【賃上げの実態】「役員報酬を切ってでも5%は」 …苦しむ社長の決断

【賃上げの実態】「役員報酬を切ってでも5%は」 …苦しむ社長の決断

【賃上げの実態】「役員報酬を切ってでも5%は」 …苦しむ社長の決断

春闘の集中回答日を迎えた15日、多くの大企業が満額回答をしました。中小企業も半数以上が賃上げを実施しますが、その6割は「やむにやまれぬ賃上げ」です。コスト増に苦しみ、価格転嫁には至っても、賃上げは容易ではありません。現場を取材しました。

■人材確保に時給アップ…悩む店長

東京・千代田区のお好み焼き店を訪ねました。店長は、人材確保に悩んでいました。

「(アルバイトの)求人広告を出しても、ほとんど連絡をいただけないような状況が続いていまして…」

光熱費や食材が値上がりする中、去年12月には全従業員の時給を100円引き上げましたが、店長は「50円から100円は(時給を)上げないと、スタッフのモチベーションは上がってこないのかなという気はしています」と表情を曇らせます。

「ものすごく大変ですね。(メニューの)値段に転嫁せざるを得ないのかなという気はしています」

■大企業「満額」相次ぐ…街では?

賃上げの動きが進みます。15日、労働組合の賃上げ要求に大企業が答える「春闘」の集中回答日を迎え、多くの企業が満額回答しました。

日本テレビの取材によると、日立製作所やパナソニックなどの電機メーカー、トヨタ、ホンダ、スズキといった自動車メーカー、三菱重工業やIHIの機械メーカーなどで、給与水準を底上げする「ベア」を中心に、例年を上回る賃上げが相次ぎました。

賃上げについて15日、都内で聞きました。

賃上げ予定という大企業の会社員(20代)は「(自分の会社は)5%給料が上がるとか。ありがたい。うれしいです」と言います。賃上げ予定なしという中小企業の営業職(20代)は「ちょっとでも上がってくれたら、仕事のモチベーションになるかな」。

■中小企業の58.2%「賃上げ実施」

こうした中、約8年ぶりに開かれたのは、政府・労働団体・経済界のトップが集う政労使会議です。中小企業の賃上げのため、人件費の価格転嫁を進めることで合意しました。

日本商工会議所の調査によると、「賃上げを実施する」と回答した中小企業は58.2%(15日時点、速報値)。ただこの6割以上は、業績の改善が見られないものの、やむにやまれぬ賃上げをする企業です。

■電気代は2倍、原材料の金属も値上げ

埼玉・川口市にある、従業員50人ほどの「石川金属機工」を訪ねました。

社長は「これが電気を一番使う電気炉です。銅とかスズを溶かします。電気を使うオバケみたいなものです」と工場を案内してくれました。

大量に電気を使う機械が多く、電気代は去年の約2倍になりました。さらに、原材料の金属も軒並み値上がりしています。取引先に値上げ交渉に応じてもらうため、日々金属の金額を記録し、コストの増加を訴えています。

社長
「大手も値上げに対しては今まで聞いてくれなかったところ(取引先)も、(価格転嫁を)6割7割ぐらいは認めてくれているかなって」

価格転嫁は道半ばですが、賃上げを決断しました。社長は「まあ(賃金は)5%は最低でも上げなきゃいけない。役員の報酬を切ってでもやらなきゃいけないと思っています」と語ります。

■「会社も社員も潤っていない」

一方、どうしても賃上げは難しいという東京・墨田区のアパレル企業「アシダニット」を訪ねました。

正社員は「生活面では一番苦しい時になってきているかなと思うので、やっぱり(賃金)上げてほしいかなとは思います」と話します。

この会社は取引先に値上げ交渉をしているといいますが、賃金に反映させるには厳しい現実がありました。

社長
「(商品の価格を)上げていただいている会社がほとんどですが、その分は光熱費に消えていって、賃金を上げるところまで回っていない。会社も潤っていないし、社員も潤っていないし。何とかしていかないと、とは思っています」
(2023年3月15日放送「news zero」より)

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