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2度の大地震を乗り越えた活版印刷 生き残った活字は“縁起物”に 父から受け継いだ技術と思い
大阪北部地震を乗り越えた印刷会社があります。受け継いだ技術と亡き父の想いとは?
大阪市内にある小さな印刷会社。
活版印刷職人・髙橋聖さん「これがベースなんですよ」
令和には珍しい「活版印刷」を生業としています。活版印刷とは、文字が彫られた金属などの板にインクを乗せ、プレス機の圧力で紙などに転写する手法です。
髙橋さん「圧の強弱で手触りが全然違ったものが出来上がるんです」
山本真帆記者「凹凸があると風合い、味が出ますね。機械だけど人の手作り感…」
髙橋さん「本当にデータ通りで、きれいなものがすぐできる時代。でもうちなら注文してから1週間近く待たされて値段も全然違うし、でもそれでも、できたものが自分だけに作ってもらった、私のオリジナルみたいなものが魅力なのかな」
2代目社長の野村いずみさん。先代の父・常夫さんのころは、今はデータで作られる版もさらに手間がかかっていたそうで…。
野村いずみさん「ここに活字の棚があって、活字を拾います」
金属の棒の先に文字や記号が書かれた「活字」。この活字の数はなんと40万個。当時は、その中から職人が一つ一つ選び並べて、活版で伝えたい想いを形にしていました。しかし、その手間と技術の発展に押され、徐々に衰退。さらに1995年、阪神淡路大震災が起きました。
棚から大量の活字が崩れ落ちる壊滅的な状態に。活版をあきらめる会社が相次ぎました。
野村いずみさん「一度落ちると、活字って柔らかいんで欠けてしまったりとか、(棚に)戻すだけでもすごく大変な作業なのに、父が活字を拾うって言って。もう『え~!』みたいな。『いや、これは捨てるわけにはいかん』とだけは言ってましたね」
活版印刷の原点となる一文字一文字を大事にしていた父の想いを引き継いだいずみさん。父が守り抜いた活字は、2人をつなぐものになっていました。しかし2018年、大阪北部地震が発生しました。
野村いずみさん「(活字が落ちているのを見て)呆然って感じで、どうしようと思って。阪神淡路大震災の時に一緒に拾った思いもあるし、父と会社の宝物みたいな感じで、捨てれなかったです、活字はね。何か捨てずに使える方法がないかなって」
たとえ印刷には使えなくても、活字1つから何か伝えたい。そこから生まれたのは―
野村いずみさん「大阪北部地震の時に落ちなかった活字だけが“おみく字”となって、この中には活版で使われる活字が一文字入ってます」
2度の大地震にも負けずに生き残った、“縁起物”ともいえる活字を紙に包んだ「おみく字」です。
山本記者「試してみます…“荘”?」
野村いずみさん「さかんで重々しい、行儀作法が厳重」
山本記者「真反対…」
野村いずみさん「そこはそういうのを大事にした方がいいですよ、っていう活字のメッセージかもしれない」
昨年オンライン販売を始めると、全国から購入希望者が集まり、販売制限をするほどの人気商品に。「おみく字」になったことで字が持つ力が幅広い世代に伝わり始めたのです。
活版印刷が持つ魅力に思いを寄せ、ともに働きたいとする若者も―。
去年就職した山口純奈さん(29)「普通の印刷とは違って凸凹があって、たまにインクのカスレもあったりだとかで、1個1個、個性があるというか、そのぬくもりがすごく良いなと思いました」
野村いずみさん「残っていく価値はすでにあると思っている。それをいろんな人に広めていけたらなと思います。それが結局生き残る、続けていける、活版も継承できる道だと思う」
災害や時代の変化を乗り越えて受け継いだ思い。これからも大切に刻み続けます。
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