記者に向けられた厳しい視線…ウクライナ“極秘施設”で見たロシア人捕虜 「受刑者を戦闘に…」収容中の戦闘員が傭兵集団「ワグネル」の実態を証言【news23】|TBS NEWS DIG
特別に取材を許可されたのは、所在地を明かすことを禁じられたウクライナ“極秘施設”。重厚な扉の先で待っていたのはロシア兵捕虜たちの厳しい視線でした。収容中の民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員が語ったのは、受刑者を激戦地へ送る“傭兵集団”の実態でした。
■ロシア人捕虜 身体拘束なし 自由時間に筋トレ 作業の対価でデリバリーも可能
ウクライナ西部。JNNのクルーは“ある極秘施設”を訪ねました。
増尾聡記者
「ここから捕虜が収容されている施設になります。何度も鉄格子、厳重な扉をくぐっていますが、さらに何重にもありますね」
ウクライナで拘束されたロシア軍の戦争捕虜が収容されている施設。ロシア側の標的とされる可能性が高いため、所在地は明かさないという条件で、特別に単独取材が許可されました。
増尾記者
「ちょっと驚きですが、捕虜が身につけていた実際の服。ロシア軍の制服もわかりますね。ここでまず皆さん服を脱いで、危なくないように身につけているものをすべてとると」
ここでも1日に複数回、空襲警報が鳴ります。取材中もウクライナ全土に空襲警報が・・・
増尾記者
「ここが今・・・(一斉に立ち上がる)いまシェルター来ましたけれど・・捕虜が一斉に立ち上がりました。私たちに厳しい視線が向けられています」
薄暗い地下の一室には、警報のため、避難してきた捕虜の姿が。年齢は明らかにされませんでしたが、20代前半から60代後半にも見える高齢者まで様々です。その後、空襲警報が解除され、地上へと戻ろうとしていた、その時・・・
増尾記者
「あ、いま電気消えましたね、停電ですかね。小さな小型のライトをつけました。緊張感が走りましたね、捕虜の方が動いているときだったので」
インフラ施設を狙ったロシアの攻撃による電力不足は、こうした施設にも影響を及ぼしています。
この施設にいる捕虜は、手錠や腰縄など、身体を拘束される器具を一切つけられていません。自由時間もあり、走ったり、筋力トレーニングをしたりする捕虜の姿もありました。
この施設では他にも、1日に7時間程度、作業に取り組む時間が設けられています。この日は数人単位のグループに分かれ、ガーデニングチェアを作っていました。
増尾記者
「カッターやペンチ、鋭利な刃物みたいなものを使って作業している」
作業時間に応じて報酬が支払われ、地域の飲食店での配達注文などに使うことができるということです。当局が海外メディアに取材を許可したのは捕虜の待遇に問題が無いことを示す意図もあるとみられます。
■窃盗で服役中 自由の身になれると言われ激戦地に「これは何のための戦争なのか分からない」
私たちは、捕虜に話を聞く機会を得ました。本人の意思を直接確認し、本心を聞くため、ウクライナ当局の担当者には席を外してもらいました。
捕虜になったロシア西部出身男性(23)
「私は刑務所に入っていました。そこに『ワグネル』の担当者が来て戦闘に参加するように勧めてきました」
「ワグネル」とは、ロシアの民間軍事会社で、その会社に誘われ、戦闘員になったと言います。ワグネルはロシア軍の兵員不足を補うため、金で雇った戦闘員をウクライナの前線に派遣しています。特にワグネルの戦闘員は激戦地に投入される傾向が強いと指摘されています。
ウクライナで戦ったワグネルの戦闘員が日本メディアの取材に応じるのは、これが初めて。男性は自動車窃盗の罪で服役中でしたが、月20万ルーブル(約36万円)の報酬で半年間戦闘に参加すれば、自由の身になれると言われたそうです。
捕虜になったワグネル戦闘員
「バフムトの近くに送られました。ウクライナ軍の陣地に突撃しなければなりませんでした。昼も夜も砲撃が続いていて兵士たちは常に戦闘を続けていました」
男性は、いま最も激しい戦闘が繰り広げられているウクライナ東部・バフムトで去年末までの3か月間、戦闘にあたったといいます。
捕虜になったワグネル戦闘員
「新年までにバフムトを占領しなければならないと言われたんです。私は負傷者を救助し、遺体を回収していました。最も多い日で1日40体の遺体を運びました。目の前で人が、友達が死んだ時は恐ろしかった。次に殺されるのは自分だといつも思っていました」
3か月間で目にした仲間の遺体は数千にのぼったと話します。毎日のように「逃げたい」と考えたものの、頭をよぎったのは仲間うちで語られていたこんな話でした。
捕虜になったワグネル戦闘員
「そんなことをしたら『銃で殺される』と。仲間も隊長も言っていました。与えられた任務をこなさなければならなかった。やるしかなかったのです」
男性はこれまで「ウクライナ政府がロシア語を話す住人を虐殺している」というロシアの言い分を信じていましたが、その考えにも変化があったと話します。
捕虜になったワグネル戦闘員
「これは何のための戦争なのか、わからない。罪のない子どもやお年寄り、民間人が死んでいるからです。早く終わってほしい。それだけです」
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