“酒鬼薔薇”事件も…少年事件の記録“廃棄”で最高裁が謝罪(2023年2月14日)
各地の裁判所で、重大少年事件の記録が廃棄されていた問題で、最高裁は初めて正式に、被害者遺族に謝罪しました。
神戸連続児童殺傷事件で亡くなった土師淳くんの父・守さん(66)は14日、犯罪被害者の遺族として、最高裁で開かれた有識者委員会で意見を述べました。
なぜ、重大少年事件の記録を、裁判所が廃棄したのか。最高裁からは「適切ではなかった。反省し、申し訳なく思っている」と謝罪があったといいます。
土師守さん:「一般国民の常識と、司法の常識に乖離があるなと、ものすごく思った。事件記録をずさんに管理することが、被害者遺族に及ぼす影響を分かってほしかった」
26年前の神戸で、小学生5人が襲われ、2人が殺害された、連続児童殺傷事件。逮捕されたのは「酒鬼薔薇聖斗」と名乗った、14歳の近所の少年でした。
少年は審判を経て、医療少年院へ送致。その過程で、少年の内面や成長などを記した、膨大な資料が集められたとみられます。
しかし、神戸家庭裁判所によりますと、事件についての全ての資料を廃棄したといいます。
土師守さん:「まさか、これだけ重要な事件の記録が、歴史的にも非常に重要な資料だと思っていたので、廃棄されるということを想像していなかった。(廃棄が)事実だと分かってくると、驚愕から憤りに変わっていく」
少年事件は、2000年代の法改正により、遺族が望めば記録を閲覧したり、審判を見たりできる制度が、段階的に整いました。
ただ、連続児童殺傷事件が起きたのは、こうした制度が整う前でした。
土師守さん:「特に私たちのように(少年法)改正前の被害者遺族は、審判から完全に疎外されていたので、記録の閲覧も全くできていない。法律が改正されて、もし記録を見ることができれば、なぜ私たちの子どもが命を奪われなければいけなかったのか、その問いに少しは近付けるのではないか。そういう思いで、淡い希望で待ち続けていた。同じ見ることができないにしても、元々の記録があるとないとでは、待つ身としては雲泥の差がある」
そもそも重大事件の記録廃棄が問題になったのは、今回が初めてではありません。
そこで3年前に最高裁は、事実上永久保存する『特別保存』の運用を、改めて具体的に通知しました。
ところが、その通知後も記録が廃棄された少年事件があります。
2012年、京都の亀岡市で、無免許運転の車が集団登校をする小学生らの列に突っ込み、10人が死傷しました。
京都家庭裁判所によりますと、記録の廃棄はおととしまで行われていたといいます。
今回、最高裁が調査を行っている少年事件は、記録が廃棄されたものなど59件。そのほか、民事事件なども調査していて、対象は合わせて約100件に上ります。
土師守さん:「廃棄に至った経緯をきちんと解明していただいたうえで、次の記録保存に生かしてほしい。子どもが生きた証そのものを奪っていくことだと思っている。誰かがきちんと声を出さなければ、今後もこのようなことが続くことにつながってしまう」
【裁判記録の保存期間】
少年事件の裁判記録の保存期間については、少年が26歳に達するまで保存するというルールがあります。
また、世相を反映した事件で史料的価値が高いもの、全国的に社会の耳目を集めた事件、少年事件に関する調査・研究の重要な参考資料になる事件については、『特別保存』として、永久に保存するよう定めています。
【廃棄された裁判記録】
●1997年、神戸市須磨区『連続児童殺傷事件』
小学生5人が連続で襲われ、2人が殺害される。14歳の“少年A”が逮捕。
●2003年、長崎市『男児誘拐殺人事件』
中学1年の男子生徒(12)が、男の子(4)を連れ去り、駐車場の屋上から突き落とし殺害。
●2004年、長崎県佐世保市『同級生殺害事件』
佐世保市の小学校で、小学6年の女子児童(11)が、同級生をカッターナイフで殺害。
●2012年、京都府亀岡市『亀岡暴走事故』
少年(18)の車が、集団登校の列に突っ込み、小学生など10人が死傷。
【なぜ記録が残されていないのか?】
事件記録等保存規程では「保存期間が満了した記録及び事件書類は廃棄する」となっていて、廃棄が原則となっています。
司法文書の管理に詳しい龍谷大学・福島至名誉教授は「訴訟記録、事件記録には、判決を書いた書面だけではなく、法廷での証言など、膨大な関係記録がある。原則に従って廃棄したというのが、裁判所のスタンス」と解説します。
遺族の土師守さんは、意見陳述書で「被害者遺族の思いだけではなく、公的な意味でも大きな問題がある。多くの少年事件の記録は、特殊な事案が多く、今後発生する事件との比較検討も含め、貴重な資料であると考えられる。記録さえ残していれば、再発防止のためにも役立てることは可能だったのでは」と訴えています。
福島名誉教授は「裁判記録は“国民共有の知的資源”。原則廃棄で、例外的に保存となっているが、この考えを逆転させるべきだと思う。最終的には、文書の専門家の公文書館に移管し、残す残さないの判断をして保存していくべき」としています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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