“廃業危機”かまぼこ店“老舗復活”へ 社長を引き継いだ25歳女性「次世代へつなぐ」(2023年1月31日)
「未来をここからプロジェクト」31日は、廃業の危機にあった福岡県にあるかまぼこの老舗の社長を引き継いだ、かまぼこ作りの経験がない25歳の女性だ。老舗復活には、様々な困難が待ち受けていた。
■後継者不在で休業…老舗復活「手伝わせて下さい」
九州最大の都市・福岡市から車で45分ほどの距離にあるみやま市。昔ながらの街並みが残る場所だ。
この地で、明治23年(1890年)に創業したのが「吉開のかまぼこ」。皇室への献上や農林水産大臣賞を受賞したこともある。
その特徴はでんぷんや卵白などのつなぎを一切使わないこと。これは非常に難しい技術だというが、そうすることで魚のうまみを最大限に引き出すことができるという。
かまぼこを購入した客(54):「かめばかむほど、うまみが出る。お魚の味をすごく感じるんですよね」
かまぼこを購入した客(66):「歯ごたえを大事にしていて、素材の良さをすごく出しているかまぼこ。食べていて飽きない。また食べたくなる」
地元で130年近く愛されてきた吉開のかまぼこだが、2018年に後継者不在などが原因で店を閉じた。
復活を望む声が上がるなか、吉開のかまぼこを引き継いだのは、吉開のかまぼこ4代目社長・林田茉優さん(25)だ。なぜ彼女は、かまぼこの老舗を引き継ぐことになったのか?
1987年から休業するまでの31年間、社長を務めてきた3代目の吉開喜代次さん(77)。代々つないできた店の歴史が、後継者不在という形で途切れることにやり切れなさでいっぱいだったという。
吉開さん:「後継者がいないから、辞めなきゃいけないというのは、頭にあった。先祖に対して申し訳ないという気持ちが、やっぱり強かったですね」
一方、そのころ、大学生だった林田さん。授業で後継者不足の課題に取り組むなか、吉開のかまぼこに出会った。
林田さん:「(吉開さんが)どうしても後継者を探したいんだって、強い気持ちを持っていらっしゃっていて。私もすごく吉開さんの言葉とか熱さに感激しまして。手伝わせて下さいとなったのが、その日ですね」
■3年経ち引き継ぎ先が…会社社長が“驚きの提案”
その思いに応えるべく、林田さんは吉開のかまぼこの復活をサポートしてくれる企業を探した。しかし…。
林田さん:「全然、相手にされることもないし、休業は瀕死(ひんし)しているようなものだ。そういうところは普通やらないよとか言われて。その言葉には、かなりショックをその時、受けたりしていましたね」
大学生の林田さんが直面した企業探しの難しさ。心が折れそうななか、彼女を支えたのは、3代目の吉開さんの言葉だった。
林田さん:「『私はかまぼこを作りながら死にたい』という言葉を言われたんですね。その言葉を聞いて、吉開さんは諦めていない。ならば、私がまだ諦める必要はないなって」
その後、大学を卒業し、一般企業に就職した林田さんだが、諦めずに活動を続けた。アタックした企業は50を超え、3年が経ったある日、ついに吉開のかまぼこを引き継ぎたいという企業が現れた。
林田さんと同じく後継者不足の問題に関心を寄せていた福岡市の企業だ。ようやく吉開さんの思いに応えることができ、安堵(あんど)した林田さん。だが、そんな彼女に会社の社長が驚きの提案をした。
フロイデ株式会社 社長・瀬戸口将貴さん(39):「やっぱり、会社を本気で復活させたいと一番願っている人間が、代表をするべきだってなった時に、その思いが一番強い彼女(林田さん)がやるべきだなと。そのことを本人に伝えさせてもらいました」
なんと、経営を林田さんに任せたいというのだ。提案された林田さんは…。
林田さん:「すごくその時は驚きました。本当にその言葉うれしかったので、頑張ろうという気持ちに一瞬で変わりました」
林田さんは、4代目社長になるべく、勤めていた会社を辞めた。この決断に、3代目は…。
吉開さん:「うれしかったですよ。全然知らない人がなるよりもですね、ずっと付き合いがあったからですね。あんた(林田さん)がなるのは良かったねって。そういうふうに言いました」
■ロゴデザイン一新 伝統の味は守り…新たな試みも
こうして、林田さんは4代目に就任。吉開のかまぼこは復活するかに思えたが、またしても大きな壁が立ちはだかる。林田さんには、かまぼこ作りの経験が一度もなかった。
店を引き継いでも、その味を引き継げなければ、本当の意味での復活とは言えない。3代目は高齢のため、付きっ切りで教えることができないなか、林田さんを名実ともに4代目に導いたのが1冊のノートだった。
かまぼこ作りの経験がなくかまぼこの老舗の4代目社長に就任した林田さん。そんな彼女を職人へと導いたのが、3代目から受け継いだ秘伝のノートだった。
林田さん:「このノートは、吉開会長が昔からずっと日々の製造する時の気温であったり、その時の身の状態とか。例えば、塩を1回目どのくらい入れて、2回目どのくらい入れてということとかを記載してあるものになります」
しかし、ノート通りに作っても、職人技ともいえる伝統の味にたどり着くには時間がかかった。社長に就任してから、半年以上経った去年7月、ようやく吉開のかまぼこの味を出せるようになり、営業を再開した。
今では、社長として従業員3人を束ねている。そして、林田さんはオンラインショップを新設するなど、日本全国に吉開のかまぼこを知ってもらう活動を開始。さらに、幅広い年齢層に愛されてほしいと思い切って、ロゴのデザインを一新した。
林田さん:「『吉開のかまぼこ』がまさに『吉を開く』という、かなり縁起の良いお名前だなと思いまして。縁起の良い1つの表れになるので」
吉開さん:「なかなか良いマークですよね、これ。新しい感じでですね。良いなと思いましてですね。現代風にできているなと思ったんですよね」
伝統の味は守る一方で、新たな試みは受け入れる。こうした3代目の柔軟な姿勢のおかげで、今の吉開のかまぼこがあると、林田さんは話す。
■今後は「自分たちが次世代につなげていく」
社長になって2年が経ち、休業前から通う常連客からも認められる存在となった。
常連客が持ってきたのは、かまぼこの板に書いた林田さんへのメッセージだった。吉開のかまぼこを復活させた林田さん。今後については、次のように話す。
林田さん:「今、日本中で素晴らしい技術や伝統を誇っていても、後継者がいないことを理由に、廃業する企業が増えているなかで、日本にある良いモノを引き継いで、自分たちが次世代につなげていく1人になりたい。そのために、『吉開のかまぼこ』を育てていく。私自身も成長していくことを頑張っていきたい」
(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年1月31日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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