「ウクライナ国立バレエ」戦禍の中で来日公演 背景に…“日本人初”芸術監督の奮闘(2022年12月19日)

「ウクライナ国立バレエ」戦禍の中で来日公演 背景に…“日本人初”芸術監督の奮闘(2022年12月19日)

「ウクライナ国立バレエ」戦禍の中で来日公演 背景に…“日本人初”芸術監督の奮闘(2022年12月19日)

 名門「ウクライナ国立バレエ」が来日し、17日から公演を行っている。戦禍の中、開催までこぎ着けた背景には、日本人として初めて芸術監督に就任した男性の奮闘があった。

■寺田宜弘さん「日本人として芸術の力を借りて」

 ステージで優雅に踊るバレエダンサーたち。そのほとんどが、ウクライナの首都キーウから来日したダンサーたちだ。

 16日に神奈川県民ホールで、翌日から始まるウクライナ国立バレエのリハーサルが行われた。

 ウクライナ国立バレエは、旧ソ連時代にボリショイ劇場、マリインスキー劇場とともに3大劇場として名を連ねた、創立155年の歴史を誇るウクライナ国立歌劇場のバレエ団。

 その名門バレエ団の芸術監督に今月、日本人として初めて任命されたのが、舞台芸術家の寺田宜弘さん(46)だ。

 寺田さん:「バレエ団の芸術監督となった以上、私としては日本人として芸術の力を借りて。より一層、国際交流、素晴らしい芸術、素晴らしい時代を作り上げていくのが、私の役目です」

 首都キーウを拠点とするバレエ団。戦時下での公演には困難があったという。

 寺田さん:「停電、空襲、何があっても、私たちはバレエという芸術を愛し、週に2回、必ず公演を続け、日本公演のために何があっても、成功させるために団結していたので。今回の公演は素晴らしい公演になると思いますので、楽しんで下さい」

 寺田さんに単独インタビューを行い、ロシアによるウクライナ侵攻から今までの思いを聞いた。

■生徒から電話絶えず…受け入れ先の確保尽力

 寺田さんは11歳で、単身キーウに渡り、バレエ団のダンサーとして活躍。その後、指導者として多くのダンサーを指導してきた。

 寺田さん:「今でも信じたくないです。この2つの国が戦争するなんて。ウクライナの人のために、自分が何をできるかということを、ずっと毎日考えながら生きてきました」

 そんな苦悩を抱えていた寺田さんのもとに今年3月、多くの電話が掛かってきたという。

 寺田さん:「朝の6時、7時くらいから夜中まで、ずっと電話が鳴っていて。生徒たちから連絡があって、先生にサポートしてほしい。(バレエの)トレーニングする場所がないので、今後どういうふうに、私たちは生きていけばいいか分からないと」

 寺田さんは、国外に避難した生徒たちのために、ヨーロッパ中のバレエ学校やバレエ団に連絡し、受け入れ先の確保に尽力した。

 ダンサーのオレーナ・カランディエヴァさんも寺田さんに助けてもらった1人だ。

 カランディエヴァさん:「(ロシアによる)ウクライナ侵攻時の恐怖は、きのうのことのように覚えていて、思い出すと鳥肌が立ちます。バレエダンサーとして生活できて、寺田さんには感謝の気持ちでいっぱいです」

■日本公演が実現「ウクライナ芸術を知ってほしい」

 2006年から毎年開催されていた、ウクライナ国立バレエの日本公演だったが、去年とおととしは新型コロナの影響で開催を断念していた。

 今回の公演も、ウクライナ情勢の悪化により開催が危ぶまれていたが、首都キーウに残り続けていたダンサーやスタッフ181人が来日するという大規模な公演が実現したのだ。

 寺田さん:「戦争が始まって、一度もキーウの街、ウクライナを出てないんですよね、多くの団員たちは。その中で、初めて海外ツアーに行くというのが日本。私としては、本当に日本人として喜ばしいことです」

 また、黒海が封鎖されていた影響で、舞台装置の輸送が困難となったため、日本国内で調達したという。

 様々な苦難を乗り越えて、たどり着いた日本公演だった。

 寺田さん:「今、ウクライナは大変な時代。そのウクライナ人は、自分の国に自分の文化をより一層大事にしていくと。私は芸術監督として子どもたちの輝きを大事にし、世界中の人たちにウクライナの芸術を知ってもらいたいと思っています」

■“衣装ない”ダンサーに…寺田さんの母が提供

 ウクライナバレエを守るために、実は寺田さんの家族も協力しているという。

 今年7月、ロシア軍のウクライナ侵攻後、初の海外公演となる日本公演が決定し、ヨーロッパ各地に避難していたウクライナ国立バレエのダンサー数十人が日本に集まったそうだ。

 しかし、その集まったダンサーたちは、身一つで避難していた場所から日本に向かったため、当然、衣装なども持っていない状況だった。

 このままでは公演できない窮地を救ったのが、京都でバレエ教室「寺田バレエ・アートスクール」を開いている、寺田さんの母・美智子さん(83)だった。

 ダンサーの皆さんに衣装を提供し、日本公演成功の一翼を担ったという。

 今後も美智子さんは、「ウクライナバレエのための協力は惜しまない」と話す一方で、名門・ウクライナ国立バレエの芸術監督という重責を担った息子の寺田宜弘さんに対しては、「これまでみたいに芸術のみに没頭すればいいとはいかない。団員を引っ張っていかないといけないので、体を大切にしてほしい」と話した。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2022年12月19日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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