緊迫ウクライナ「16日にも侵攻」報道も プーチン大統領の思惑は?解説(2022年2月14日)
ウクライナ情勢をめぐり、アメリカのサリバン大統領補佐官が13日、「ロシアによる“ウクライナ侵攻”は今にも始まりかねない。オリンピック閉幕前の今週中も例外ではない」という見方を示しました。
欧米メディアは、具体的な侵攻の日付まで報じ始めました。
ドイツ・シュピーゲル誌:「CIAは早ければ、16日水曜日にも侵攻開始の恐れがあるとNATO(北大西洋条約機構)加盟国に伝えた」
アメリカ・政治専門サイトのポリティコ:「バイデン大統領がヨーロッパ各国の首脳に16日という日付を伝えた」
具体的な日付が出てきた背景には、この人の動向もあるようです。14日、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談に臨んだドイツのショルツ首相。この後、モスクワに移動し、15日にはプーチン大統領と会談して、説得にあたることになっています。
アメリカ政府は、具体的な日付については「確認する立場にない」としていますが、情報戦の一環なのか、こんな見立てまで披露しました。
アメリカ・サリバン大統領補佐官:「ロシアによるウクライナの攻撃は、空爆とミサイル攻撃から始まる可能性が高く、国籍に関係なく、民間人の犠牲者が出るだろう。その後は、強大な陸戦部隊の猛攻撃が続くだろう」
何が事実かはわからないまま、高まるだけの緊張感。その影響は世界に広がっています。
ウクライナ情勢への警戒感などから、11日のニューヨーク株式市場のダウ平均株価は大幅下落。この流れを受けて、週明け14日、東京市場の日経平均株価も600円以上、値下がりしました。一方で、ロシア産天然ガスの供給が滞るのではないかという憶測から、原油価格は高騰し、2014年以来の高値に迫っています。
G7=主要7カ国の財務相は、共同声明を発表。ロシア軍が侵攻に踏み切った場合、「ロシア経済に甚大かつ即時の結果をもたらす経済・金融制裁を共同で科す用意がある」としています。
鈴木財務大臣:「緊張緩和に向けた外交的道筋を見出すための取り組みを支持しつつ、さらなる軍事的侵攻があれば、迅速かつ協調され強力な対応に直面することになるなどを表明している」
ウクライナの日本大使館は、ほとんどの職員を国外に退避させることを決定しています。現地で長年暮らしてきた日本人も、難しい判断を迫られていました。
バレエ公演の企画に携わりながら、キエフで暮らす寺田宜弘さん。36年住んだ街を一時的に離れる決心をしました。
寺田宜弘さん:「日本の外務省、大使館の方から連絡をいただいて、キエフからウクライナから出るのが一番正しいと思い、本当は劇場を離れたくはないが、今回はこういう状態なので離れることにする」
3日後にはポルトガルに向かい、すでに現地にいる妻と合流する予定です。
寺田宜弘さん:「私としては、36年間住んでいる大事な国なので、できるだけ早く平和な時代が来るのを祈っている」
◆モスクワ支局の前田洋平支局長に聞きます。
(Q.ロシア側は今にも戦争を始めるつもりなのでしょうか)
ロシアは、いつでも侵攻する構えではあると思います。欧米が、戦争を防ごうとさまざまな情報を先出にすればするほど、ロシア政府としては、「戦争の危機をあおっているのはアメリカだ」という主張を強めています。ロシアの人々は、そういった考えに同調して、今回の対立の要因がロシア側あると考える人はわずか3パーセントほどとなっています。戦争を防ごうとする策を講じれば、講じるほど、ロシアでの反米感情は高くなっているというのが現状です。
(Q.そもそも、なぜロシアは、国境付近に軍を終結させ、威圧的な行動を取るのでしょうか)
プーチン大統領を個人的に知る人物は、「この10年間、意識的に欧米を分断しようとしてきた」と話します。今回、プーチン大統領にとって、最大のチャンスがめぐってきたといえます。まず一つが、バイデン政権の誕生です。バイデン大統領は、アフガニスタンから撤退しました。今回、ウクライナ危機をめぐっても、昨年の早い段階で、仮にロシアが軍事侵攻しても、武力で抵抗しないと明言しました。アメリカから遠く離れたウクライナ。アメリカが犠牲を払うことはないだろうとプーチン大統領は見ているのだと思います。さらに、ヨーロッパを16年間、まとめ上げ、重し役となってきたドイツのメルケル首相が引退しました。そのタイミングで、ウクライナ危機、NATOの不拡大といったヨーロッパにとって非常に難しい問題を突きつけることで、ヨーロッパを激しく揺さぶってやろうと。そういうチャンスがプーチン大統領に来たため、本気で圧力をかけていると思います。
(Q.今後、プーチン大統領は、何を目指していくのでしょうか)
プーチン大統領としては、軍事と外交、両面で圧力をかけながら、ヨーロッパを揺さぶり、ロシアにとって、状況の良い国際情勢を作り出そうと狙っていると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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