【報ステ解説】復興税“転用”誰が考えた?“防衛増税”に異論噴出…自民税調大荒れ(2022年12月13日)

【報ステ解説】復興税“転用”誰が考えた?“防衛増税”に異論噴出…自民税調大荒れ(2022年12月13日)

【報ステ解説】復興税“転用”誰が考えた?“防衛増税”に異論噴出…自民税調大荒れ(2022年12月13日)

防衛費増額の財源として浮上している『復興特別所得税』を転用する案は、国民から理解を得られるのでしょうか。自民党では異論が噴出しています。

13日、自民党税制調査会では、来年度税制大綱の取りまとめが佳境に入っていました。

自民党・宮沢税調会長:いよいよ税制改正も終盤を迎えておりまして。例年ですと、ここまでくると8合目くらいまで来た感じがある税制改正ではありますけど。

しかし今年の税調は、すんなり終わりません。

自民党・宮沢税調会長:防衛費の税財源の話が、この後ございまして。

くすぶっている防衛費の問題も、今週中に結論を出そうとしています。

夕方には、わざわざ大臣たちがお願いに来る事態に。

浜田防衛大臣:今後5年間で、緊急的に防衛力を抜本的強化することが必要。総理からは先日、必要な内容をしっかり確保するため(5年総額)約43兆円とする指示があったところ。

鈴木財務大臣:防衛力強化にかかる財源確保につきましては、なお足らざる残りの約1兆円強については、総理が述べられた通り、税制で協力をお願いしなければならない。

5年で総額43兆円かかるという、防衛費。2027年度以降、毎年不足する1兆円強を増税でまかなうとしています。

ただ、何を増税するのか。自民党の中では全く答えが出ていません。

さらには、復興税を転用するという案が浮上し、議論を余計ややこしくしています。

自民党税調幹事・西田参院議員:そんなものはね、防衛費に充てるなんて話はあり得ない。少なくとも、復興のための所得税をあてにして、防衛費の増大に充てるなんて。誰が言ったか知らないが、少なくとも自民党の中で、そんなこと言ってる人は誰一人いない。

自民党・石破元幹事長:(Q.復興のために税金を払っているが、使い道が変わることになる)それは転用ということじゃなくて、それを防衛費にこれだけ回しますよってことを、新たな税目として立てるか何かしないと。トリックみたいなやり方は、私はあまりフェアだと思わない。

どこの案で、誰が言い出したのか、はっきりしたことは分かりません。ただ、評判が悪いのは事実です。

東日本大震災の復興のため、所得税額には現在、2.1%が上乗せされています。いわゆる“復興税”です。

そこから2000億円ほどを、足りない防衛費に転用しようする案です。

さらに、復興税の徴収は2037年までですが、それを20年程度延長し、その後は防衛費の活用分のみ上乗せしようとするもの。事実上の防衛費のための所得税増税です。

震災直後は緊急性に鑑みて、与党の民主党に野党の自民党が協力する場面もありました。

そんな中で成立したのがこの復興税です。

財務大臣として成立に関わった安住国対委員長は、この案に対してこう話しました。

立憲民主党・安住国対委員長:私は驚愕した。復興所得税を防衛費にすり替えるというわけ。そんな愚かなことはしないと思うが、法人税がダメなら復興所得税かと。まさに国民・被災地に対する背信行為。

一方、その後防衛大臣になった小野寺衆院議員はというと。

自民党・小野寺元防衛大臣:(Q.被災地選出の国会議員として、復興のための税金が防衛財源に充てられる可能性について)財源について、正確にまだ知らされてないので、そこは議論を待ちたいと思う。

そもそも、5年で43兆円の防衛費はどう使われるのでしょうか。

F35を買い足すのか、巡航ミサイルを開発するのか、自衛隊員の待遇を改善するのか。そんな議論よりも増税話が先行しています。

自民党・世耕参院幹事長:納得ということは、必要な防衛装備・費用、そういったことがきちっと国民に説明されて理解されて、負担をどうするのかについても理解いただくことが重要。最終的には、党内でコンセンサスを得られないといけない。総理官邸が努力されるべきではないか。

岸田総理が言い出した以上、まとめ切らないと求心力の低下に直結します。

自民党・根本元復興大臣:今までの復興の特別所得税。これは復興にあてる。これは復興財源ですから。これが減らされるようなことは、断じてあり得ない。

自民党・佐藤参院議員:国民からすると、レストランに入って、メニューも分からないまま、3万円くらい取られて。しっかり説明して、国民に税負担や安定財源を決める手順の方が適当では。

自民党・稲田元防衛大臣:1兆円を、国民の皆さんに税の負担をお願いするというのは、私は責任ある政治の在り方だと。だらだらといつまでも議論するのではなく、ここでしっかり議論して決めることが責任ある態度。

自民党・甘利元幹事長:国民の命を守るわけですよ。安全保障って、国家の独立主権に対する備えですよね。当然、全国民が何らかの負担をするということじゃないですか。

自民党税制調査会は14日も続きます。

自民党・宮沢税調会長:(Q.最終決定はいつごろ)これからだよ。(Q.年明けてという声も)年明けてなんて、それは無理だろう。

***

◆政治部・千々岩森生デスク

(Q.復興税の転用案は、岸田総理のお墨付きを得た考え方ですか)

もちろん、すでに岸田総理もGOサインを出しています。

経緯を取材をすると、今回、1兆円の防衛費増額をどこから捻出するかについて、法人税・たばこ税・復興税の3つが上がっていますが、最初に出てきたのは法人税で、夏くらいには上がっていました。

ただ、法人税は企業側の反対が大きく、1兆円に届きません。次に出てきたのが、たばこ税。まだ届かず、最後に“隠し玉”として財務省が出したのが復興税です。

防衛に関係なく、どこかの財源として使いたいと思っていたやり方が最後に出てきたという流れです。

(Q.復興税は、東日本大震災の復興のために受け入れてきた税です。これを防衛費に転用するのは「約束が違う」という声が出ても仕方がないと思いますが)

トリック的だと言われても仕方がありません。

財務省は、誤解を恐れずに言えば、常に財源はどこにあるのか、どこから税を取れるのかを探しています。

それが仕事ですから、良い悪いではありませんが、ある種、財源を冷たく考えるところがあります。

ここに財源があるから、これを使おうという考えをしがちです。

ただ、今回は、よりによって復興税という人々の思いがこもった税を、防衛に充てていくことに関して、非常に感度が低かった、意識が低かったと言わざるを得ません。

(Q.岸田総理はこの案で突っ切ろうとしていますか)

今はそうです。ここまで出てきて、何かを取り下げるとか、増税できなくなることは、逆に政権の命運に関わります。

恐らく今週内には決定・取りまとめが行われるのではないかという雰囲気になっています。

(Q.岸田総理は「決断が遅い」と言われることがありました。ところが今回は、党内の反対を押し切って、トップダウンで決めようとしているようにみえます。このチグハグさは、どこから生まれていますか)

色んな見方がありますが、色んな声が党内からバッと出る、今の自民党はある意味、新しい時代“安倍後の世界”に入ったのではないでしょうか。

今まで岸田政権の1年と少しは、どこかで岸田・安倍会談が行われて、落としどころを探る光景を、我々も何回も見ました。

恐らく今回も、安倍元総理がいれば、そういう光景が2~3回あって、落としどころを探ったと思います。

安倍元総理という保守派の重しがなくなって、色んな保守派から意見が出てくる混沌とした時代を、岸田政権は泳がざるを得ない状況になっていると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事