【解説】実は多い“所在不明”の文化財 動機は売却目的?対策は?『知りたいッ!』

【解説】実は多い“所在不明”の文化財 動機は売却目的?対策は?『知りたいッ!』

【解説】実は多い“所在不明”の文化財 動機は売却目的?対策は?『知りたいッ!』

長野市の善光寺で像が盗まれた事件で5日、容疑者が逮捕されました。調べてみると、貴重な仏像などが盗まれる事案は全国で数多く起きていることがわかりました。

●世界が認める“びんずる様”
●全国各地で所在不明
●盗難約70件

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■盗まれた「びんずる尊者像」 無事に返却

善光寺から盗まれた「びんずる尊者像」は寺から60キロほど離れた場所で5日、発見されました。

窃盗の疑いで送検されたのは、熊本県の職業不詳、森本晋太郎容疑者(34)です。警察の調べに対し、森本容疑者は容疑を認めていて、善光寺によると、森本容疑者が1人で抱えて持ち去る様子が防犯カメラに映っていたということです。「こういうものがあると災いが起きる」といった趣旨の話をしているとの情報もあります。

びんずる尊者像は6日午前、善光寺に無事、返却されました。びんずる尊者像は木製の像で、高さは約1メートルあります。ミシュランが発行する旅行のガイドブックで「三つ星」、つまり“わざわざ行く価値があるもの”という評価を得ています。

参拝者には「びんずる様」の愛称で親しまれていて、自分の体の痛めている場所と同じところを触ると病気が治るといわれる「なで仏」として親しまれていて、表面はつるつるしているそうです。

毎年1月6日に行われる「びんずる廻し」という行事では、像をしゃもじでなで、そのしゃもじを持ち帰ることで1年間健康に過ごせると言われています。

■実は多い“所在不明”の文化財 国指定のものだけで140件

実は、こうした仏像などが盗まれるケースは、決して珍しくはないのです。

文化庁のホームページ内には「取り戻そう! みんなの文化財」というページが設けられています。実は、文化庁には「所在不明文化財担当」という部署があるそうです。

現在、かなりの数の文化財が所在不明となっています。

国指定のもので合計140件、そのうち盗難は28件に上っています。さらに地方指定などの文化財もあり、文化庁に申請があったものだけで合計52件、盗難は40件となっています。
具体的にどのようなものが盗まれたのか、盗難に遭った国指定の文化財の一部を確認します。文化庁のホームページによると、京都府の彫刻「銅造大威徳明王像」、福井県の絵画「絹本著色阿弥陀如来像」、島根県の古文書「紙本墨書後醍醐天皇御願文」、東京都の刀「太刀〈銘助茂/〉」が盗まれたままとなっています。
他にも、茨城・筑西市にある神社の境内にあった「雷神社神楽面」23面が盗まれたままだといいます。約180年前につくられたお面で、市の文化財に指定されています。1995年、23面すべてが盗まれてしまったということです。

■重要文化財が盗まれたまま… 被害にあった寺に聞く

盗まれたままという状況をどのように受け止めているのか、被害にあった寺の1つに話を聞きました。

兵庫・加古川市にある「鶴林寺」では、2002年に国の重要文化財である絵画「絹本著色弥陀三尊像」が盗まれ、20年以上たった今も戻ってきていないということです。

実は、鶴林寺で盗まれたものはこれ1つではなく、同じ年に、別の絵画7点も盗まれました。その7点については、犯行グループが判明するなどして戻ってきたそうです。

鶴林寺の茂渡俊慶住職は「今でも悔しくてたまらない。二度とこんなことがないようにしてほしい。みんなが大事にしてきたものを盗まないでほしい」と話していました。

■ほとんどが売却目的か “地方のあまり人がいない場所で盗む”手口も

なぜ文化財を盗むのか、身勝手な恨みが動機となっているケースもありますが、やはり多いのは売却目的だそうです。

奈良大学文学部文化財学科の大河内准教授によると、仏像などを狙った窃盗はこの10年ほどで特に増えているそうです。ほとんどが売却目的だといい、最近はネットオークションなどで美術品や骨董(こっとう)品をたやすく入手できます。古美術市場がかなり活発化しているそうです。

売却というと“海外に…”というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、大河内准教授によると、海外に持って行くとなると税関やセキュリティーの面などでハードルも高いため、盗まれた文化財の大半が国内で出回っているということです。

国内での売買となると、盗難品とすぐに気づかれそうですが、意外と気づかれないといいます。

東京都立大学法学部の星周一郎教授によると、地方のあまり人がいない場所で骨董品などを盗み、「自宅にあった」などとウソをついて売却するという手口もあるそうです。そうなると、被害届も出されず、盗まれたものと知られないまま転売に転売を重ねられ、足がつきにくくなる状況があるということです。

    ◇

過疎化した地域などでは、盗まれてもそのことに気づかないケースも増えているといいます。まずは身近にある文化財などを把握した上で、鍵や防犯カメラなどの対策を取ることが窃盗への有効な対抗策となりそうです。
(2023年4月6日放送「news every.」より)

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