震災直後の気仙沼で目撃 “火災旋風” 弱い風でも…脅威を検証 身を守る術とは(2023年3月11日)

震災直後の気仙沼で目撃 “火災旋風” 弱い風でも…脅威を検証 身を守る術とは(2023年3月11日)

震災直後の気仙沼で目撃 “火災旋風” 弱い風でも…脅威を検証 身を守る術とは(2023年3月11日)

 住宅街から立ち上る炎、煙が渦を巻いています。これは震災直後、宮城県気仙沼市で撮られた写真です。この時、「火災旋風」のような竜巻状の巨大な炎の渦が目撃されましたが、その脅威を検証しました。

■気仙沼で目撃“火災旋風”

 津波の3日後から発生していた、大規模火災。この映像と同じ時刻、別な位置から撮られた1枚の写真があります。そこには、激しく立ち上る煙の1つが渦を巻く姿が写し出されていました。

 “渦巻く煙”を撮影した菊田清一さん(75):「なんだコイツは。その一言。わぁこんなに燃えるんだ」

 写真を撮影した菊田清一さん。気仙沼地域の元・消防長です。

 “渦巻く煙”を撮影した菊田清一さん:「かつて色んな火災現場に行ったけれど、これ(渦)巻いていたんですね。ここまで気付かなかったというより、直視しなかった」

 写真が撮られるおよそ2時間前、“ある異変”が目撃されていました。

 大規模な森林火災などで、炎が渦を巻き、竜巻状の火柱になって立ち上る「火災旋風」。

■関東大震災でも3万8000人が被害

 東京理科大学 (国際火災科学)・桑名一徳教授:「関東大震災の時、大きな火災旋風がいくつも発生して、数万人の人が亡くなった。旋風の速さは70m毎秒を越えていた」

 100年前に起きた「関東大震災」。渦巻く炎が奪った命は、およそ3万8000人。しかしその実態は、いまだ分からない事が多いのです。

■「火災旋風」の“脅威”検証

 火災旋風は、どのような時に発生するのか。専門家の協力のもと、検証しました。実験は、容器の一つひとつを住宅にみたてて火を付け、大規模な火災を再現します。

 東京理科大学 (火災安全工学)・大宮喜文教授:「火炎が中の方に集まる。合流することで火炎の威力が増す」

 次第に勢いを増していく炎。自然の風にみたてた風が送られます。すると…。

 東京理科大学 (国際火災科学)・桑名一徳教授:「炎が回転して立ち上る炎の高さもすごく高くなっている」

 ハイスピードカメラで見ると、炎は時折回転を繰り返しながら、上へ上へと伸びていくのが分かります。

 炎の中に設置したカメラは、周囲の炎が、立ち上る火柱に吸い込まれるように集まり、上昇していくのを捉えていました。さらに渦は右へ左へと移動を繰り返し、燃焼し続けたのです。

 なぜ、火災旋風は起きたのか。レーザー光線を使って空気の流れを解析すると、謎が明らかになってきました。

 東京理科大学 (国際火災科学)・桑名一徳教授:「風はこちらから吹いているが、炎があるため風が上に曲げられる」

 送られた風は、炎にさえぎられて上昇気流と共に上にあがります。さらにその上昇気流は、周りから空気を取り込んで渦となり、火災旋風を発生させたのです。

 東京理科大学 (国際火災科学)・桑名一徳教授:「火災旋風が発生すると燃焼が激しくなり周囲への熱の伝わり方も大きくなるため、延焼が速くなったり、飛び火の距離が長くなり、さらに延焼につながる」

 大都市に「火災旋風」は発生するのか。積み上げたレンガを、住宅に隣接したビルに想定し、実験を行うと…。

 風を送る前に火災旋風が発生。その後、大きな2つの渦が長時間にわたり燃焼し続け、やがて合流。1つの巨大な火災旋風に成長したのです。レンガによって、複雑な気流が発生したのが原因と思われ、ビルが火災旋風に大きな影響を与えることが分かりました。

■首都直下でも…「木密地域」の防災

 「いつ起きてもおかしくない」と言われる「首都直下地震」でも、火災旋風の発生が危険視されています。

 その引き金となりうるのは、木造家屋が密集する、いわゆる「木密地域」での“大規模火災”。1つの地域を専門家と共に歩きました。

 東京理科大学 (火災安全工学)・大宮喜文教授:「建物と建物の間が狭いと燃え移りやすさは高くなる」

 大田区羽田地区。狭い路地がいたるところにある、古くからの住宅街です。区が調査した建物の耐火性能を示した地図を見ると、赤やピンクなど、火災に弱い住宅が密集しているのが分かります。

 東京理科大学 (火災安全工学)・大宮喜文教授::「建物の構造として壁が燃えやすい、燃えづらいもあるが、窓ですね。家が燃えれば窓から炎が出る。それによって隣の建物に炎がついたり、そこから出る熱で燃えやすくなる」

 こうしたことから町では、住民による「市民消火隊」を結成。狭い路地でも稼働できる「小型のポンプ車」なども取り入れているのですが、扱える人は6人ほどだと言います。

 羽田前河原町会・石井嘉明会長:「もっとたくさん(人が)いればすぐに何かの時は間に合うが、誰でも(操作)できるものではないため、その辺は厳しい」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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