【解説】“事実上の利上げ”で円高の“恩恵”は?それでも電気代は下がらない?|TBS NEWS DIG
井上貴博キャスター:
日銀は、長期金利の変動幅を0.25%程度から0.5%程度に引き上げる決定をしました。黒田総裁は「利上げではない。景気には全くマイナスにはならないというふうに思いますし、引き締めるつもりはありません」と話しました。
もちろんこの金融緩和策の修正によって、一時的に円高に振れるので、円相場は137円台からぐっと円高に振れて、130円台に推移しています。2021年の同時期は1ドル約114円。2020年の同時期は1ドル103円。適正の数値がどの水準なのか、冷静に判断する必要があるかもしれません。
いずれにしても、行き過ぎた円安が少し円高に修正された。これによって何が起きうるのでしょうか?
■輸入品は安くなるが電気代は下がらない?
井上キャスター:
そんなにすぐに影響は出ないとは思いますが、シンプルに考えると、やはり輸入品に関しては、大豆、とうもろこし、食用油、木材、サーモン、トマト缶などが、円高に振れれば、値段が下がることが考えられます。輸入品に関しては、手が届きやすくなるかもしれません。
電気代については、電力大手5社(東北・北陸・中国・四国・沖縄)が、燃料高騰を理由に2023年4月から、月額で2200円~3400円程度(約28~45%)の値上げを申請していました。しかし、これが円高に振れれば、相対的に電気代も下がるのでしょうか?
第一生命経済研究所・首席エコノミスト・熊野英生氏によりますと、輸入品に関しては「輸入品などを中心に食料品の値上げは落ち着いてくるだろう。家計への恩恵は3か月から半年かけてじわじわと染み出してくるのでは」と分析しています。
電気代については「円高によって、燃料費は値下げの傾向。赤字返済の必要があるため、電気代が下がるということではなく、値上げ幅が小さくなることが考えられる」と分析しています。
経済アナリスト・森永康平氏は「来春の日銀総裁の交代後に金融緩和の解除となれば、企業の設備投資抑制や円高も本格的に進み、110円台は見えてくるのではないか」と話しています。
■食べチョク秋元さんに聞く どうなる生鮮食品
ホラン千秋キャスター:
今、急激に円高に振れていますが、これがどう安定してくるのか。このまま円高が進むのか。またはじわじわと円安に振れていくのか。そういったところも見極めながら、生産者や企業は状況を見ていかないといけないので、まだまだ読みが難しいところあるのでしょうか?
オンライン直売所「食べチョク」代表 秋元里奈さん:
円相場が安定してれば、良いですけど、やっぱり大きく振れてしまうと、対応を変えなければいけないので、大変です。円高の場合、生産者からすると、資材、肥料、エサなどは、輸入に頼ってる部分が日本の場合は多い。今の円安状況だと、かなり生産コストが上がります。逆に円高だと、資材などの価格が安くなり、生産コストが下がっていきます。
一方で、円高が進むと、海外への輸出に今すごく力を入れている企業などは、やっぱり競争力がどうしても下がってしまうので、売り上げに影響が出てくるのではないでしょうか。
肥料などは、基本的に年間で買う契約だったりするので、今すぐに影響があるわけではないと思いますが、結構、先の読みが難しいので、円相場の動きなどをちゃんと注視しないといけないと感じています。
井上キャスター:
今、生産者などは円相場の適正水準をどのくらいで考えているのでしょうか?
「食べチョク」秋元さん:
人や企業によりますが、円相場の適正水準は110円から120円ぐらいではないかという感覚はあります。
■住宅ローンへの影響は?変動金利はあまり影響なし
井上キャスター:
ここから住宅ローンについてです。
変動金利に関しては、短期金利をもとに決めるのであまり影響はありません。
固定金利は、長期金利(10年物国債など)をもとにして決めるので、早ければ来月にも影響が出るのではないかというところです。
住宅ローンに詳しい、ニッセイ基礎研究所・金融調査室長・福本勇樹氏は「さっそく来月から0.2%という高い上げ幅が固定金利に上乗せされるのではないか」という予想を立てています。
この0.2%がどのくらい影響があるのか試算してみます。3000万円・35年ローンの場合、今月契約すると、固定金利が1.6%で約3900万円の総額の支払いになります。
一方、来月契約だと固定金利が0.2%上がり、1.8%で総額の支払いは4030万円。約130万円上乗せされることになります。
実際の固定金利がどうなるかはわかりません。冷静に見ていく必要があるのだろうと思います。
「食べチョク」秋元さん:
短期プライムレートは、今ずっと一定なので、住宅ローンの変動金利の方は影響ないと言われてますが、35年とかの期間だと、情勢がガラッと変わることもあり得ると思います。これから住宅ローンを検討する方などは、やっぱりプランへの理解や、金融機関によって住宅ローンのタイプが異なると思うので、慎重に選んでいかないといけないと感じます。
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