【報ステ解説】「政権維持も難しくなる」中国総人口61年ぶり減少“経済大国”の行方は(2023年1月17日)
中国政府は17日、去年末の時点の人口が14億1175万人と、前の年に比べて85万人減ったと発表しました。
中国の人口減少は61年ぶりで、この傾向が続けば、今後の経済成長にも大きな影響を及ぼすことが懸念されています。
1959年から1961年にかけて減った時は、毛沢東主導の経済成長計画『大躍進政策』の失敗による飢餓が原因でしたが、今回は子どもが生まれていないことが原因です。
中国国家統計局・康義局長:「出生人口が減少、高齢化が進み、人口のマイナス成長につながった」
女性1人が生涯に産む子どもの推計数を示す『合計特殊出生率』は現在1.15。2.1で横ばいと言われいるので、今後も人口減少が続いていくとみられています。
新婚夫婦:「子どもはまだ決まっていません。これから相談します」「時間・体力・お金が必要ですよね」「人生のマッチングも考えなければいけません。例えば、仕事や夢、スケジュールとかです」
2児の母:「(Q.もう1人を産むことは?)無理です。外に出ると『おばあさんですか』とよく聞かれます。ろくに眠るのも食べるのもできない。うちは2人で限界です」
孫2人の祖父:「(Q.孫は何人ですか?)2人です。(Q.もう1人は?)いらないです。もう負担が大きいです。孫2人勉強・夕飯・洋服など、私たちで面倒を見ています。娘夫婦が仕事が終わって帰ってくると午後7時半です」
世界一だった人口は、中国経済を押し上げる源泉の一つでもありました。しかし、少子高齢化となれば当然、市場規模が縮小していきます。
中国共産党の指導部にとっては悩ましい問題です。
習近平国家主席:「出生率を上向かせることで、高齢化に先手となる国家戦略を追求する」
中国の統計で下がっているのは、人口や出生率だけではありません。GDPの伸びは前年比でプラス3.0%。目標だったプラス5.55%前後を大きく下回りました。
それは地方に行くとより顕著です。
冨坂範明中国総局長:「西安市内のビルですが、1階のテナントが全て売り出し中になっていて、何も入っていないゴーストビルのようになっています」「日雇いの人たちが集まる労働市場です。農民工の方々が仕事を求めて集まってきています。もうすぐ春節ですが、たくさんの人が仕事を求めて集まってきています」
【急速な“少子高齢化”に国民は…】
◆中国総局・冨坂範明総局長に聞きます。
(Q.人口減少に転じた中国ですが、現場を取材していて、象徴的な事例はどんなところに感じますか?)
先週末に西安で、地方から出てきた農民工が仕事を探す場所を取材しました。いわゆる“出稼ぎ労働者”の皆さんが、非常に高齢だったのが印象的でした。農村の若い労働力が都市に出てきて“世界の工場”を安価な労働力として支える。そうした昔のビジネスモデルは、もう変わってしまったと痛感しました。
また、同じ西安市内で、不動産業者の資金繰りが立ち行かなくなって、周辺がゴーストタウンのようになっているマンションがいくつかありました。これも広い意味では、人口減による需要の減少が原因で、人口減少の影響は、生産面でも消費面でも非常に大きいと感じました。
(Q.中国は長らく、1組の夫婦がもうける子どもの数を1人に制限する『一人っ子政策』を行ってきました。この影響は大きいですか?)
一人っ子政策の影響は非常に大きいと思います。私は10年前に初めて北京に赴任しましたが、その時はまだ一人っ子政策をやっていて、その変更が大きなニュースとなったことを覚えています。
その後、3人までは自由に生めることになりましたが、それでも意に反して出生率は上がってきていません。その理由は、出産・育児にかかるコストが高いことが挙げられます。
北京に住む人に話を聞くと「家賃や教育費が非常に高いので、とても何人も子どもを生める状況ではない」とよく話しています。地方によっては、育児に補助金を出る場所もあるようですが、その額はまだまだ少ないというのが現状のようです。
【一人っ子政策廃止も少子化が進む理由】
◆現代中国の研究などが専門の東京大学大学院・阿古智子教授に聞きます。
(Q.人口減少の原因としては、一人っ子政策は大きいですか?)
1人しか生めないということで、男の子が欲しい家庭では、女の子が生まれても戸籍に入れないようなこともありました。そのため、男女比が非常に歪んだ状況になっています。2020年の国税調査によりますと、男性が女性より3490万人も多く、結婚できない男性が社会問題になっています。賃金格差も広がり、結婚するために男性が車や家を準備する、いわゆる結納金の負担も大きいと思います。
(Q.結婚できない男性にとっては、やるせない思いもありますか?)
結婚するためには蓄えが必要で、1人しかいないということは、家を背負っているようなものです。結婚相手を見つけ、家庭をどう作っていくかという圧力に嫌気がさし、出世や物欲に関心を示さない「寝そべり族」になる人もいます。
(Q.人口減少は、日本も含めた多くの先進国が抱える問題ですね?)
中国だけが特有ではありませんが、中国の場合、強制的に1人しかダメだとしていたのが、今は強制的に3人生みなさいとなっています。地方政府の中には、結婚すると定期的に電話をかけて「子どもができましたか」と聞くところもあるといいます。個人的なことに政府が介入することに嫌気がさす人も少なくないと思います。
(Q.少子高齢化が進むと、中国の経済成長スピードは衰えていきますか?)
スムーズに成長することはなくなっていくと思います。出稼ぎ労働者が集まっている場所に、高齢者が増えている一方、若年層の失業者率も高くなっています。そのため、労働市場のミスマッチが生じています。高齢者は仕事がない、若年層も高いレベルの仕事を求めていて、見合った仕事が見つからなくなっていると思います。
(Q.国連の推計では、インドが中国を人口で抜くとみられています。世界2位の経済大国という中国の立ち位置はどう変化していきますか?)
中国は人口が多い国で、インドが超えるかもしれませんが、それでも一定の規模がある国です。国としての財源は確保されていて、影響力は大きいと思います。ただ、今の習近平政権を支えているのは経済成長です。そこが難しくなってくると、政権維持も難しくなってくるかもしれません。政権のモデルの転換を迫られてくると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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