岸田首相襲撃 木村容疑者の民事訴訟を棄却 大阪高裁 選挙制度に不満を持ち10万円求める

岸田首相襲撃 木村容疑者の民事訴訟を棄却 大阪高裁 選挙制度に不満を持ち10万円求める

岸田首相襲撃 木村容疑者の民事訴訟を棄却 大阪高裁 選挙制度に不満を持ち10万円求める

 和歌山市で演説前の岸田首相を襲撃したなどとして逮捕された男が選挙制度に不満を持ち、国を相手に起こした裁判の控訴審で、大阪高裁は25日、男の請求を退けました。

 2023年4月15日、和歌山市で岸田首相の演説前に爆発物を投げ込んだなどとして、兵庫県川西市の木村隆二容疑者(24)が逮捕されました。現在、犯行当時の精神状態を調べるため、鑑定留置が行われていて、期間は9月1日までです。
【選挙制度に不満 事件の動機と関係か】
 警察などによりますと、木村容疑者は逮捕時から一貫して、黙秘を続けていて、動機はわかっていません。

 一方で、木村容疑者は2022年7月に行われた参議院議員選挙に立候補しようとしたものの、供託金300万円を用意できず、また、被選挙年齢である30歳を満たしていなかったことから立候補できませんでした。

 このことで、精神的苦痛を受けたとして、国に対し10万円の損害賠償を求める訴えを起こしていました。

 弁護士を代理人としてつけない、本人訴訟で、訴状なども自らで用意したものとみられています。
【一審・神戸地裁の判断】
 一審の神戸地裁の大川潤子裁判官は、2022年11月の判決で被選挙権について、「参議院は衆議院の行き過ぎを是正する役割が期待されており、その役割に照らすと、衆議院の被選挙権と5歳差を設けたことは合理的である。不当に立候補の自由や選挙権の行使を制限するものではない」と判断しました。

 供託金についても、「立候補について、慎重な判断を促し、自由かつ公正な選挙を図ろうとするもので正当」として、木村容疑者の訴えを退けました。
【判決を不服 控訴理由の中で旧「統一教会」や「岸田首相」に言及も】
 木村容疑者は「言い渡された事実は全て不服である」として、去年12月に控訴しました。

 控訴理由の中で「被選挙権を制限することで、立法府は抑制されるから、したがって投票行為が抑制され存政治家は国民に信任を得ずとも、カルト宗教である統一教会などの組織票で当選し、利益を不当に独占し、国民に損害を与え続けている」(かっこ内は原文ママ)などとも主張していました。

 また、「岸田内閣は故安倍晋三の国葬を世論の反対多数の中で議会での審理を経ずに閣議決定のみで強行した。このような民主主義への挑戦は許されるべきものではない。政治家が国民のために存在しないに至ったのは制限選挙を続けてきたからであり、既存政治家がそれによって当選する仕組みを作り上げたからである」(かっこ内は原文ママ)などと岸田首相を名指しで批判する内容も記されていました。
【控訴審・大阪高裁の判断】
 25日の判決で大阪高裁は、木村容疑者の控訴を退けました。理由については、一審判決を全面的に引用・支持したうえで次のように述べました。

■参議院議員選挙の被選挙権を30歳以上としていることについて
「議員が職務を遂行するにあたっては、選挙で議員を選ぶよりもより高い社会的経験に基づく思慮分別が必要となることを踏まえ、被選挙権について、選挙権よりも高い年齢要件が設けられていることは合理性がある」

■300万円の供託金について
「供託金制度には、候補者の乱立によって、かえって自由かつ公正な選挙の実現を妨げる事態を防止する目的がある。極めて少数の得票にとどまった候補者の供託金を国庫等に帰属する規定は、立候補に慎重な決断を促し、公正な選挙の実現を図ろうとするもので正当な目的がある」

 鑑定留置中のため、木村容疑者の姿は法廷にはありませんでした。

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