クラスター高齢者施設に入る医師『重症化を防ぎながら命を守る』現場の“厳しい実情”(2022年2月16日)

クラスター高齢者施設に入る医師『重症化を防ぎながら命を守る』現場の“厳しい実情”(2022年2月16日)

クラスター高齢者施設に入る医師『重症化を防ぎながら命を守る』現場の“厳しい実情”(2022年2月16日)

新型コロナウイルス感染拡大の第6波で、医療現場の厳しい状況を連日お伝えしていますが、今回は続出している高齢者施設でのクラスター(感染者集団)についてです。訪問診療チームの医師を取材すると、病院と高齢者施設の違い、そして認知症の問題など、高齢者施設で感染拡大を防ぐことの難しさが浮き彫りとなりました。

 訪問診療チーム「KISA2隊」の小林正宜医師(39)。自宅療養中の患者のケアを中心に行ってきましたが、保健所からの要請で、クラスターが発生した高齢者施設を訪問するケースが急増しています。

 身動きが取りづらい入所者へのケアを献身的に行うだけでなく、点適薬「ゼビュディ」も積極的に投与して、病院さながらの治療を現地で行っています。

 (小林正宜医師)
 「施設のスタッフ、すなわち介護職の方や看護師さん、施設の運営に携わっている方々が非常に疲弊されている」

 野戦病院のようにベッドが並ぶ大阪市内の高齢者施設では、利用者の4割ほどが新型コロナに感染しました。スタッフが何とか前向きな雰囲気を作り出していますが、小林医師は“高齢者施設は医療機関ではなく感染対策の徹底は難しい”と改めて実感したといいます。

 (小林正宜医師)
 「しっかりとゾーニングされて、レッド・グリーン・イエローと明確になっている所もあれば、やはり高齢者施設ということで病院ではありませんので、なかなかそこのゾーニングが上手くいっていないとか。レッドゾーンで着た防護服を着たままグリーンゾーンに入ってしまったとか」

 さらに施設に入所している人の中には認知症の人が少なからずいるため、状況をより難しくしているといいます。

 (小林正宜医師)
 「マスクをお願いして着けてもらうんですけれど、すぐに外されたりとか、興奮されたりということがあります。マスクを着けることで叫んで唾液を飛ばしたりとか、感染を拡大させるような行動を取られたりということがある。マスクを外したままお部屋から出てウロウロして、他の方のお部屋に入って行ってしまうということも多く見受けられます。その方々が悪いわけではもちろんないんですけれども、感染が拡大してしまう構造が高齢者施設には少なからずあるのではないかと感じました」

 そうした感染対策の難しさに病床のひっ迫が追い打ちをかけています。施設側が搬送を要請しても、酸素飽和度などの数字を伝えると、すぐには搬送されないケースが急増しているのです。

 【小林正宜医師と高齢者施設のスタッフの会話】
(施設スタッフ)「今までだったら『酸素飽和度が下がっていたら救急車を向かわせる』だったのが、搬送先の人がたぶん優先順位を決めている感じですよね。『施設ですか、酸素ありますか。あ、じゃあこっち後でいいかな』とか。トリアージが始まっているんだなと感じましたね」
(小林正宜医師)「絶対ほったらかしにはしませんよ」
(施設スタッフ)「ありがとうございます」

 施設からの119番通報が殺到していることから、大阪市は高齢者施設に対して、搬送を検討する場合、まずは区の福祉保健センターや市の保健所に相談するよう呼びかけています。搬送を求める側も受け入れる側もまさに綱渡りの状況です。

 (小林正宜医師)
 「命の危機を感じておられる患者さんがたくさんいらっしゃいます。我々のようなチームがクラスター施設に入って重症化を予防していく。重症化を防ぎながら命を守っていく」

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