影響”懸念 エネルギー価格が高騰?
こうした緊迫した状況は、私たち日本人にとっても決して対岸の火事ではありません。外務省によると、ウクライナには17日時点で、約120人の日本人が滞在しています。岸田首相は17日、一刻も早く国外へ退避するよう呼びかけました。
また、“経済的な影響”というのもあります。ヨーロッパでは、天然ガスの4割をロシアからの供給に頼っています。供給がストップすれば、原油などのエネルギー価格が高騰するおそれがあります。
また、ウクライナは小麦やトウモロコシなどを輸出しているので、穀物の価格が高騰する可能性もあります。
◇
軍事侵攻となれば、世界に大きな影響をもたらすわけですが、来週後半には再びアメリカとロシアの外相が会談する予定です。それまでに、ロシアが軍事侵攻に踏み切るのかどうか、一触即発の状態が続きそうです。
(2022年2月18日午後4時半ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)
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