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街の川が“巨大露天風呂”に大変身 自然に翻弄…苦難続きの「仙人風呂」 涙の舞台裏【Jの追跡】(2022年12月12日)
世界遺産「熊野古道」のほど近くにある温泉街に出現する、冬限定の秘湯。なんと街中を流れる川が、巨大な露天風呂に大変身です!
しかしその温泉街は、水害にコロナショックと、苦難の連続。さらに“冬の秘湯”開湯目前にも、再び自然が牙をむく事態が起きました。
自然と共存共栄する温泉街、復活にかける“思い”に迫ります。
■川湯温泉 楽しみ方は「マイ露天風呂」
和歌山県田辺市。2004年、世界遺産に登録された「熊野古道」で知られる、いにしえの街です。
熊野本宮大社からおよそ5キロの場所にある「川湯温泉」。8軒の宿が軒を連ねる、小さな温泉街です。
名物は、川から立ち上る“湯けむり”。「川湯温泉」は、その名の通り、街中を流れる川の底から、源泉が湧き出ているのです。
女性:「初めてです!こんなに掘るの初めて!」
「川湯温泉」の楽しみ方は、「マイ露天風呂」です。
女性:「あ~気持ち良い!」
温泉街の多くの宿では、この川から湧く源泉かけ流しの湯を堪能できます。
川湯温泉 旅の宿しば・芝伸一さん(63):「ここから温泉72℃。熱い湯が出ます。できるだけ源泉で入ってほしいので、朝からためて、夕方に適温になるように」
芝さんは、一日1組限定の民宿を切り盛りしています。
芝さん:「いらっしゃい、イェ~イ!久しぶり~大きなったんちゃうん?」
娘:「ちょっとズルしてる」
芝さん:「ズルしとんか!なんや~」
夫:「ここの温泉は、すごく疲れが取れてリフレッシュできる」
■台風で大被害…“一念発起”民宿を開業
元々は、消防職員だった芝さん。3年前、民宿を始めたきっかけは、温泉街を直撃したピンチでした。
芝さん:「台風被害に遭いまして、2018年かな。ここで泥かきしている時に、復興するには何かしようかなと思ってひらめいたのが、この貸し切り宿」
実は、温泉の恵みをもたらす大塔川は度々、水害を起こす、いわゆる「暴れ川」です。
温泉宿の女将:「どうしたらいいかなと思って。皆さんお手伝いに来てくれて、ちょっとずつ片付いてきよるんやけど、まだ中がこんなんでしょ…。どうしようかなと思って…」
2018年の台風による氾濫では、9軒もの宿が床上浸水。長期の休業に追い込まれ、温泉街は大きなダメージを受けました。
自らの実家も被災した芝さん。復旧作業に奔走するなか、地元のためにできることはと、一念発起したのだといいます。
芝さん:「『暗い、寂しいな』とか『暗い』だけでは、ますます暗くなっていくので。電気をつける、明かりをともすことで活気が出てくるかなと。光モノ好きやな、こんなやから!」
被災した地元温泉街に、一つでも明かりを増やす助けになりたい。そんな思いから、芝さんは実家をリフォーム。民宿を始めたのです。
芝さん:「まず、川湯を選んでもらわなアカン。一回だけじゃアカンもんね。また来たくなるような宿を作っとかんと」
■コロナ直撃…さらに“中心人物”も突如失う
ところが、被災から立ち上がった翌年。今度はコロナショックが、温泉街を直撃したのです。
芝さん:「ちょっとずつ軌道に乗ってきたかなって時に休業」
熊野本宮観光協会・名渕敬会長(58):「災害を乗り越えて、もう一度始めた時に、コロナ禍が来てしまいましたので。通常の月の1割、2割にまで落ち込みました」
苦しい状況の温泉街。そんななか、これまで街を支えてきた中心人物を、突如失う出来事がありました。
名渕会長:「頑張っていた若手の一人でしたので、その方が自分で自分の身を引いたのは大変痛手ですし、心痛いところでした」
実は去年、コロナ禍の経営難で老舗旅館が閉館。切り盛りしていた主人の小淵誠さんが、自ら命を絶ってしまったのです。
小淵さん(2019年):「仙人風呂目当てのお客さんがいるので、たくさん迎え入れたい」
亡くなった小淵さんは、温泉宿の主人たちが仕掛ける「仙人風呂」の実行委員長を務め、温泉街のにぎわい作りに力を入れていました。
■温泉街復活への起爆剤へ 「仙人風呂」作り
男性:「ベリーナイス!広くて開放的で、しかも無料だ!」
「仙人風呂」は、コロナ禍以前は3カ月で6万人が来場。30年以上前から続く川湯温泉の「冬の風物詩」です。
仲間の思いを継ぎ、実行委員長を務めるのが芝さんです。
芝さん:「にぎわいを取り戻したいのと、この火は消したらアカン」
3年ぶりに行動制限のないシーズンを迎え、温泉街復活への起爆剤として、力が入ります。
砂利で土手を作り、川の一部をせき止めたら、コンクリートブロックを並べて、巨大な浴槽を作ります。そこに、温度調整のために川の水を引き入れるパイプを通していきます。
「仙人風呂」につながる橋を渡したら、いよいよ…。1週間かけ、何もなかった川原に、巨大な露天風呂がお目見えしました。
芝さん:「あさってやね、天気どうだろう。あとは無事に開湯式ができるかどうか…祈るしかないな」
■川の増水で橋が“無残な姿”…開湯式は延期に
しかし、オープンを2日後に控えたこの日。最悪の事態に見舞われたのです。
降り続く激しい雨による増水で、「仙人風呂」に架かる唯一の橋が無残な姿になってしまいました。
芝さん:「もう悪夢や…。水位が下がらんと工事できん」
翌朝、橋は跡形もなく流され、オープンは延期せざるを得なくなりました。
芝さん:「怖いねぇ…。自然はねぇ…。水害にやられまくり。家もやられ、仙人風呂もやられ…。一生の付き合い」
時として牙をむく川。それでも、その川の恵みである「仙人風呂」こそが、再び温泉街に活気を取り戻してくれると信じているといいます。
■“3日遅れ”で開湯宣言 2月末まで開設
そして、仙人のお告げにより発見されたという言い伝えがある川湯温泉。仙人に扮した芝さんが、予定より3日遅れで「仙人風呂」の開湯を宣言しました。
芝さん:「開湯!」
温泉宿の女将:「これも世界遺産に登録されてほしいくらいの名物」
温泉街に、久々ににぎやかな声が帰ってきました。
女性:「仙人風呂を楽しみに来ました。待ちに待っていた!」「スゴイ!不思議!こんな温かくなるんだ」
来年2月末までは、誰もが無料で堪能できる巨大露天風呂。週末には、灯篭による幻想的な雰囲気も楽しめます。
芝さん:「(Q.色々ありましたね…?)泣かすな!本当…あったね…」
復活にかける温泉街。勝負の冬は、始まったばかりです。
(「スーパーJチャンネル」2022年12月9日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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